養育費を増額してほしい場合について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 養育費の増額は、基本的に取り決めた時から事情に変更があった際に認められやすい
  • 相手が裁判外の話し合いで合意した場合には事情の変更がなくても良い
  • 子どもの進学や病気、自分の収入が減ったもしくは相手の収入が大幅に増えた際には認められる可能性が

目次

【Cross Talk 】養育費の増額は可能ですか?

離婚時に養育費を取り決めましたが、子どもが私立の中学・高校に進み想定より教育費が高くなってしまいました。私の給与だけではお金が足りないのですが、養育費を増やしてもらえますか?

養育費は基本的に決定した時から事情変更があった際に金額変更の請求が可能です。お子様の教育費が当初の想定より高いというご事情があるので、まずは話し合ってみましょう。

ありがとうございます!

養育費の増額はまず相手と話し合い、合意できない場合に養育費請求調停を申立てる

「想定よりお金がかかるので、養育費を増額してほしい」という場合は珍しくありません。
養育費は、基本的に取り決めた際の前提となる要件に変更があった場合に増額を請求できます。ただし、相手が裁判外の話し合いで合意した場合には変更がなくても構いません。

まずは相手と話し合ってみましょう。拒否されても、客観的に見て事情変更があった場合には養育費請求調停を申立てることができます。

養育費の増額はできる?拒否されたときにはどうする?

知っておきたい離婚のポイント
  • 相手の同意があれば任意の話し合いでも養育費の増額は可能
  • 拒否されても、事情の変更がある場合には調停を申立てられる

相手との話し合いで養育費の増額を断られてしまいました。私の失業が原因なのですが、本当に困っています。

話し合いで断られても、客観的な事情の変更が生じている時には調停を申請できます。

正当な理由があれば増額できるが、相手の同意が必要

養育費は、子どもの監護・教育に必要な費用を指します。
養育費は、費用について合意した際の事情に変更が生じた場合に、増額の請求が認められる場合が多いです。「事情変更の原則」と呼ばれています。
養育費を取り決めた時と現在の状況を比較し、「金額を増やす必要性があるのか」が検討されます。

ただし、裁判外の話し合いで相手が増額に同意した場合には事情の変更がなくても増額は可能です。

まずは話し合い、拒否された場合には「養育費請求調停」

「養育費を増額してほしい」という方は、まず相手と話し合いましょう。
話し合いでトラブルが起こる可能性がある、2人で話し合えない事情がある場合には弁護士を代理人として交渉することをおすすめします。

交渉して相手から同意を得た場合には、合意書もしくは公正証書を作成します。
必ずしも作成しなければいけないものではありませんが、いざという時の証拠として役立つ可能性があります。特に公正証書は公的文書ですので証拠力が高いと言われています。

公正証書を作成する場合は養育費で取り決めた内容に加えて、「養育費を支払う義務を負う人は支払いが滞った場合には直ちに強制執行を受けてもやむを得ない」(強制執行認諾文言)ことを記載しておきましょう。
養育費の支払いが滞った際に、家庭裁判所での手続きがなくても、直ちに強制執行の手続きが可能となります。※1

相手に増額を拒否された場合には、「養育費請求調停」※2を家庭裁判所に申立てることを検討しましょう。養育費請求調停は、養育費について話し合いがまとまらない、もしくは話し合いができない場合に、子を監護している親からもう一方の親に対して家庭裁判所に、調停または審判を申し立て、合意に向けて話し合う手続きです。

養育費の増額については、事情の変更があった場合(再婚した・子どもが進学したなど)に限り調停や審判を申し立てることが可能です。

養育費の増額理由として認められやすい事例3つ

知っておきたい離婚のポイント
  • 養育費は子どものために支払われるお金なので、子どもの進学や病気などは認められる可能性がある
  • 自分の収入減少や失業、相手の大幅な収入増加も理由になる

養育費請求調停で話し合うことになりました。子どもが私立の高校に行きたいと言うのですが、お金が足りないです。

想定よりもお金がかかる場合と推測されますので、増額が認められる可能性があります。

子どもの進学・病気など

2019年に公表された「養育費・婚姻費用算定表」※3では、子どもの高校の教育費は公立に行った場合※4で試算されています。
子どもが私立の高校に進学した、習いごとの費用がかかる、想定より学費が高いなどの事情がある場合には、養育費の増額が認められる可能性があります。
子どもが病気・けがで高額な治療費・手術代がかかる場合にも養育費増額の理由になるでしょう。

法務省の「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」では、「親の子どもに対する養育費の支払義務(扶養義務)は、親の生活に余力がなくても自分と同じ水準の生活を保障するという強い義務(生活保持義務)だとされています。」※5との記述があります。

相手の収入が大幅に増えた

養育費の取り決めでは、両親の収入も判断のポイントの1つとなります。
相手が転職・起業・独立などにより大幅に収入が増えた場合、養育費を増額する理由になる可能性があります。一方で、相手の失業・病気・収入減少などがある場合には増額請求は難しいでしょう。
むしろ、相手が失業・病気などで収入が減少した場合、相手から養育費の減額請求がなされる可能性もあります。

自分の収入が大幅に減った

自分の収入が転職・失業・病気などにより大幅に減少した場合、増額の請求が認められる可能性が高くなります。できれば給与明細や家計簿などを参考に「収入がどのくらい減ったのか」「毎月の支出は○円」と証拠となるものを持参し、話し合いましょう。
調停でも過去の給与明細や支出の記録は証拠となる可能性があります。

詳しい話は弁護士に相談を

上記の事例は、その事実があれば養育費の増額を認められやすい事例ではありますが、必ず増額が認められるというものではありません。
養育費は、双方の収入をはじめ、関係する事情を総合的に考慮して判断するものです。そのため、こちらに婚姻費用を増額する事情が認められても、他の事情も考慮した結果、増額が認められないという可能性もあります(例:子供が私立に進学したのでお金がかかるが、相手も勤務先の業績不振で収入が大幅に下がったため、結局養育費の金額は変更なし、等)。
自分の場合に養育費の増額が認められそうかどうかは、弁護士に相談するとよいでしょう。

まとめ

養育費は基本的に事情の変更が生じた場合に増額が認められやすくなります。
「相手に上手く伝えられるか不安」「事情があって2人で話し合いができない」「自分の場合に、養育費増額が認められるか聞きたい」という場合には、離婚・男女問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。
弁護士が代理人として話し合うことが可能で、法律の専門家からのアドバイスを聞くことができます。