介護が理由の離婚と後悔しないためのポイントを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 双方が合意すれば協議離婚ができるので、まずは話し合いを
  • 後悔しないために、別居や離婚後の生活設計について検討をしておこう
  • 弁護士に相談することで、法律的な視点からのアドバイスをもらえる

目次

【Cross Talk 】介護が理由で離婚はできる?

義母の介護に疲れました。夫は介護をするのが当たり前という態度で辛いです。介護が原因で離婚できますか?

双方が合意していれば協議離婚ができます。どちらかが拒否している場合は、調停を申し立て、不成立に終わった際には訴訟という流れが一般的です。

詳しく教えてください!

介護が理由の離婚はできるのか?後悔しないためのポイントとは?

父母または義父母の介護がきっかけで配偶者と仲が悪くなり、離婚に至る事例があります。
介護そのものが心身ともに辛く離婚してしまう方も存在します。

介護が理由の場合、基本的には2人が合意する協議離婚を目指し、意見が折り合わないときには調停を申し立てることになります。
今回は介護が理由の離婚とその実態、後悔しないためのポイントを解説していきます。

義両親の介護が理由で離婚はできるのか

知っておきたい離婚のポイント
  • 双方が合意すれば協議離婚ができる。まずは話し合いを
  • 介護以外に配偶者のDV・不貞行為などがある場合には離婚訴訟を起こすことが可能

介護をしている間に、不倫されました。配偶者はやり直したいそうですが私は別れたいです。

不倫が不貞行為とみなされると、離婚訴訟を起こすことができます。まずは弁護士に相談してみましょう。

双方が合意すれば協議離婚は可能。まずは話し合いを

ここでいう介護離婚とは親の介護を理由に離婚することです。
介護離婚の中には「義両親の介護をしているが、心身ともに限界で離婚したい」「配偶者に義両親の介護を強要され不満」など義両親の介護をきっかけに夫婦関係に支障をきたし離婚する事例もあります。
一方で「自分の両親の介護をしているが、配偶者が非協力的で離婚したい」「両親の介護で余裕がなく、夫婦関係もギクシャクしてまった」という場合もあるでしょう。

厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査の概況 介護の状況」※1によると、「要介護者等」からみた「主な介護者」の続柄別構成割合のうち同居で最も多いのは「配偶者(22.9%)」次いで「子(16.2%)」「子の配偶者(5.4%)」となっています。

「主な介護者」の性・年齢階級別構成割合は、同居・別居ともに女性が7割前後を占めています。

年齢は50~70代が多い傾向にあります。
介護が原因で離婚は可能なのでしょうか?
基本的に、離婚理由に関係なく夫婦が合意していれば協議離婚が可能です。

離婚時には財産分与や子どもがいる場合は養育費などについて取り決め、離婚届を出します。
一方で、夫婦のどちらかが合意していない場合には調停申立てや、調停が不調に終わった場合に訴訟の提起をします。
なお、離婚訴訟を起こすためには以下5つの離婚事由が民法で定められています。

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

介護以外でも「配偶者が不倫している」など上記の離婚事由がある場合は、離婚訴訟を起こすことが可能です。
「介護が理由で夫婦関係が破綻し、会話がない状態が長く続いている」「長期間別居している」など夫婦関係が破綻してしまった場合には、その他夫婦の事情を考慮したうえで、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。
詳しくは弁護士に相談することをおすすめいたします。

親族との折り合いが離婚原因となった割合は17.5%に上る

法務省の「協議離婚に関する実態調査結果の概要」※2によると、離婚原因の1つとして「親族との折り合い」を選んだ割合は17.5%に上ります。

また2022年の司法統計年報(家事編)※3の「婚姻関係事件数 申し立ての動機別」で最も多いのは「性格が合わない(合計25,278件)」ですが、「家族親族と折り合いが悪い」も4,230件です。

中には「両親または義両親の介護をきっかけに性格が合わないことが分かった」ということもあるかもしれません。

介護離婚を検討するにあたって、後悔しないためのポイントもおさえておきましょう。

介護離婚で後悔しないためにおさえておきたいポイント

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚する前に、施設への入居や別居も検討してみる
  • 離婚を決心している方は、離婚後のお金や生活について考える

介護で心身ともに限界です。今すぐ離婚して解放されたいです。

お疲れさまです。冷静な判断をするために、別居などで休息を取ってから考えてみてはいかがでしょうか。考えた結果、離婚を決心した方は離婚後のお金や生活についてシミュレーションしてみましょう。

心身ともに限界で、環境を変えられない場合は別居するという方法も

介護に疲れ心身ともに限界ではあるものの、施設への入所が難しいときには一時的に別居するという方法もあります。

民法第877条※4の1項では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定されていますので法律的には義実家に対して扶養の義務はないということになります。
配偶者の直系血族ですので配偶者に扶養義務があります。
「家族として支えなければ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、心身ともに限界である場合はまず一時的にでも休息をとってからの判断を検討した方が良いかもしれません。

離婚後のお金や生活について考える

離婚を検討している方は、離婚後の家計や生活について考えてみましょう。
離婚後に世帯収入が減少し金銭的に困窮してしまうという事例があります。あらかじめ月の収支をシミュレーションし、離婚後の仕事と収入、住む場所や家について検討しておくことをおすすめいたします。
子どもがおり、離婚後も一緒に住む予定の方は子どもの学費や通学などについても考慮しマネープランを練っておきましょう。
養育費や婚姻費用(別居中に夫婦のうち収入の多い方が少ない方に支払うお金)の相場は、裁判所の「養育費・婚姻費用算定表※5」が参考になります。

弁護士に相談する

介護をめぐり配偶者や実家・義実家とトラブルになりそうな場合、離婚について相談したい方は弁護士に相談することをおすすめいたします。

離婚問題に詳しい弁護士に相談することで、経験と実績に基づくアドバイスをもらえるでしょう。

まとめ

介護を理由とする離婚を考えている方は、離婚後の住まいやお金について検討してみましょう。
配偶者や親戚と揉めた、離婚で話がまとまらないなどトラブルに困っている方は弁護士に相談してみましょう。
法律に精通した専門家として、アドバイスや対処法を教えてもらうことができるでしょう。