配偶者が家に帰ってこず音信不通!離婚することはできない?
ざっくりポイント
  • 配偶者が音信不通となっている場合に離婚する方法
  • 配偶者が音信不通の場合に離婚原因はあるか
  • 離婚ではなく死亡と扱ってもらえる場合も確認

目次

【Cross Talk 】配偶者が音信不通で帰ってこないのですが離婚できませんか?

夫がもう5年も音信不通で戻ってきません。離婚をして新たな人生を歩もうと思っているのですが、配偶者が音信不通でも離婚をすることはできるのでしょうか?

悪意の遺棄として離婚訴訟を提起することができ離婚は可能です。ただ、調査をすれば居場所は分かる可能性もあります。あとはあと2年音信不通であるならば失踪宣告によって死亡したものとして取り扱うことも可能です。

そうなのですね。詳しく教えてもらっても良いですか?

配偶者が音信不通のまま戻ってこない場合に離婚をする方法はある?

夫婦の一方が音信不通のままになっている場合でも、離婚をするまでは夫婦という法律関係は存続
します。そのため離婚をするのですが、配偶者が音信不通のまま離婚をするためには、どのようなことが必要でしょうか。

このページでは、配偶者の所在地を調べる方法や離婚をする方法、離婚の他の対応方法についてお伝えいたします。

音信不通となっている配偶者と離婚する方法

知っておきたい離婚のポイント
  • 配偶者の所在地を調べる方法
  • 音信不通となっている場合には悪意の遺棄と解釈することができる。

音信不通となっている夫と離婚する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

配偶者の方の居場所を探す方法とあわせて確認しましょう。

音信不通となっている配偶者と離婚する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

離婚するための方法

離婚にはいくつか種類がありますが、当事者の協議のみで離婚する協議離婚、離婚調停で合意をすることによって離婚する調停離婚、裁判を起こして判決によって離婚する裁判離婚などがあります。
このうち、協議離婚・調停離婚は離婚に合意しなければならないため、配偶者と音信不通である場合にはそのままでは利用することができません。
裁判については相手が欠席していても利用することが可能なのですが、離婚裁判を起こすためには民法770条1項各号に規定されている離婚原因が必要です。

戸籍の附票を調査

協議離婚・調停離婚をするためには、まず相手と連絡をとる必要があります。
現在では住所が無ければ就労も難しいので、配偶者が妻(夫)に内緒で住所を移していることも珍しくありません。
この場合には、相手の戸籍の附票を調査することで、現在の住民票がどこにあるかを調べることが可能です。
その住所に手紙や内容証明を送付したり、訪問することで音信不通の状態を解消し、離婚の交渉や調停の提起をしましょう。

相手の携帯電話会社に弁護士照会をしてもらう

相手の携帯電話会社に弁護士照会をしてもらうことを検討しましょう。
弁護士は情報を調査するために、弁護士会を通じて弁護士照会をすることで、裁判などに必要な情報を取得することが可能です。
音信不通である場合でも携帯電話を持っている場合には、相手の住所がどこになっているのかを確認することが可能です。
これによって、相手がどこに居住しているかを確認することが可能です。
もっとも、近年個人情報保護の観点から、携帯電話会社がこうした照会に応じないケースも見受けられます。

離婚裁判における離婚原因

これらの制度によって相手の住所が判明しない場合には、離婚協議や離婚調停の申立てができません。
しかし、離婚裁判であれば、相手が音信不通かつ所在不明である場合でも、裁判所の掲示板に掲載することで相手に訴状の送達がされたとみなされ、相手が不在のまま裁判ができる、公示送達という制度を利用することができます。
ただ、離婚裁判で離婚を認めてもらうためには、民法770条1項各号所定の離婚事由があることが必要です。
細かい説明になりますが、通常の民事訴訟の場合、被告が期日に出席しない場合には、原告の主張を認めたものとみなす制度がありますが、離婚訴訟の場合、この制度の適用がないため、離婚事由があることを証拠をもって立証する必要がありあます。

配偶者が音信不通になってしまっているような場合、2号の「配偶者から悪意で遺棄されたとき。」および、3号の「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。」に該当する可能性があります。

2号の「配偶者から悪意で遺棄された」とは、夫婦の同居義務や扶助義務に違反する行為をいい、配偶者が音信不通になってしまっている場合にはこれに該当する可能性が高いです。
また、音信不通でかつ、相手の住所を調べても居場所を特定できないような場合で、生死が3年以上明らかでないとき、に該当しうるので、離婚原因となります。
連絡がつかない間にモラハラ・DVなどが酷く、そのうえで音信不通となっていることで夫婦関係の実質的な破綻が認められる場合には5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」にも該当する可能性があります。

相手が死亡したものと取り扱う制度

知っておきたい離婚のポイント
  • 場合によっては相手が死亡したと扱うことができることもある
  • 失踪宣告などの制度

離婚に関する手続き以外に何か方法はありますか?

場合によっては相手が死亡したものとして取り扱うことも検討しましょう。

死亡したものとみなされる場合と離婚の場合とどう違うか

後述しますが、相手と音信不通になっている場合には、死亡したものとみなす制度があります。
これによって相手が戸籍上死亡した場合、再婚することなども可能となります。
離婚した場合と死亡したとみなす場合、姓と姻族関係についての取り扱いには注意が必要です。

まず姓(名字)を改めた方は、離婚によって従来の姓に戻ることになっており(民法767条1項)、
婚氏続称の手続きを経れば婚姻時の姓を名乗ることができます(民法767条2項)。一方で配偶者が死亡したとみなされた場合には、妻は何も手続きをしなければ姓はそのままで(民法751条1項)、元の姓に手続きによって戻ることができます。

次に、離婚をすれば姻族関係は終了することになります(民法728条1項)。一方で配偶者が死亡したものとみなされた場合、そのままでは姻族関係は終了せず、姻族関係を終了させる意思表示をすることで、姻族関係を終了
させることができます。姻族関係を終了させる意思表示は、姻族関係終了届を市区町村に提出することで行います。

また死亡したとみなされた場合は、配偶者の資産を相続することになります。

認定死亡

音信不通となっている配偶者を死亡したものとみなす制度の一つに、認定死亡
(戸籍法89条)があります。
死亡の判定は、通常医師によって行われ、その結果として死亡診断書・死体検案書が作成されることになります。
しかし、水難、火災その他の事故などで、死亡したとされる蓋然性が高いものの、死体を確認できない場合があります。
このような場合に、警察官などが市区町村に報告をすることで死亡したと認定されるものです。

失踪宣告

認定死亡とは別に民法の失踪宣告によって死亡したものとみなすことができます。
失踪宣告とは、民法30条所定の要件を満たした場合に、裁判所への申立てによって死亡したものとみなす制度です。
失踪宣告には、生死不明の状態の普通失踪と、戦地に臨んだ者・沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した場合の特別失踪の2種類があります。

前者は生死不明の状態が7年続いている場合で、後者は船舶が沈没した日から1年が経過した場合が要件となります。
沈没した船舶に乗船していてそのまま音信不通となっているような場合には特別失踪として、それ以外の理由で音信不通となっている場合には普通失踪として、それぞれの期間が経過した後に失踪宣告の申立てをすれば、死亡したものとみなすことになります。

まとめ

このページでは配偶者が音信不通の場合に離婚をする方法についてお伝えしました。
相手の住所を調べる方法によって探しても相手が見つからない場合には、公示送達によって離婚裁判を提起して離婚することが可能です。
離婚裁判を提起する場合には、離婚原因が必要ですが、音信不通の期間が長い場合には複数の離婚原因に該当する可能性があります。
離婚以外にも死亡したものと取り扱う制度を利用すれば、配偶者として相続をすることも可能です。
どのような取り扱いが可能で、どの手続きによるのがベストか、判断が難しいこともあるので、まずは弁護士に相談してみてください。