不倫相手に対する慰謝料請求権が時効で消滅する?対策について確認
ざっくりポイント
  • 不倫相手に対する慰謝料請求権の法律的な根拠
  • 慰謝料請求権時効にかかる
  • 慰謝料請求権が時効にかかりそうになっている場合の対応方法

目次

【Cross Talk 】不倫相手に対する慰謝料は時効で消えるのですか?

不倫相手への慰謝料請求について相談があります。夫は2年前に不倫をしたのですが、そのときは相手との関係を清算して終わりにしました。しかしずっとむしゃくしゃした気持ちが残ったままなので、けじめをつけるために慰謝料請求をしたいです。けっこう前のものになるので時効にかかる、という情報を見たのですが、もう請求できないでしょうか。

おっしゃる通り、慰謝料請求には時効があるのですが、3年なのでまだ時間はあります。

そうなんですね!詳しい内容について相談に乗っていただけますか?

不倫相手に対する慰謝料請求には時効がある!時効にかからないようにする制度と一緒に確認

不倫をされた場合、配偶者に対して損害賠償ができるとともに、その不倫相手に対しても慰謝料請求をすることが可能です。慰謝料請求は民法上の不法行為に基づく損害賠償請求として行うもので、この請求権には3年という時効があります。
このページでは慰謝料請求の時効と、時効にかからないための方法についてお伝えいたします。

不倫相手に対する慰謝料請求権は時効で消滅する

知っておきたい離婚のポイント
  • 慰謝料請求権は民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権は時効で消滅する

不倫相手に対する慰謝料請求権には時効があるのですね。

はい、3年の消滅時効があるとまずは覚えておいてください。

不倫相手に対する慰謝料請求権は時効で消滅することについて確認しましょう。

不倫相手に対する慰謝料請求権の根拠

まず、不倫相手に対する慰謝料請求は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)として認められます。
不倫は法律上保護されている、夫婦の平穏な結婚生活という利益を、一方の配偶者と不倫相手が侵害するものであり、不倫をされたもう一方の配偶者は精神的苦痛を負います。
そして、精神的苦痛については財産権以外の損害として、損害賠償をする義務があります(民法710条)。
このように、不倫相手に対する慰藉料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求ということになります。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

慰謝料請求権には時効がある

不法行為に基づく損害賠償請求権については、民法724条が時効の規定を置いています。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

1号は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときに時効にかかると規定しています。
3年が時効期間ですが、その起算日は、「損害」と「加害者」の両方を「知った時」です。
不倫をされていることが確定しても、加害者が誰か分かるまでは、3年の計算は始まりません。
また、2号では,不法行為の時から20年経過したときに、時効によって消滅するとしています。
離婚をした場合の慰謝料請求は離婚時から3年・20年と計算するので、混同しないように注意しましょう。

慰謝料請求権が時効にならないためには?

知っておきたい離婚のポイント
  • 慰謝料請求権が時効にならないようにすることが可能
  • 時効の更新・完成猶予の制度を確認

私の場合相手がわかってから約2年です。もう1年経ってしまうと絶対に請求できなくなりますか?

期間が迫っている場合に、慰謝料請求権が時効にかからないようにする制度として、時効の更新・完成猶予という制度を利用しましょう。

慰謝料請求権が時効になりそうな場合に、時効にならないようにするための制度があるので知っておきましょう。

時効の更新・完成猶予の制度

債権者が一定期間権利を行使しない場合には、その権利を行使しないという事実状態が続きます。また権利を行使される側としては、権利を行使されない状態が一定期間続けば、もうその権利は行使されないだろうという期待を持ちます。時効という制度は、このような継続した事実状態やそれに対する期待を法的に保護することが目的です。
つまり、長期間にわたって慰藉料請求をしないのであれば、法律によって慰謝料請求権はないものとしてしまおうというものです。
ですので、債権者として権利行使している場合には、権利の消滅は認めないようになっています。

具体的には、時効の更新・時効の完成猶予という制度を設けて、債権者としての行動を起こしている場合には時効は完成しないとしています。
時効の更新とは、時効の期間の計算を1からやり直すことを認めるものです。
時効の完成猶予とは、時効の進行がいったん止まり,時効の完成が先延ばしとなることです。
なお、古い書籍・文献・インターネット上の情報の中には、「時効の中断」という表現をしている場合もあるのですが、こちらは時効に関する改正前の表現になるので、注意してください。

内容証明郵便で請求をする

不倫相手に対して請求を行います。
相手に対して催告をすることで、時効完成を6ヶ月間猶予する、時効の完成猶予の制度があります(民法150条)。
一般的には、催告をしたことを証明するために、書面の内容を証明してくれる、内容証明郵便を利用します。
なお、催告をしても6ヶ月が経過しそうな場合、再度内容証明を送っても、催告の効果は生じないので、次の手段をとる必要があります(民法150条2項)。

(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

訴訟などを起こす

訴訟などの法的手段を利用します。
訴訟を提起すれば一旦は時効の完成猶予が発生し(147条1項)、勝訴して判決が確定すると時効が更新します(147条2項)。
また、相手が財産を隠しそうな場合に仮処分を行っても時効の完成猶予が発生します(民法149条2号)。
実務上最も多いパターンとしては、民事訴訟を提起して、その裁判の最中に和解をする場合なのですが、和解も確定判決と同一の効力を有するものとして、時効の完成猶予・更新が発生します。

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

(仮差押え等による時効の完成猶予)
第百四十九条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分

まとめ

このページでは、不倫相手に対する慰謝料請求権が時効にかかることと、その仕組み、時効にかからないための方法についてお伝えしました。
よくわからないことがあったり、不倫相手との交渉は任せてしまいたいという場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。