国際結婚の離婚手続きについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 離婚する前にどちらの国の法律が適用されるか、調停・訴訟の管轄場所を確認しておく
  • 法律の適用と裁判の管轄は、必ずしも同じ国になるとは限らない
  • 日本の法律が適用される場合は役所に離婚届を提出、財産分与・子どもの親権や養育費などについて話し合う

目次

【Cross Talk 】国際結婚での離婚手続き、どうすれば良い?

フィリピン人の女性と国際結婚し離婚することになりました。私は日本人で日本に住んでおり、妻は時々帰国していました。手続きはどうすれば良いでしょうか?

夫婦の一方が日本に居住する日本人であるときは、離婚時に日本の法律が適用されます。フィリピンは宗教上の理由で離婚できないため、いずれにせよ日本で手続きを行います。

国によっても違うのですね!詳しく教えてください。

国際結婚における離婚の手続きとは、手続きの流れを解説していきます。

国際結婚をした夫婦が離婚する際には、どちらの国の法律に従うか、調停・裁判の管轄場所について調べておく必要があります。離婚時に本国法(国籍がある国の法律)が夫婦同一である場合には本国法、共通の本国法がない場合は夫婦共通の常居所地法が適用されます。調停・訴訟に発展した際の管轄の裁判所も人事訴訟法によって定められていますので、この記事で確認しておきましょう。

国際結婚の離婚手続きとは

知っておきたい離婚のポイント
  • 事前に離婚時に適用される法律、調停・訴訟を行う国を調べておく
  • 法律の適用と裁判の管轄は、同じ国になるとは限らないという点に注意する

外国人の配偶者と話し合いがまとまらず、調停に発展しそうです。日本の裁判所で良いのですか?

調停・訴訟を管轄する国は夫婦の国籍や居住地により決定します。詳しく見ていきましょう。

国際結婚をして離婚をする前に確認すべきこと

国際結婚では離婚をする前に(1)夫と妻のどちらの国の法律が適用されるか(準拠法)(2)調停・訴訟に発展する場合どちらの国で裁判を行うのか、確認しておく必要があります。

例えば2019年の人口動態調査※1によると国際離婚で最も多い組み合わせは夫が日本人、妻が中国人となっています。離婚する際には日本の法律が適用されるか、中国の法律が適用されるか、調停・訴訟は日本と中国どちらで行われるかを調べてから手続きを開始します。
なお、法律の適用と裁判の管轄は必ずしも同じ国になるとは限りません。

裁判の管轄に関しては2018年に人事訴訟法が改正となり、被告の住所が日本にある場合などでは日本で裁判が可能となります。

以下の4つの場面で日本の裁判所で審理・裁判をすることができるようになりました。※1

  • (1)被告の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には,居所)が日本国内にあるとき(改正後の人事訴訟法第3条の2第1号)
  • (2) その夫婦が共に日本の国籍を有するとき(同条第5号)
  • (3) その夫婦の最後の共通の住所が日本国内にあり,かつ,原告の住所が日本国内にあるとき(同条第6号)
  • (4) 原告の住所が日本国内にあり,かつ,被告が行方不明であるときなど,日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り,又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があるとき(同条第7号)

例えば「結婚中は2人で日本に住んでいて、自身は今も日本在住だが夫または妻が自身の国に帰ってしまい離婚手続きが出来ない」という場合では(3)に該当し日本で裁判が可能です。

離婚の手続き、どちらの国の法律が適用される?

離婚時の法律に関しては「法の適用に関する通則法」※2第25条・27条に記載されています。

第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

法律の適用は以下の通りです。

本国法が同一であるときは共通する本国法
共通の本国法がない場合は夫婦共通の常居所地法
本国法・常居所地法がないときには夫婦に密接な関係のある地の法
夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは日本法による

まずは適用される法律と裁判を管轄する国を確認しておきましょう。

国際結婚における離婚手続きの流れ

知っておきたい離婚のポイント
  • 日本の法律に従い離婚する際には役所に離婚届を提出し、必要な事項を話し合いで取り決める
  • 日本の法律を適用した場合、中国の方は大使館、韓国の方は総領事館に書類を提出する

日本の法律が適用される場合には離婚届を出すだけでいいのでしょうか?

二人で話し合い、財産分与やお子さまがいる場合には親権・養育費などについても取り決める必要があります。おっしゃる通り日本の役所に離婚届を提出しますが、国によっては大使館・総領事館にも書類を提出する場合があります。

日本

日本の法律が適用され離婚する場合、日本人同士の離婚と同様に役所に離婚届を提出します。二人で話し合い、財産の分与、子どもがいる場合は親権・養育費などの取り決めを行います。

話し合いがまとまらない場合には、調停を経て訴訟を起こす流れとなります。
日本では基本的に家庭に関するトラブル(家事事件)に関しては調停を経てから訴訟という決まりがあります。ただし、例外的に調停をすることなく訴訟ができる場合もあります。

日本は戸籍制度がある国ですが、世界的に見ると戸籍制度がある国は日本と中国・台湾のみとなっています。

日本では戸籍を確認することで独身・既婚を判別できますが、外国では法律上の婚姻要件を確認するための証明書などが必要になります。国ごとに書類が異なりますので事前に確認しておきましょう。※4

中国

日本の法律で離婚する場合には、離婚届を提出し、日本にある中国の大使館に必要書類を提出して届け出を行います。※5

中国の法律で離婚をするときには「婚姻登記機関」で婚姻を登記した場合に限り協議離婚が可能です。
登記をしていない際には基本的に裁判により離婚をすることになります。
中国で裁判を起こすためには、夫婦のいずれかが中国国内に居住しており戸籍を有するまたは1年以上継続して中国国内に居住していることが必要となります。

フィリピン

基本的にフィリピンでは宗教上の理由で離婚が禁止されており、離婚はできないとされています。
配偶者がフィリピン人の場合は、日本で離婚の手続きを行います。
フィリピン大使館のホームページにおけるガイドラインでは「フィリピン国外で成立した離婚はフィリピン国内の地方裁判所(The Regional Trial Court/RTC-Phil)において民事訴訟を起こし、法的に承認させなければなりません」という記載があります。※6
配偶者が離婚後にフィリピンで再婚する際には、フィリピンの裁判所にて外国で成立した離婚の承認を得る必要があります。

韓国

日本の法律を適用し離婚した場合、韓国人の元配偶者は韓国総領事館に離婚申告をする必要があります。※7

韓国の法律を適用し離婚する場合には、離婚の方法は協議離婚と調停離婚・裁判離婚の3つとなります。
協議離婚では夫婦が一緒に管轄の総領事館において、協議離婚意思の確認を担当領事の前で受ける必要があります。調停は家庭裁判所に申立てを行い、調停で離婚が成立しなかった場合は離婚訴訟を起こす流れとなります。

国際離婚の注意点

国際結婚の後に離婚をする場合、「そもそもどちらかの国で婚姻が成立していなかった」という場合があります。
特に中国では中国国内で登記の必要があり、婚姻の登記をしていない場合には「中国では結婚していなかった」とみなされます。婚姻が成立していなかった場合には、中国国内での離婚手続きは不要です。
そのため、まずは婚姻時にどのような手続きを行ったのか、確認してみることが必要です。

まとめ

国際離婚は日本人同士の離婚より手続きが煩雑である場合が多いです。離婚の手続きをうやむやにしてしまうと、お互いが再婚するとき、どちらかが亡くなった場面などでトラブルの原因となってしまうでしょう。
国際離婚に詳しい弁護士に相談し、一緒に手続きをすることをおすすめします。