- 直近のデータで協議離婚の割合は88.3%
- 協議離婚は手続きが簡単、費用負担が少ないというメリットがある
- 調停などと比べ、後にトラブルが起こる可能性が高いというデメリットも
【Cross Talk 】やっぱり協議離婚が良いのでしょうか?
離婚に向けて話し合っています。調停や訴訟はお金がかかりますし大変そうなので、やはり協議離婚の方が良いですよね?
おっしゃる通り協議離婚には費用負担が少ない、手続きが比較的簡単というメリットがあります。でも取り決めたことを書面に残しておかないと、後にトラブルが起こる可能性が生じてしまいます。
詳しく教えてください。
協議離婚とは夫婦2人で話し合い、合意して離婚届を提出し離婚する方法です。
調停・訴訟よりも費用負担が少ない、手続きが簡単というメリットがありますが、取り決めた内容を書面化しなかった場合、後のトラブルの対処が難しくなってしまいます。
今回は協議離婚のメリット・デメリット、調停・裁判離婚などとの違いを解説していきます。
協議離婚のメリット・デメリット
- 直近のデータでは協議離婚の割合が88.3%と、最も多い離婚方法
- 当事者にとって費用負担が少ない、手続きが簡単というメリットがある一方でデメリットも
日本では協議離婚が多いですよね?
そうですね、直近のデータでは協議離婚の割合が88.3%と高い数値です。ただし、年々調停や裁判による離婚率も高くなってきています。
直近のデータでは協議離婚の割合が88.3%
協議離婚とは、
夫婦が話し合い、合意のうえで離婚届を提出し婚姻関係を解消することです。
離婚に伴う財産分与や子どもの養育費・親権なども話し合いで決定します。
離婚には協議離婚・調停離婚・審判離婚・訴訟による離婚があります。
厚生労働省の2022年度「離婚に関する統計の概況」によると、2020年(令和2年)は協議離婚が全体のうち88.3%を占めています。
2004年(平成 16 年)以降協議離婚の割合は低下していますが、現在でも最も多い離婚方法です。
協議離婚のメリットは費用の負担が少ないこと、デメリットとしてはトラブル対処が難しい
協議離婚のメリットは手続きとして最低限やらなければならない事が「離婚届を出すだけ」であること、調停や裁判と比較すると
手間や時間・費用がかからず当事者の負担が少ない点が挙げられます。
調停等の裁判手続きによる離婚を行うためには、裁判所に申立書や戸籍謄本などの必要書類を提出し、定められた期日に裁判所に行き調停等の裁判手続きを行います。基本的に一度の期日では離婚が成立しないことが多いため、何度も裁判所に行き、所定の手続きを経て離婚が成立します。
一方で、協議離婚は夫婦が合意し、離婚届を出せば離婚が成立します。
もっとも、協議離婚にもデメリットが存在します。
当事者同士で話し合うため客観的な協議ができないことがあり、法的な視点が抜けてしまう可能性もあります。本来であれば分与されるべき財産が法的な知識がなかったためにもらえない、という場合もあります。
協議離婚と調停離婚の違いとは?
- 協議離婚は当事者間の合意で離婚できるが、その他の離婚は裁判所を介して離婚が決まる
- 婚姻関係事件の審理期間は6カ月~1年程度かかる事例が多い
協議離婚と調停離婚があると聞いたのですが、その違いについて教えてください。
協議離婚は裁判所を通さず当事者間の合意で離婚しますが、調停離婚は裁判所を介して離婚するという違いがあります。
そうなんですね!詳しく教えてください。
離婚には協議離婚・調停離婚・裁判離婚などがある
離婚には、協議離婚・調停離婚・審判離婚・訴訟による離婚があります。
協議離婚は裁判所を通さず当事者間の合意で離婚しますが、その他の離婚は裁判所を介して離婚するという違いがあります。
まずは話し合いによる協議離婚を目指し、何らかの事情で話し合いができない、または話し合いがまとまらない場合には裁判所に離婚調停を申立てます。
家事事件手続法第257条1項では「調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない」と定められています。続いて2項では「前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない」と記されています。
裁判所が認めた場合を除き、基本的に調停を経てから訴訟を起こす流れになります。
調停が成立しない場合に、例外的に裁判所の判断で離婚の審判を下し離婚することを「審判離婚」と呼びます。ただし、審判離婚はほとんど利用されることはなく、全体のうち1.2%(2020年)と低い数値になっています。
調停が成立せず、どちらかが離婚訴訟を起こした場合には判決や和解によって離婚が成立します。
協議離婚とは異なり裁判所を介した離婚は時間がかかる事例が多いです。
裁判所の2021年度司法統計によると、婚姻関係事件の審理期間は「6カ月以内」が最も多く、次いで「1年以内」「3カ月以内」と時間を要することが分かります。
調停離婚のメリットは履行勧告、履行命令および強制執行ができること
調停離婚のメリットは、家庭裁判所で決めた調停・審判などの取り決めを守らない人に対して「履行勧告」や「履行命令」、「強制執行」ができる点が挙げられます。
相手が、調停・審判などで取り決めた内容を守らない場合には、家庭裁判所から相手に対して、取り決めを守るように説得・勧告をしてもらうことができます。また、取り決めた支払いが実行されなかった場合は、必要書類を提出し申立てすることにより財産を差し押さえる「強制執行」ができる事例もあります。
ただし、強制執行は調停や訴訟をせずに裁判外の話し合いで公正証書を作成し、公正証書に「強制執行認諾の文言」を入れる方法でも実行することができます。
協議離婚をする場合は弁護士に相談した方が良い?
- 弁護士に依頼することで、代理人として交渉してもらえる、法的な観点からのアドバイスがもらえるなどのメリットがある
- 離婚の取り決めで合意した際には、離婚協議書もしくは離婚給付等契約公正証書を作成する
協議離婚でも弁護士に相談した方が良いのでしょうか?友人は、話し合いが上手くいって養育費ももらえそうです。
現時点で約束をしていても、離婚後、環境の変化などで支払いが滞る方も少なくありません。できれば弁護士に相談し、離婚協議書または離婚給付等契約公正証書を作成しましょう。
弁護士が代理人として話し合うなどのメリットがある
協議離婚でも弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 相手と顔を合わせたくない場合でも代わりに話し合ってもらえる
- 財産分与・慰謝料などの交渉をしてもらえる
- 法的な知識・経験により適切な対処が可能になる
- 離婚問題に費やす時間・労力を削減できる
- 心理的な負担・ストレスが軽減することもある
中でも、法律の専門家として知識・経験を踏まえたアドバイス・対処法をもらえる点は大きなメリットと言えるでしょう。
財産分与や慰謝料請求を有利に進めたい方にとっても、弁護士に依頼することは有効な手法と言えます。
離婚給付等契約公正証書を作成、「強制執行認諾の文言」を入れる
離婚後に引っ越しや転職などで環境が変わり、「離婚時に約束したことを守れなくなった」という事例もあります。離婚時には財産分与など話し合いで取り決めたことを
離婚協議書に書面として残しておくと良いでしょう。「離婚給付等契約公正証書」として公証役場で公的な書類として作成することも可能です。
公正証書にするメリットは、「強制執行認諾の文言」を入れることにより、裁判所で調停・訴訟などをせずに強制執行が可能になる点です。
裁判手続きを経ずに強制執行が可能であるため、相手が約束を破らないための抑止力になる可能性もあります。
まとめ
協議離婚のメリット・デメリット、調停離婚との違いなどについて解説しました。「調停や訴訟は避けたいけど財産分与を交渉したい」「相手と話し合うのが辛いので代わりに話し合ってもらいたい」という方は、弁護士に相談することをおすすめします。
約束の書面化に関しても詳しいことを知りたい方は、弁護士に相談してみましょう。