- 強制執行では不動産・給与・預貯金などを差し押さえられる
- 一般的な強制執行では給料の1/4相当の額が差し押さえられるが、養育費は1/2に相当する額までが差し押さえられる
- 強制執行される前に離婚問題に強い弁護士に相談を
【Cross Talk 】養育費を強制執行されたらどうなる?
離婚時に公正証書で「養育費の支払いが滞ったときには強制執行」という文章が出てきました。強制執行されたらどうなるのでしょうか?
強制執行とは、債務者の請求権が行使されなかった場合に裁判所が強制的に実行するものです。不動産や給与・預貯金などが差し押さえられる可能性があります。
詳しく教えてください。
離婚時に「養育費の支払いが滞った際には強制執行を受けることを認諾する」旨の公正証書を作成した、調停・裁判で養育費を支払うことが決まり支払いが滞ったときには強制執行されてしまうことがあります。
強制執行とは、元配偶者が養育費を請求する権利を裁判所が強制的に執行します。具体的には不動産・給与・預貯金などが差し押さえられる可能性があります。
強制執行とは何か、流れや対処法を解説していきます。
養育費の強制執行とは?
- 強制執行されると給与・預貯金などが差し押さえられる可能性がある
- 給与が差し押さえられる場合は勤務先に知られてしまう
養育費の支払いを忘れており、書類が届きました。強制執行されてしまうのでしょうか?
まずは書類の内容を確認してみましょう。離婚時に強制執行認諾の文言が入った公正証書を作成した、もしくは裁判などで養育費の支払いが決まった場合は強制執行される可能性があります。
養育費を強制執行されたらどうなる?
養育費は子どもの生活や教育のために必要な費用です。
具体的には子どもの衣食住に必要な費用や教育費・医療費などを指します。
子どもを監護している親はもう一方の親から養育費を受け取ることができます。離婚後に親権者ではなくなり一緒に住んでいない親でも、養育費の支払い義務があります。
養育費の支払いを約束し、「支払いが滞ったときには強制執行を受ける」旨の文章が記された公正証書を作成した場合はただちに強制執行の手続きが可能です。
養育費について取り決めていないもしくは取り決めたものの書面化していない場合は、まず家庭裁判所に養育費の調停・審判を申し立てることになります。
差し押さえは、原則支払い日が過ぎても支払われない部分のみが対象となります。しかし裁判所の調停・判決などで決定した養育費・婚姻費用の分担など定期的に支払うものについてはまだ支払い日が来ていないものについても差し押さえが可能です。
強制執行の流れ
養育費の支払いをせず、強制執行されたらどうなるのでしょうか?
強制執行手続きとは判決を得た、裁判や話し合いなどで合意したにもかかわらず、お金が支払われない場合に権利者が裁判所に申し立て、義務者への請求権を裁判所が強制的に実行するものです。
権利者である元配偶者が申し立て、相手方の財産を調査し、不動産や給与・預貯金など差し押さえの対象とする財産を決めます。
必要書類を準備し元配偶者が裁判所に強制執行の申し立てを行い、裁判所に「強制執行が適法である」と認められた際にはときは「差し押さえ命令」を発せられます。差し押さえ命令は債務者に送達されます。
例えば不動産が差し押さえられる場合に裁判所は「不動産執行を始める」「目的不動産を差し押さえる」旨を宣言する開始決定を行います。裁判所書記官は法務局に対して目的不動産の登記簿に「差押」の登記をするように嘱託し、債務者・所有者に開始決定の正本が送達されます。その後競売にかけられます。
将来の養育費について、差し押さえることのできる財産は、債務者の給料など定期的・継続的に支払われる金銭で、支払い時期が養育費の支払い日よりも「後に来るもの」が該当します。
一般的な強制執行では定期的な収入の代表例である給料の1/4相当の額を差し押さることができますが、養育費などは1/2に相当する額までを差し押さえることができます。
養育費については、給料・預貯金が差し押さえられる場合が多いです。
差し押さえは会社に知られてしまう?強制執行のデメリット
給料が差し押さえられると、債務者の勤務する会社は「第三債務者」として給料を取り立てられます。つまり会社に知られてしまいます。
社会人として信用を失うことになりかねないので、会社に知られたくない場合は元配偶者に養育費を支払うようにしましょう。例外的な事情があって、どうしても支払うことができない場合は、元配偶者に連絡して事情を説明し、強制執行手続きをとられないようにしましょう。
強制執行されたときの対処法とは
- 養育費の支払いが難しい場合には、養育費の減額・免除の請求をする
- 離婚問題に詳しい弁護士に相談することで解決できる事例もある
強制執行の通知が来てしまいました。どうすれば良いでしょうか?
経済的に支払いが難しい場合は、強制執行される前に元配偶者に減額や免除を相談しましょう。弁護士に代理人として交渉してもらうことも可能です。
養育費の減額・免除の請求をする
養育費は養育費調停を申し立て、減額や免除について裁判所で話し合うことができます。
転職や失業で収入が下がった、再婚して扶養する家族がいるなどの事情がある場合には減額請求が認められる可能性があります。
また、元配偶者の収入が増えた、再婚して世帯収入が上がったなど受け取る側の収入が増えた場合にも認められる可能性は高くなるでしょう。
「約束したときは大丈夫だと思ったが、予想より生活が苦しい」という場合でも元配偶者に交渉し、拒否された際には弁護士に相談する、調停を申し立てることを検討しましょう。
養育費は子どものために支払われるもので、双方の収入や個々の事情を考慮し決定します。
個人的な感情で養育費を支払いたくないという事例は認められない可能性が高いでしょう。
離婚問題に詳しい弁護士に相談を
「生活が苦しく養育費を支払えない」「強制執行されそうだがどうすれば良いか」とお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめいたします。
調停は話し合いで解決を目指すものであり、審判がない場合には強制力がありません。
調停で解決しない場合には訴訟に発展することがありますが、弁護士費用がかかるでしょう。
調停を申し立てる前に弁護士を代理人として交渉することができます。
法律の観点からのアドバイスをもらうこともできます。
まとめ
養育費の強制執行では、給与が差し押さえられる場合が多く差し押さえられた場合は勤務先に知られてしまいます。
早めに元配偶者に連絡をとる、弁護士に相談するなど対処しましょう。