- 面会交流とは
- 面会交流の間接強制とは
- 面会交流が認められる場合・認められない場合
【Cross Talk 】面会交流についてきちんと決めたのに元妻が子どもに会わせてくれません
子どものことで相談があります。私は離婚をして元妻が子どもの親権者となりました。子どもとの面会交流についても取り決めていたのですが、最近元妻が子どもに会わせてくれません。子どもに会うためにはどうすれば良いのでしょうか。
強制執行のうち間接強制という手段によることになります。
どのような制度ですか?詳しく教えてください。
子どものいる夫婦が離婚をした場合、夫婦の一方が親権者となり子どもの養育をします。この場合にもう一方の子どもと離れて暮らす親が子どもに会うことを面会交流といい、離婚時に面会交流について取り決めることがあります。
面会交流について守られない場合に、面会交流を守らせる方法が強制執行の一つの方法である間接強制です。
このページでは面会交流の間接強制についてお伝えいたします。
面会交流の間接強制とはどのようなもの?
- 面会交流とは
- 面会交流の間接強制とは
面会交流の間接強制とはどのようなものですか?
子どもに会わせなかった場合、相手方に金銭の支払いを命じることで間接的に子どもと会わせることを強制するものです。
面会交流の間接強制とはどのようなものでしょうか。
面会交流とは
面会交流とは、離婚した夫婦のうち子どもと離れて暮らす一方が、離れて暮らす子どもと会うことを言います。
離婚によって一方の親が親権者と一緒に暮らすようになると、他方の親は子どもと離れて暮らすことになります。
両親が離婚しても子どもが健全に成長するために、定期的に離れて暮らすことになった親と会うことは重要であり、面会交流は子どものための権利と解釈されています。
協議離婚をする場合には当事者の合意で、離婚調停・離婚裁判で離婚をする場合には調停・裁判の中で、面会交流をどのように行うのかを決めます。
面会交流の間接強制とは
面会交流の間接強制とは、面会交流の約束をしたにも関わらず子どもに会わせない親に対してする強制執行で、「面会交流に応じない場合には1回につき◯万円支払え」と命じることで、心理的な圧力を加えて面会交流をさせるように促すものです。
強制執行というと、例えば動産の場合には、執行官が相手の自宅等に赴いて動産を占有して売却して行います。
しかし、子どもを無理やり連れてくるというわけにはいきません。
そのため、「面会交流に応じない場合に1回につき◯万円支払え」と命じることで、心理的に圧力を加えて、面会交流に応じさせることになっています。このような強制執行を間接強制といいます。
面会交流の間接強制をするためには
面会交流の間接強制をするためには、まず面会交流についての内容を確定させるために、
面会交流調停の申立てを行う必要があります。
面会交流調停で合意ができなければ、面会交流審判を起こし、審判によって面会交流の内容を確定させます。
離婚時の金銭問題の解決によく公正証書を作成して、公正証書によって強制執行をすることがあるのですが、面会交流の場合、公正証書では間接強制の申立てをすることが難しい点に注意が必要です。
調停で合意をすれば調停調書が、審判で決められた場合には審判書が作成され、これらが間接強制をするために債務名義となります。
債務名義を取得したうえで、間接強制の申立てを家庭裁判所に対して行い、家庭裁判所に命令を出してもらうことになります。
間接強制に従わない場合は?
間接強制に従わない場合には、
相手に対して間接強制の制裁金を課すことになります。
命令に従わないからといって、子どもを強制的に連れてくることはできません。
他の面会交流トラブルを解決する方法は?
面会交流調停・面会交流審判に違反した場合に、
裁判所に相手に対する履行勧告を出してもらうことが可能です。
ただし履行勧告はあくまで勧告をするにすぎないので、間接強制のようなペナルティを与えることはできません。
面会交流の間接強制が認められるためには
- 面会交流の間接強制が認められない場合
- 履行内容が特定されていない場合と履行内容を認めることができないような場合
面会交流の間接強制は必ず認めてもらえるのでしょうか。
いいえ、場合によっては面会交流の間接強制を認めてもらえない場合もあるので注意しましょう。
面会交流の間接強制は場合によっては認められないことがあるので注意しましょう。
面会交流の間接強制が認められない場合
面会交流の間接強制が認められない場合には次のようなものがあります。
履行内容が特定されていない
面会交流の履行内容が特定されていないと判断できる場合には、間接強制が認められないことがあります。
最高裁判所平成25年3月28日判決では、面会交流調停が成立した場合でも、面会交流の履行内容の特定が不十分な場合には、間接強制ができないとされています。
そのうえで、最高裁判所平成25年3月28日判決では次のような事情のもと、面会交流の内容の特定が不十分であるとして、間接強制を否定しました。
(2) 監護親は,上記(1)の面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で子を非監護親に会わせ,非監護親は終了時間に同場所において子を監護親に引き渡すことを当面の原則とするが,面会交流の具体的な日時,場所,方法等は,子の福祉に慎重に配慮して,監護親と非監護親間で協議して定める。
参考: 間接強制申立ての却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件|裁判所ホームページ
履行内容を認めることができない場合
面会交流の履行内容が特定されている場合でも、間接強制が認められないことがあります。
過去に面会交流を否定されたものとして挙げられるのが、面会交流を希望したにもかかわらず、子どもがこれを拒否した事案で、子どもは15歳の中学3年生であり、高校進学に向けての時期でもあり拒否の意思が強いとして、間接強制を否定したことがあります(名古屋高裁決定令和2年3月18日)。
面会交流調停・審判後に、当事者それぞれの事情が変わることがあり、間接強制を認めるのが子どもの福祉という観点から不適切である場合には、間接強制が否定される場合もあることを知っておきましょう。
面会交流が認められる場合
以上のように、面会交流の内容が特定されており、面会交流を認めることに差し障りがない場合には、面会交流は基本的に認められます。
そのため、面会交流を拒否すれば、間接強制の対象となりえます。
まとめ
このページでは、面会交流の間接強制についてお伝えしました。
モノのように直接連れてくることができない以上、面会交流を認めるために行われるのが間接強制です。
間接強制については場合によって認められないこともあるので、間接強制を申立てすることができるかどうか、弁護士に相談してみることも検討してみましょう。