子の監護者指定や引き渡し調停・審判などについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 離婚前・話し合い中・離婚後、いつでも監護者指定ができる
  • 子どもが連れ去れられた時には、引き渡し調停をあわせて申し立てる
  • 子の監護者指定は、調停をせずに審判を申し立てられる場合もある

目次

【Cross Talk 】離婚前でも監護者指定の調停・審判の申し立てはできますか?

現在離婚に向けて話し合っています。配偶者は酔うと子どもに暴力を振るうことがあるので、早く監護者指定をしたいのですが・・・。

お子さんが危険な状態ですので、まずは保全処分を申し立て別居してあなたがお子さんを引き取るようにしましょう。その後に監護者指定の調停もしくは審判を申し立てます。

詳しく教えてください!

子どもを引き取りたい!子の監護者指定・引き渡しの調停・審判とは?

離婚に向けて話し合っているもしくは離婚後に子どもを引き取りたいという場合はまず(元)配偶者と話し合います。しかし中には「子どもを連れて配偶者が家を出てしまった」「なかなか話がまとまらないからとりあえず自分が子どもを引き取って別居したいけど、配偶者が許してくれない」という場合もあるでしょう。

監護者とは子どもの面倒を見る、教育をする人のことで両親は「子の監護者指定の調停・審判」を申し立てることが可能です。今回は子どもの親権・監護者指定とは、審判の流れと即時抗告などについて解説していきます。

子の監護者指定とは?監護権と親権の違いと引き渡し調停

知っておきたい離婚のポイント
  • 子どもの親権には、子どもの世話・教育をする身上監護権と財産の管理や契約をするといった財産管理権がある
  • 監護者指定の調停・審判では、子どもと同居し世話をする親を取り決める

そもそも監護者とは何でしょうか?

子どもの世話・教育をする人のことです。親権には身上監護権と財産管理権があります。

子の監護者指定とは?離婚前でも指定審判の申し立てができる

子どもの親権には、子どもの世話・教育をする身上監護権と財産の管理や契約をするといった財産管理権があります。
監護者とは身上監護権を持つ親のことで、子どもの身の回りの世話や教育を行います。
身上監護権と財産管理権は、両親のうち一方が2つの権利をあわせて持つこともできますがそれぞれ父親と母親で分けて持つこともできます。

ただし身上監護権のみを持つ親は、財産管理についてもう一方の親に連絡して許可を取る必要があります。身上監護権と財産管理権を分けると、両親が不仲の場合に子どもに悪影響を及ぼす可能性がありますので慎重に検討しましょう。

離婚した夫婦もしくは別居中の夫婦の間で、子どもの監護をどちらが行うか、意見が分かれている際には子の監護者の指定調停・審判※1を申し立てることが可能です。

監護者指定の調停・審判は離婚前にも申し立てができますので、離婚に向けて別居中で子どもと同居したいなど該当する方は検討してみましょう。離婚の協議中、離婚後でも申し立てができます。

子どもが連れ去れられた時には、引き渡し調停をあわせて申し立てる

子どもが配偶者(元配偶者)に連れ去られてしまった時には、子の引き渡し調停・審判の申し立てが可能です。あわせて申し立てる調停・審判は状況によって異なります。

離婚前に両親が別居中で子どもが父親と母親どちらと一緒に住むのか、話し合いがまとまらない→子の監護者の指定と子の監護に関する処分(子の引き渡し)の調停・審判
離婚後に親権者である親が養育していた子どもを親権者でない親が連れ去ってしまった→子の監護に関する処分(子の引き渡し)の調停・審判
離婚後に親権者ではない親が、親権を持つ親に対して子どもの引き渡しを求める→親権者の変更と子の監護に関する処分(子の引き渡し)の調停・審判

離婚調停・訴訟をしている最中の場合は、調停や訴訟の際に子どもの監護者についてもあわせて話し合い(または審理)を行います。

なお両親以外の監護者の申し立ては、過去の判例を見ると認められる可能性が低いです。
2021年3月29日決定の「子の監護に関する処分(監護者指定)審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 」では子どもの祖父母が子の監護に関する処分(監護者指定)審判を申し立てたものの「父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である」として申し立てが却下されました。

調停・審判の前に保全処分を申し立てる

例えば配偶者が子どもを虐待するなど子どもに差し迫った危険がある場合には、審判の申し立ての他に保全処分の申し立てをすることで家庭裁判所が申し立て人に子どもを仮に引き渡すように命ずる処分(保全処分)の判断を行います。

「配偶者と同居させると子どもの利益や福祉に反する」と判断した際には、保全処分の申し立てを検討しましょう。

子の監護者指定、審判の流れ・期間と即時抗告

知っておきたい離婚のポイント
  • 家事事件は、基本的に調停を経て審判という流れだが子の監護者指定は調停をせずに審判を申し立てられることがある
  • 調停・審判の期間は1年程度かかる可能性がある

調停や審判は時間がかかるイメージがあります。子の監護者指定の場合、どのくらいかかるのでしょうか?

2022年司法統計年報(家事編)によると審理期間は「1年以内」が最も多く(11,368件)、次いで6カ月以内(10,047件)でした。ただし内容によって前後するでしょう。

監護者指定は調停をしなくても審判を申し立てられることがある

監護者指定の流れは、まず両親が協議を行い話がまとまらないもしくは話し合いができない場合に調停を申し立て、調停が不成立に終わった際に自動的に審判手続きに移行します。
子の監護者指定は、調停をしなくても審判を申し立てることが可能ですが、裁判官がまず話し合いによって解決を図る方が良いと判断した場合は調停による解決を試みることがあります。※2

なお2022年の司法統計年報(家事編)※3によると、子の監護者の指定その他の処分の審判事件における新受件数は410件、調停事件は1,000件です。

話し合いで解決を図りたい場合は調停を利用する

一般的に相続や離婚など家庭内のトラブル(家事事件)は調停で話し合いを経て、調停が不成立になった際に審判の手続きに移行します。

まず相手と話し合いを図りたいという場合には、調停を利用しましょう。

監護者指定審判の流れ、期間

子の監護者指定の調停や審判を申し立てる場合には、まず弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士に相談することで、調停や審判の戦略方針を立ててもらう、アドバイスをもらうことなどが可能です。
家庭裁判所に申し立てると、調停期日もしくは審判期日の通知が来ますので当日は調停・審判に参加します。
「調停や審判は時間がかかるのでは?」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
2022年司法統計年報(家事編)※4では子どもの監護事件数の総数が36,210件、そのうち調停成立は約半数の18,089件です。
審理期間は「1年以内」が最も多く(11,368件)、次いで6カ月以内(10,047件)です。
なお、子どもの引き渡しや監護者指定では、家庭裁判所調査官による調査が行われることが多い傾向があります。

結果に納得がいかない場合は即時抗告を

審判の結果に納得がいかない場合には、2週間以内に即時抗告の申立てをすることで高等裁判所に審理をしてもらうことができます。※5

まとめ

「子どもを引き取りたいが意見が合わない」という方は、子の監護者指定の調停・審判の申し立てを検討しましょう。配偶者に子どもが連れ去られてしまった場合、子の引き渡し調停・審判をあわせて申し立てます。
調停・審判を申し立てる前に、弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士に相談することで、経験や実績に基づいたアドバイス。対処法を教えてもらえるでしょう。お気軽にご相談ください。