離婚の慰謝料請求の時効について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 離婚の慰謝料請求の期限は基本的に離婚した時から3年以内
  • 時効を止めるためには「完成猶予」または「更新」で期限が延ばせる
  • 時効を迎えていても相手が応じ慰謝料をもらえることがある

目次

【Cross Talk 】離婚の慰謝料請求の時効とは?

2年前に離婚したのですが忙しく慰謝料請求ができていません。今からでも請求できますか?

基本的に離婚時から3年以内が請求期限ですので、請求は可能です。

離婚時の慰謝料請求の期限と時効を止められる条件を解説していきます。

離婚の慰謝料請求は基本的に離婚時から3年、かつ慰謝料請求の原因となる不法行為から20年と言われています。ただし、内容証明郵便といった確定日付のある書面での催告や協議を行う旨の合意を書面で交わした場合には「完成猶予」という制度により時効は完成しません。また相手が慰謝料の支払いに合意したときには時効を更新することができます。本記事では、離婚の慰謝料請求の期限について、時効を延ばせる条件を解説していきます。

離婚の慰謝料請求期限は3年・20年。時効の起算点とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為や暴力、精神的・経済的DVなど「不法行為」があった時には離婚時に慰謝料を請求できる
  • 慰謝料の請求期限は離婚時から3年以内かつ不法行為から20年以内

夫が家にお金を全く入れず、何度も話し合いましたが結局離婚しました。慰謝料を請求できますか?

経済的DVもしくは夫婦関係が破綻すると分かっていながら義務を果たさなかった「悪意の遺棄」に該当する可能性があり、慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚で慰謝料を請求できる条件とは

離婚で慰謝料を請求できる場合としては、暴力・不貞行為・精神的または経済的DV、夫婦関係が破綻することが分かっていながら同居しない、家にお金を入れないこと(悪意の遺棄)などが挙げられます。
民法上は、709条※1の不法行為と呼ばれる「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」に該当する事柄であれば慰謝料請求が可能です。

基本的に離婚の慰謝料は元配偶者に請求します。
2019年2月19日の最高裁判決 では、妻が夫の不貞行為が原因で離婚することになったとして夫と不倫相手に離婚に伴う慰謝料を請求しましたが、「夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である」として不倫相手に対する離婚を理由とした慰謝料請求は棄却されました。なお、判例で認められなかったのは離婚を理由とした不倫相手への慰謝料請求であり、不倫相手に対する不倫を理由とした慰謝料請求は認められます。

離婚慰謝料における時効の起算点

離婚の慰謝料が請求できる期間は、損害・加害者を知ったときから3年以内であると同時に不法行為のときから 20 年以内とされています。

時効のカウントが始まる「起算点」は、基本的には「離婚した日」です。よって一般的には離婚日から3年が経過すると時効が成立します。
慰謝料の請求を検討している方は、離婚日と時効を意識しながら手続きを進めていきましょう。

離婚の慰謝料請求、時効を止めるための条件とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 催告や裁判を起こしたとき、強制執行・競売などがあった場合に時効は完成しない
  • 慰謝料の支払いを相手が承認したときには時効が更新される

離婚から3年以上経ちましたが「慰謝料を減額して欲しい」と言われています。支払ってもらえるということでしょうか?

相手の減額の主張は相手が慰謝料の支払いを承認していることが前提となっていますので、時効が更新される可能性が高いでしょう。

時効を「完成猶予」させるためには

夫婦間では一定の期間まで時効を完成しない「時効の完成猶予」という制度があります。

民法159条
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない

時効の完成猶予として定められた事由があった場合、慰謝料請求の時効は完成されません。
完成猶予の事由は主に(1)内容証明郵便といった確定日付のある書面での催告※2(2)裁判上の請求や支払督促、和解・調停※3(3)強制執行や競売※4(4)協議を行う旨の合意を書面で交わしたとき※5(5)仮差押え・仮処分※6のいずれかです。

なお、協議を行う旨の合意が書面でされた際には、以下のうちいずれかの早いときまでの間は時効が完成しません。

  • 合意があった時から1年を経過した時
  • 当事者が協議を行う期間(1年未満に限る)を経過した時
  • 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされ通知から6ヶ月を経過した時

時効の「更新」で期限を延ばすことができる

時効が更新できる場合として、「権利(慰謝料請求)の承認があったとき」※7があります。
配偶者が慰謝料請求自体は認めている場合、慰謝料の支払いに関する書類に署名・捺印をしてもらえれば権利の承認が得られたという客観的な証拠となります。

また、配偶者が慰謝料の一部を支払った、慰謝料の減額交渉や返済期限の延長を相談してきた場合も慰謝料の支払い義務が認められていることが前提となりますので、権利の承認(時効の更新)が認められる可能性が高いです。

慰謝料請求をした場合、たとえ時効が完成していたとしても、相手が任意で応じて支払ってくれる可能性があります。
請求できる期間を過ぎていても諦めずに慰謝料請求の旨を伝えてみましょう。

まとめ

このページでは離婚時の慰謝料請求の期限と時効の完成猶予・更新などについてお伝えしてきました。
慰謝料請求は基本的に離婚時から3年ですが、訴訟を起こした、協議を行う旨の合意を書面で交わしたなどの場面では、時効の進行はいったん止まります。また相手が慰謝料請求自体を認めているときには時効が更新されます。
慰謝料請求について疑問がある方、時効について詳しく知りたい方は弁護士に相談してみましょう。