- 親権は母親が獲得することが多く、離婚調停では9割超が母親に決定
- 親権において親の経済力は相手の養育費や実家からの援助も考慮される
- 母親が実家からの金銭的・人的援助を受けられる場合では有利になる可能性がある
【Cross Talk 】母親が無職でも子どもの親権は獲得できる?
離婚協議中で2歳の子どもがいますが、母親の私は無職です。親権は獲得できますか?
無職でも現在主に子どもの面倒を見ているのが母親であるには有利になる可能性があります。特に子供が乳幼児の場合には、母親が有利になるケースが多いです。
詳しく教えてください!
「今無職だけど、子どもを引き取ることはできるのだろうか」と不安を感じるお母さんは多いのではないでしょうか。
子どもの親権で両親の話し合いがまとまらず、調停・審判などに発展した場合は、親権を持つ方の経済力が判断材料の1つにはなります。その際には、相手の養育費や実家からの援助も考慮されます。
内閣府男女共同参画局の調査では、離婚時に働いていなかった母親は24.2%ですが、調停では9割超の確率で母親が親権を持つ結果となっています。
無職でも子どもの親権を獲得できる可能性はある
と言えるでしょう。
今回は子どもの親権の概要と判断のポイント、専業主婦が親権を獲得しづらい事例・有利になる事例を解説していきます。
無職の母親でも離婚で親権の獲得は可能
- 相手の養育費・実家からの援助なども判断のポイントになる
- 離婚調停では9割以上の事例で母親が親権を獲得するというデータがある
そもそも親権とはどのような権利なのでしょうか?
親権は「身上監護権」と「財産管理権」から成っており、身上監護権は主に子どもの世話や教育をする、財産管理権は財産を管理するなどの権利です。
親権は子どもの利益が最優先される
親権とは、子どもの利益のために監護・教育を行う、子の財産を管理するなどの権限であり義務と言われています。
親権には、主に子どもの教育や身の回りの世話をする「身上監護権」と、「財産管理権」
という子どもの財産を管理し代理人として契約など法律行為をする2つがあります。
親権は身上監護を行う「監護権」と財産管理をする「財産管理」に分け、父親と母親がどちらか一方の権利をもつことが可能です。ただし、監護者と親権者が対立してしまうと子どもに良い影響を与えないため、トラブル回避の観点から言えば1人が2つの権利をもつことが望ましいです。
親権で最も優先されるものは「子どもの利益」であり、経済力は判断材料の1つにすぎません。
裁判所にとって親の経済力については母親の仕事の収入だけではなく、養育費を支払う父親の収入も判断材料となります。
母親が無職の場合でも、養育費をもらう予定である、実家から援助があるなどの条件が整っていると親権を獲得できる可能性は高くなるでしょう。
離婚調停では9割以上の事例で母親が親権を獲得
実際に、内閣府男女共同参画局が発表した「男女共同参画白書2022年度版 離婚時の就業状況」を見てみると、男性は正社員が85%ですが、女性は「パート・アルバイトなど」が36.6%と最も多いです。不就業の女性は24.2%と3番目に多い数値です。
参考:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書2022年度版 離婚時の就業状況」
また、裁判所の司法統計によると、2019年の「離婚」の調停成立または調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をする件数は18580件でした。※2
参考:裁判所 司法統計 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をすべき件数
そのうち、親権が父親に決定したのは1635件、母親に決定したのは16908件です。残り68件については取り決めがされていません。
約91%の事例で母親が親権を獲得したことになります。
このように、無職である場合や、パートアルバイトといった父親よりも収入が低い場合でも十分に親権が獲得できる可能性があります。
特に乳幼児に関しては「母親優先の原則」があります。母親優先の原則とは生活全般にお世話が必要な子どもは母親が必要という考えで、生まれて間もない子どもは母親が親権を獲得する可能性が高いです。
専業主婦が親権を獲得しづらい事例・有利になる事例
- 子どもを虐待・ネグレクトしている、親が重病・服役中といった場合は親権を獲得しづらい
- 実家から援助が得られることは親権獲得で有利になる可能性が高い
現在専業主婦ですが、実家で父と母が子どもの面倒を見てくれる予定です。お金も援助してもらえそうですが、親権に影響はありますか?
はい、実家から人的・金銭的な援助を受けられることは調停・審判などで有利に働く可能性が高いでしょう。
子どもを虐待・ネグレクトしている
専業主婦が親権を獲得づらい事例としては、まず「子どもを虐待・ネグレクトしている」ことが挙げられます。上記の通り親権に関しては子どもの利益が最優先されますので、虐待やネグレクトをする親は親権の獲得が難しいでしょう。
重病である・服役中など環境的に養育が難しい
病気があり状態が重い、服役中で子どもを育てられないなど親権者として環境的に子どもを育てることが難しい場合も親権を獲得することは困難と言えます。
実家からの援助を受けられる事例などでは有利になることが
専業主婦で現在働いていない方でも、実家から金銭的・人的援助を受けられる場合には親権を獲得できるチャンスが生まれるでしょう。祖父母が育児に協力的で金銭的に援助できる場合ではプラスに判断される可能性が高いです。
金銭面以外の事情として、「父母の事情」と「子どもの事情」も考慮されます。
父母の事情は父親と母親の子どもを監護した実績・心身の健康状態・年齢・時間的な余裕や生活環境などがポイントとなります。
特に「子どもを監護した実績」は重要と言われており、離婚前に主に子どもを養育していた方が親権を獲得しやすいと言われています。
子どもの事情は子どもの年齢・性別・性格・意向・生活環境などが判断材料となります。
専業主婦で現在仕事をしていない方は、まず相手と話し合ってみましょう。
まとめ
親権は無職でも相手から十分な養育費が受け取れる、実家から援助がある場合などで獲得できる可能性があります。子どもの利益が最優先されますので、「子どものために母親が親権を持った方が良い」と判断された際には親権を獲得できるでしょう。
無職でも親権を獲得したいお母さんは、まず相手と話し合いましょう。お互い合意できなかった場合には調停・審判などの手続きに移行します。
調停に進む前に弁護士を代理人として話し合うことも可能です。親権を獲得できるか不安な方は、離婚問題に詳しい弁護士への相談をおすすめします。