- 離婚する際に、公正証書を作らないことも可能
- 離婚で公正証書を作らないことにはメリットとデメリットがある
- 相手が公正証書を作らないと拒否している場合の対処法とは?
【Cross Talk 】公正証書を作らなくとも有効に離婚はできる?そのメリット・デメリットとは?
離婚を考えていますが、公正証書を作成する必要はあるのでしょうか?
公正証書を作らなくても有効に離婚することはできます。
自分の場合で公正証書を作らないでもいいのかどうかを知りたいです。
離婚する場合には、親権者の取り決めや養育費、慰謝料、面会交流など様々な事項が決定されます。このような約束事は当事者間の契約書という形で書面に残しておくことが、のちのちのトラブル防止のためにも必要となります。
契約書は公正証書として作成することもできますが、公正証書を作らないという選択肢もあり得るのでしょうか。この記事では、離婚に際して公正証書を作らないことのメリット・デメリットについて解説していきます。
離婚で公正証書を作らないことは可能
- 離婚する際には、さまざまな取り決めについて合意しておく必要がある
- 離婚する場合には、公正証書を作成しなくても良い
離婚する場合に公正証書を作らないこともできるのでしょうか。
はい。公正証書を作成しなくても離婚は可能です。ここでは公正証書が活用されている実態を解説していきましょう。
夫婦が離婚する場合には、さまざまな条件を取り決めることになります。
特に、子どもの親権者や非監護親との面会交流、子どもの監護に要する費用の分担(養育費)や、財産分与・慰謝料などの支払い条件などに関する取り決めはその後の生活に非常に大きな影響を与えることになります。
ここで、夫婦が離婚に際して上記のような事項を話し合って決めたとしても、そのような内容の公文書が自動的に作成されるという制度はありません。話し合いで離婚することを決めた場合には、離婚に関する取り決めも口約束だけで進めることができます。
しかし、離婚条件を口約束だけで済ませていた場合、その約束の内容自体が曖昧だと、約束が破られ、各種支払いが受けられないという事態が発生するリスクもあります。
そこで活用されているのが「公正証書」を作成しておくということです。
「公正証書」とは、公証役場で公証人に作成してもらう書面のことをいいます。、夫婦が離婚する際、離婚に関する各種取り決めを書面で作成し、それを公証役場に持ち寄ることで作成してもらうことができます。
このように公正証書は、合意内容の明確化や、約定義務の適切な履行を担保するために利用されることになります。
このような公正証書を作成するかどうかは当事者の意思により自由に決めることができますので、「離婚に際して公正証書を作らない」という判断も可能です。
ただし、公正証書を活用しないという場合でも、客観的に合意内容が明らかになるように離婚協議書のような書面によって約定内容を残しておくことは重要となります。
離婚協議書と公正証書の違いは?
- 公正証書と離婚協議書の違いとは?
公正証書の形にしなくても合意書は作成すべき
公正証書と離婚協議書は、なにが違うのでしょうか。
離婚協議書は公正証書の形で作成することも・しないこともできます。詳しく見ていきましょう。
「公正証書」とは、公証役場で公証人に作成してもらう書面のことです。
これに対して、「離婚協議書」とは、夫婦の間で離婚する条件を整理して確認する合意書のことを指します。
したがって、離婚する際に夫婦が話し合って決めた内容を書面にしたものが「離婚協議書」で、それを公証役場に持ちこんで公証人に作成してもらったものが「公正証書」です。
そのため、公正証書を作らない場合であっても、離婚に関して合意した事項を契約書の形にしておくことは一般的に行われています。
公証人が作成しない離婚協議書であっても、当事者間で有効に成立している契約書であることには変わりありませんので、当事者はその合意内容に拘束されることになります。離婚協議書で養育費や慰謝料を支払うことを約束した側が、その約束に反して金銭の支払いを怠った場合には、履行遅滞となり債務不履行責任を負うことになります。
しかし、このような合意違反があった場合、強制的に権利を実現しようとすると、離婚協議書を公正証書で作成している場合とそうでない場合で違いが出てきます。
次では、公正証書を作成しない場合のメリットとデメリットを解説していきます。
3離婚で公正証書を作らない場合のメリット・デメリット
- 公正証書を作らないメリットとデメリットとは?
- 公正証書を作らないかどうかは場合によって判断する
私の離婚の場合では、公正証書を作った方がいいのでしょうか?
公正証書を作らないことはメリットとデメリットを考慮して、ご自身が判断する必要があります。
夫婦が離婚をする場合には、公正証書を作らないでおくことも可能です。
ここでは、離婚に際して公正証書を作成しないことのメリットとデメリットを解説していきます。
メリット
作成するコストを抑えられる
公正証書を作成するためには、所定の手数料がかかります。そしてその手数料については、作成する書面の中で記載される金額によって異なっています。
公正証書の作成費用の相場としては、3万円〜8万円程度です。公証人手数料を公証役場に支払うことになります。
これに対して、離婚協議書のみの作成であれば、基本的には当事者双方が合意することができれば、内容をワードなどで作成すれば良いため費用はほとんどかかりません。ただし、記載内容が不適切で、合意内容として有効なものであるかどうかという問題は、別途発生することになります。
作成するまでに時間と手間が節約できる
公正証書を作成するためには、基本的には夫婦そろって公証役場に行く必要があり、公証人の時間にあわせたり、平日に仕事を休んで対応したりする必要があります。
苦労して協議書を作成して公証人役場の予約までしたのに、当日になって相手方が来てくれないという場合も想定できます。
このような場合には公正証書を作成することができませんので、前もって念入りな打合せや事前準備が必要となります。
公正証書を作らない場合には、このような時間や手間については節約することができます。
内容を変更するのも比較的容易
離婚協議書を公正証書で作成した場合には、その合意内容を簡単には変更することができません。
離婚後、どちらかが再婚したり、収入の金額に増減が生じたりして養育費の取り決めについて見直しが必要となる可能性もあります。もちろん公正証書の内容を変更することはできますが、新たな合意を形成できるまでは公正証書による取り決めが有効な合意とされてしまいます。
公正証書を作らない場合には、当事者の合意内容を変更することで比較的簡単に約束を改めることができます。
デメリット
支払われない場合に簡単に強制執行できない
合意内容どおりに慰謝料などが支払われない場合、いきなり相手方の財産に対して強制執行をすることはできません。まずは、裁判を起こし判決などの債務名義を取得したうえで、裁判所に強制執行を申立てる必要があります。
これに対して、公正証書に強制執行認諾文言を付していれば、支払いを怠った場合には、判決などを取得せずともいきなり強制執行を申立てることができます。
証明力が低い
公正証書については法律の専門家である公証人が作成する文書であるため、条項の内容についても公証人がチェックしています。そのため、事後的に内容について相手方から争われても合意内容が覆される可能性は低いです。
しかし、公正証書を作成していない場合には、合意内容について確定する作業が必要になりますので、協議書の記載内容が不明確な場合には、合意内容が覆されてしまうおそれもあります。
内容について争いになりやすい
当事者のみで作成された離婚協議書の場合には、事後的にその内容について争いに発展しやすいです。
例えば、養育費についても「子どもが独立するまで」としていた場合、高校卒業までなのか、成人年齢に達したときなのか、大学を卒業するまでなのかは判然としません。
したがって、法律の専門家のチェックが入っていない離婚協議書の場合には、離婚してからその内容についてトラブルとなる可能性があります。
相手方が公正証書の作成に応じない場合
- 公正証書を作らない場合でも離婚協議書は作っておくべき
- 相手が応じない場合には離婚調停を申立てる
夫が公正証書の作成に応じてくれません。どうすればいいでしょうか。
相手が離婚に非協力的な場合の対処法について解説していきます。
ここまで解説してきたように、公正証書を作らないことにはメリットもデメリットもあります。公正証書を作るメリットが大きいのは、養育費や慰謝料などの支払いを受け取る側でしょう。
しかし、相手方が「公正証書を作らない」と拒否する態度を固辞する場合にはどのように対応すべきでしょうか。
相手が公正証書の作成だけを拒否している場合には、離婚協議書だけでも作成しておくようにしましょう。離婚協議書の作成すら拒否している場合には、家庭裁判所に離婚調停を申立て、裁判所に間に入ってもらい協議を進めていくことになります。
まとめ
離婚でお悩みの場合には弁護士に相談
離婚でお悩みの場合には、弁護士に一度ご相談されることをおすすめいたします。
弁護士に依頼しておけば、相手方への連絡や交渉、裁判所を利用した手続きについても全て一任しておくことができます。