- 離婚裁判の請求棄却(敗訴)は、離婚ではなく慰謝料や財産分与など他の条件が合わない、有責配偶者からの離婚請求とみなされたなどの判例・裁判例がある
- 法定離婚事由に該当しない場合、不貞行為などの証拠が不十分で負けることも
- 裁判離婚で負けた場合には、控訴期間中に控訴し新たな証拠や証人を集めておく
【Cross Talk 】裁判離婚で負けるのでは?と不安です
離婚訴訟をする予定です。負けてしまうのでは?と不安になります。離婚訴訟で負ける場合はどのような場合なのでしょうか?
過去の判例・裁判例では、離婚自体は認められても慰謝料請求が認められなかった、有責配偶者からの離婚請求とみなされたなどが理由で請求が棄却される事例があります。あと法定離婚事由に該当しない場合などでも棄却となる場合があります。
詳しく教えてください!
配偶者に不貞行為があったなど5つの「法定離婚事由」のいずれかに該当すると、離婚裁判において離婚が認められることになります。しかし、裁判所に法定離婚事由に該当しないとみなされた、離婚自体は認められても慰謝料などが認められなかったなどという場合には敗訴(請求棄却)又は一部敗訴となる場合があります。
今回は、離婚裁判で敗訴(請求棄却)となる理由を実際の判例・裁判例を交えて解説していきます。裁判で負けた後の対策や流れも解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
離婚裁判で負ける理由とは?判例・裁判例をもとに解説
- 離婚請求は認められても慰謝料請求などが認められない、有責配偶者からの離婚請求とみなされると離婚が認められないと場合がある
- 法定離婚事由に該当しない、証拠が不十分であるという理由で負けることも
有責配偶者とは何でしょうか?
夫婦のうち、離婚の原因を作った方です。具体的には不貞行為をした、DV・モラハラをした、勝手に家を出て行ったなどが該当します。有責配偶者とみなされると、離婚請求が認められるのが困難になってしまいます。
離婚そのものではなく、財産分与など他の部分が原因で請求が棄却される
離婚の可否ではなく、慰謝料・財産分与など他の事項が原因で請求が棄却されてしまう(敗訴する)事例があります。
平成16年6月3日最高裁判所第一小法廷の離婚請求本訴および同反訴事件 の判決では、破棄差し戻しの判決が下されました。同事件では、最初に被上告人が上告人に対して離婚を求める訴訟を提起し、第1審では被上告人の請求が容認される判決が下されました。
上告人は第1審判決を不服として控訴を提起し、離婚の請求が認容された場合に予備的に慰謝料および遅延損害金の支払いを求める反訴の提起に加え財産分与と遅延損害金の支払いを求める請求をしました。
被上告人は予備的な反訴の提起について同意をしなかったため、却下されましたが過去の判例では人事訴訟手続法により「相手方の同意を要しないものと解すべき」と解釈されています。
離婚請求に付帯して財産分与の申立てがされた場合、上訴審が原審の判断のうち財産分与の申立てに関わる部分について違法があることを理由に原判決を破棄し(または取り消し)当該事件を原審に差し戻すとの判断に至った際には「離婚請求を認容した原審の判断に違法がない場合であっても、(略)離婚請求に関わる部分を破棄し(または取り消し)ともに原審に差し戻すこととするのが相当である」として破棄、差し戻しの判決が下されました。
つまり離婚そのものが認められても、財産分与・慰謝料などの請求が認められず棄却されてしまう可能性があります。
有責配偶者からの離婚請求とみなされてしまった
不貞行為やDVなど離婚の原因を作った方は「有責配偶者」とみなされ、自身からの離婚請求が困難になってしまいます。
平成6年2月8日 最高裁判所第三小法廷の離婚請求事件 の判決では、夫(原告)が妻(被告)に対して長期間の別居などから婚姻生活は破綻していると主張し離婚を請求しました。
夫は海上自衛隊で潜水艦の乗艦勤務をしており、1年の半分は家を空けていました。その後夫は離婚調停を申立てましたが不成立に終わり、妻に許可を得ずに離婚届を出したものの訴訟を起こされ無効になりました。
今回離婚請求の訴訟を起こしたものの、夫が妻ではない女性と別居するために勝手に家を出て行き別居中も生活費・養育費を家に入れないという行動から「有責配偶者の離婚請求としてこれを棄却するのが相当である」という判決が下されました。
平成6年2月21日判決の離婚請求の控訴事件の判決 においても、夫(被控訴人)が妻(控訴人)に長期間の別居などを理由に離婚を請求しましたが、夫に不貞行為があったため請求が棄却されました。
自身が原因で夫婦の関係が破綻してしまった場合、離婚請求が棄却される可能性が高くなってしまいます。
法定離婚事由に該当しない、証拠が不十分であるなど
離婚訴訟を起こすためには、民法770条1項※1に記されている5つの「法定離婚事由」のいずれかが必要となります。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2の「悪意の遺棄」とは、夫婦の関係が悪化することが分かっていながら夫婦の義務(同居・協力・扶助など)を怠ることです。勝手に家を出て行く、家にお金を入れないなどの事例が該当します。
5の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とはDV・モラハラ、借金や浪費癖、性の不一致などです。
これらの事由は、度が過ぎており生活や夫婦関係に支障をきたすものは「法定離婚事由」と認められます。
そのため例えば「月2万円程度ギャンブルをする」「1年に1回、一人旅をするために家を空ける」などの行為は認められない可能性が高いでしょう。
別居が原因で離婚請求をした場合は、別居期間が短いと請求が棄却されやすいといえます。
加えて不貞行為やDVがあり訴訟を起こしても、証拠が不十分であれば離婚請求が棄却されてしまうことがあります。
相手に上記の法定離婚事由があり訴訟を起こす場合には、まず証拠を集めておくことをおすすめします。
離婚裁判で負けた後の流れと対策
- 離婚裁判の請求が棄却されたら、控訴期間中に控訴の手続きを行う
- 和解離婚は、判決離婚よりもスピーディーな解決が期待できる。気になる方は、離婚問題に強い弁護士に相談を
実際に裁判で負けてしまったら、どうすれば良いのでしょうか?
控訴期間中に控訴の手続きを行いましょう。次の裁判に向けて、新たな証拠や証人を集めておくなど対策を練っておくことをおすすめします。
控訴期間中に控訴の手続きをする
離婚裁判で請求が棄却されてしまった際には、控訴期間中に控訴の手続きを行いましょう。
高等裁判所で再び審理が行われます。
裁判に臨む前に、婚姻関係が破綻したことを示す証拠や証人を探しておくことをおすすめします。
離婚請求は認められたものの、慰謝料や財産分与など他の部分が認められず納得できないときには敗訴した部分を控訴できます。
離婚問題に強い弁護士に相談する
弁護士にも得意な分野と比較的経験が少ない分野がありますので、裁判で負けた方は離婚問題の実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
離婚問題に強い弁護士であれば、裁判で主張すべきポイントや証拠の収集など対処法を教えてもらえるでしょう。
まとめ
裁判離婚では、有責配偶者からの離婚請求とみなされる、法定離婚事由に該当しない場合などでは請求棄却(敗訴)となってしまいます。
裁判が不安な方や既に敗訴してしまった方は離婚問題に強い弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。