離婚して子どもが大学を卒業するまで養育費を受け取るためのポイントとは
ざっくりポイント
  • 養育費の支払い期間については父母が合意によって決定できる
  • 合意していなかった場合でも、大学卒業までの養育費が認めてもらえる場合がある
  • 大学卒業までの養育費の支払いを命じた裁判例がある

目次

【Cross Talk 】子どもが大学を卒業するまで養育費を受け取るため重要なポイントとは?

離婚した後、子どもが大学を卒業するまで養育費を受け取りたいと考えています。

いつまで養育費を受け取ることができるかは、場合によって異なる可能性があります。

大学卒業まで養育費を受け取るために重要なポイントを教えてください。

養育費は、子どもが社会的・経済的に自立するまでは受け取れる

離婚をした場合、子どもが大学を卒業するまで養育費を受け取ることはできるのでしょうか。順調に進学すれば子どもが大学を卒業するのは22歳の3月末となります。
この記事では、養育費を大学卒業まで受け取るために重要となるポイントを解説していきます。

養育費は子どもが成人するまで

知っておきたい離婚のポイント
  • 養育費とは?
  • 養育費の支払いは原則、子ども成人するまで

養育費はいつまで受け取ることができるお金なのでしょうか。

養育費は、基本的には、子どもが社会的・経済的に自立するまで受け取ることができます。

まず、「養育費」とは、子どもの監護や教育のために必要となる費用のことをいいます。

一般的に養育費には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる金銭が含まれ、住居費や食費、日用品のために支出される経費や、学費などの教育費、医療費などは当然に養育費に含まれると考えられています。

民法には直系血族は互いに扶養をする義務があると規定されており(民法第877条1項)、ここには未成熟の子どもに対する扶養義務が含まれているというのが一般的な解釈です。

離婚によって夫婦関係は終了することになります。しかし、離婚によって親権者でなくなった親も、子どもの親であることには変わりありませんので、非監護親は親として養育費の支払義務を負うことになります。

いつまで養育費を支払うこととするのかについては、基本的には父母が合意によって定めることができます。養育費の制度趣旨からは、「社会的・経済的に自立するまで」扶養する義務があることになります。
家庭裁判所の実務では、養育費の支払いは子どもが成人するまでという考え方がとられる傾向があります。

子どもが大学卒業するまで養育費を請求できる場合

知っておきたい離婚のポイント
  • 相手方が大学進学について了承していた場合には養育費を請求できる
  • 了承していなかった場合でも請求できる場合がある

大学卒業までに養育費を請求できるのはどのような場合でしょうか。

ここでは、父母が大学進学について了承していたか否かでわけてみてみましょう。

相手方が大学進学について了承していた場合

養育費は、子どもが未成熟であって社会的・経済的に自立することが期待できない場合に支払われるべきものです。したがって、子どもが20歳(または18歳)に達したとしても、経済的に自立して生活することができない間は、支払う義務が発生すると考えられます。

そして、父母が協議をして子どもの大学進学について了承していた場合には、大学卒業までの養育費の支払いを求めることができます。

具体的には、子どもが大学を卒業する年齢である「22歳に達した後の3月まで」といった内容で合意書面を作成しておくことになります。

相手方が大学進学について了承していない場合

他方の親が大学進学について了承や同意していなかった場合には、当然に大学卒業までの養育費を請求することはできません。
しかし、当初は大学卒業までの支払いを分担していなかった場合であっても、正当な理由がある場合には、家庭裁判所が大学卒業までの費用分担を認める可能性があります。

両親も大卒である場合

両親ともに高校を卒業してそのまま就職している場合には、子どもについても高校卒業まで養育費の分担が認められる場合が多いです。他方で、大学・大学院を卒業している両親については、その子どもについても大学卒業までの養育費の負担が認められやすいでしょう。

両親ともに大学に進学して卒業・修了している場合には、その子どもについても本人が希望する通りに大学教育を受ける機会をサポートするのが適切である、と判断される可能性があります。

相手方の収入が高い場合

両親ともに高学歴であったとしても、大学の費用を負担するだけの経済的な余裕がない場合には、大学卒業までの養育費の負担は認められないでしょう。

したがって、親権者ではない方の親が、金銭的に余裕があり大学卒業までの養育費を分担させても不当とはいえないという場合には、請求できる可能性があります。
親の収入が高い場合には、もし両親が離婚しなかったと仮定すると、その子どもも大学に進学している可能性が高いと考えられます。両親が決めた離婚によって子どもが高等教育を受ける機会を失うのは適切ではないため、大学卒業までの養育費の分担が肯定される可能性が高まります。

離婚手続中に大学進学が決まっていた場合

離婚協議中や交渉中にすでに子どもの大学進学が決まっていたり、大学進学が前提となっている高校に通っていたりする場合には、大学卒業までの養育費の負担が認められやすい要因であるといえます。

相手方が大学に進学することに反対する意思を明確に表示していない場合には、大学進学について黙示的な承諾・同意があったと評価することができます。

大学在学中の養育費の支払いが認められた裁判例

知っておきたい離婚のポイント
  • 裁判例でも大学卒業までの養育費の支払いが認められている
  • 養育費の分担には様々な要素が考慮される

裁判所が大学卒業までの養育費を認めた場合はあるのでしょうか。

はい。いくつかの事情を考慮して大学卒業までの養育費の負担が肯定された先例があります。

離婚後に未成年者(長女)を監護する母から父に対して、私立大学に通う長女の学費及び通学費用(学費等という)を含めた養育費の分担を求めた裁判例があります(大阪高等裁判所平成27年4月22日決定)。

裁判所は以下のような事情を認定しています。

  • 父母は長女の国立大学進学は視野に入れていた
  • 省令で定められた国立大学の学費である年53万5800円に通学費用13万円を加えた年額66万5800円を学費等と算定
  • 標準的算定表では基礎収入の算定において公立高校を前提とする標準的学習費用をあらかじめ考慮しているので、この標準的算定表の試算額(年33万3844円)を超える長女の学費等は33万1956円となる
  • 長女自身においても、奨学金を受けあるいはアルバイトをするなどして学費等の一部を負担せざるをえなかった
  • 父親が負担すべき額は1/3とするのが相当である
  • 以上を考慮して親権者である母親に対して、長女の養育費として、月額3万円を、未成年者が大学を卒業する見込みの満22歳に達する年の翌年の3月まで支払うことが命じられました。

    まとめ

    養育費の算定は、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に様々な修正要素を考慮したうえで決定されるべき性質のものです。
    そのため、将来子どものためにも適切な養育費を受け取りたいという場合には、離婚トラブルの解決実績が豊富な弁護士に相談することがおすすめです。