離婚前の準備リストをケース別に解説いたします
ざっくりポイント
  • 離婚前には慰謝料請求・財産分与・年金分割・住まいなどの準備が必要
  • 子どもがいる場合は親権・養育費・面会交流の取り決めも必要になる
  • 取り決めた内容は合意書または公正証書として書面化しておく

目次

【Cross Talk 】離婚前に準備しておくべきこととは?

離婚前に準備しておくべきこととは何でしょうか?

お子さんがいない家庭では、財産分与・年金分割・住まい・離婚後の生活費に関して準備を行います。自身が離婚したい理由で離婚できるかどうかも確認しておきましょう。

理由によっては離婚が難しいのですね。詳しく教えてください!

離婚前に準備することをリストアップ、取り決めた内容は書面化しておきましょう。

離婚にあたってはまず双方の合意が必要となります。まだ離婚を切り出していない方は自身の離婚したい理由で合意が得られるかを確認しましょう。慰謝料を請求する場合には慰謝料請求もリストに入れておきましょう。財産分与、離婚前・離婚後の住居、生活費についても準備が必要です。子どもがいる場合、親権・養育費・面会交流についても取り決める必要があります。

離婚前に準備しておくべきことリスト、子あり・子なし共通

知っておきたい離婚のポイント
  • まずは離婚理由に関して双方が合意できるかを検討する
  • 財産分与・年金分割・住まい・離婚後の生活費も準備が必要。慰謝料を請求する方は証拠集めを

夫が職場の女性と不倫しているので離婚したいです。まだ離婚を切り出していませんが、慰謝料も欲しいです。

慰謝料が欲しい場合は、相手に離婚の意思を告げる前に「不貞行為が事実である」という証拠を集めましょう。財産分与・住まいなど他にも準備すべきことがあります。

離婚理由

離婚をするためには双方の合意が必要となります。
厚生労働省の「2022年度離婚に関する統計の概況※1」によると、夫婦が話し合い離婚する「協議離婚」の割合は88.3%となっています。
配偶者が合意しない場合は調停・訴訟という流れですが、民法770条1項※2では裁判上の離婚について以下のように規定しています。

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

「悪意の遺棄」とは、一方的に別居する同居義務違反、生活費を入れないなどの協力・扶養義務違反を指します。※3

まずは配偶者が離婚に応じるか否か、離婚に応じない場合には上記に該当するかを確認してみましょう。

配偶者の不貞行為やDVなどを理由に離婚する際には、動画や写真・メール・メッセージアプリの履歴など証拠を集めておくことをおすすめします。

慰謝料の請求

離婚の理由が不貞行為・暴力・モラハラなどである場合、民法709条※2の「不法行為による損害賠償(故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う)」に該当する可能性があります。

不貞行為・DVなどの配偶者の不法行為に対して、慰謝料を請求したい方は証拠を集めておきましょう。
可能であれば弁護士に相談し、慰謝料の相場や離婚できるか否か、不法行為に該当するかなどを尋ねておくことをおすすめします。

財産分与・年金分割について

離婚時には財産分与・年金分割などお金に関する話し合いを行い、取り決める必要があります。
財産分与について話し合う前に、マイホームや預貯金・自動車など夫婦の共有財産をリストアップし把握しておきましょう。

「婚姻中に夫婦で協力して形成した財産」が財産分与の対象ですので、結婚前の預貯金や相続・贈与で得た財産、どちらか一方の借金などは対象外です。

なお、夫婦の一方が名義人となっている財産でも、実際は夫婦の協力によって形成されたものは財産分与の対象となり得ます。

年金分割は結婚中の保険料納付額に対する厚生年金を分割し、各々の年金とする制度です。
当事者の一方又は双方の合意により分割する合意分割制度と国民年金の第3号被保険者(専業主婦又は主夫など)の方が請求する3号分割制度があります。どちらも請求期限は離婚日の翌日から2年以内であることをおさえておきましょう。※4

住まいに関すること

結婚中にマンションや戸建て物件を購入した場合、マイホームも分与することになります。
ローンが残っている住宅はローンの残債額を把握しておきましょう。売却予想価格よりローン残債額が多い場合では、資産価値がマイナスとなるので、話し合いが難航する事例が多いです。
話し合いで、住宅を売却するかどちらかが住み続けるかを決めることになりますが、物件の利便性や売却予想価格、子どもの学校の都合などを考慮し決定しましょう。

加えて、離婚後転居する方はエリアや予算など離婚後の住まいについて準備しておきましょう。

離婚後の生活費に関して

現在仕事をしていない方、パート・アルバイトなど時短勤務の方、フルタイムではあるものの離婚すると生活費が足りない方は、離婚後の生活設計を入念に立てておく必要があります。

双方が合意した場合には、財産分与で離婚後の生活保障として多めに財産をもらうことが可能です。ただし、相手が合意しない、共有財産が少ないなどの場合には、就職・転職活動を検討しましょう。

離婚前に準備しておくべきことリスト、子ありの場合

知っておきたい離婚のポイント
  • 子どもがいる場合は親権・養育費・面会交流を取り決める
  • 話し合いの結果、取り決めた内容は合意書や公正証書として残しておく

子どもがいる場合、準備しておくべきこととは何でしょうか?

親権・養育費・面会交流について話し合い、取り決めておく必要があります。

親権

離婚時には、父母のうちどちらが親権を持つか話し合うことになります。
親権は子どもの監護・教育を行う、子の財産を管理するなどの権利であり、義務となります。また、親権は「子どもの利益」のために行使します。

将来の子どもの生活を考え、子どもの面倒を見る、教育、財産に関する事項を「どちらが決めるのが子どもにとって良いのか」という観点で話し合いましょう。

2020年に子どもが1人の夫婦で夫が親権をとったのは13.1%、妻は86.9%となっており妻が親権を持つ確率が高いことが分かります。※5

ただし、親権をどちらが持つべきかどうかは、虐待の有無や監護の実績、子どもの意思によっても結果が変わってきます。

養育費の取り決め

養育費とは子どもが経済的に自立するまでの生活費・教育費・医療費などを指します。
養育費の目安に関しては、2020年に裁判所が公表した「司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告」を参考にしましょう。

養育費の金額・支払期間・支払時期・振込先などを具体的に決め、合意書や公正証書として書面化しておくことをおすすめします。

公正証書には、養育費の支払義務者がこれを支払わなかったときに強制執行できる文言(強制執行認諾文言)を記載しておくと、支払いが滞った際に相手の財産をスムーズに差し押さえることができます。

面会交流について

面会交流は、子どもと離れて暮らす親が、子どもと定期的または継続的に会う、話をする、電話・メールなどで交流することを指します。

離婚時には面会交流の内容や頻度、場所・プレゼントに関する事柄などを話し合いで取り決めます。
面会交流は子どもの利益を最優先に考え、取り決めた内容は合意書として書面に残しておきましょう。

養育費・面会交流に関する合意書は、法務省のパンフレットにサンプルがありますので参考にしましょう。

まとめ

離婚前には離婚理由の確認、慰謝料請求・財産分与・年金分割・住まいなど準備することが数多くありますので、リストアップを行い一つずつチェックしておきましょう。
子どもがいる場合は親権・養育費・面会交流についても取り決める必要があります。
準備にあたって法律的なアドバイスが欲しい方、専門家に相談したい方は離婚に強い弁護士に相談することをおすすめします。