離婚裁判を欠席するとどうなる?敗訴しないためにとるべき対処法とは?
ざっくりポイント
  • 離婚裁判を欠席するとどうなる?
  • 離婚裁判に出席できない場合の対処法とは?
  • 訴えられた場合にはすぐに弁護士に相談すべき

目次

【Cross Talk 】離婚裁判を欠席すると敗訴になりますか?

離婚裁判を起こされ初回欠席すると敗訴しますか?

初回の期日に限っては答弁書を提出しているか否かで結果が異なります。

それぞれの場合について具体的に教えてください。

離婚裁判に欠席する場合、初回に答弁書を提出しているかどうかがポイント

夫婦関係が悪化し、相手方配偶者から離婚裁判を起こされた場合、期日の呼出を無視して欠席した場合どうなるのでしょうか。原告の請求が全面的に認められる判決が出てしまうのでしょうか。
このページでは、離婚裁判を欠席した場合の手続きの流れや、欠席する場合の対処法についてお伝えいたします。

離婚裁判を欠席したらどうなる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚裁判を欠席したら敗訴するか?
  • 初回期日は答弁書の提出がポイント

離婚裁判を欠席してしまうとどうなるのでしょうか。

初回期日は答弁書の提出がポイント

答弁書を提出せずに欠席した場合

被告が答弁書を提出せずに欠席した場合には、原告の請求が認められてしまう可能性があります。

訴状が送達されているにもかかわらず被告が口頭弁論期日に出頭しない場合には、事実について自白したものとみなされます(擬制自白、民事訴訟法第159条1項3項)。なお、被告が口頭弁論期日に出頭しない場合であっても、「公示送達」による呼出であるときには、被告は訴状に目を通しているとは言えないため、擬制自白は成立しません。
訴状に目を通したうえで「争うことを明らかいしない」「弁論期日に出頭しない」という被告の選択に対しては、法律の規定に基づき「自白」という効果が発生することになります。

ここで擬制自白が成立するためには、以下の要件を満たすことが必要です。

  • 被告が第一回口頭弁論期日に欠席していること
  • 被告が答弁書を提出していないこと
  • 被告への送達が公示送達ではないこと
  • そして、原告は被告が在廷していない口頭弁論においては、訴状に記載した事実についてのみ主張することができます(民事訴訟法第161条3項)。
    原告が訴状に記載した事実について被告に擬制自白が成立することになりますので、裁判所が原告の権利が認められると考える場合には、終局判決をすることができます(同法243条1項)。

    以上より被告が、答弁書を提出せずに初回の期日を欠席した場合、原告の請求を認容する判決が出されてしまう可能性があります。

    答弁書を提出して欠席した場合

    被告が答弁書を提出して初回期日を欠席した場合には、陳述が擬制されます。

    被告が最初の口頭弁論期日に出頭せず、または出頭したものの本案の弁論をしないときは、裁判所は、被告が提出した答弁書その他準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した原告に弁論をさせることができます(民事訴訟法第158条)。

    なぜ被告が欠席しても答弁書を提出した場合には、「擬制自白」とはせず「擬制陳述」となるのかというと、原告が欠席した場合とのバランスです。
    原告が欠席した場合には、すでに提出されている訴状の陳述を擬制しなければ、訴訟上の請求が裁判所に提示されずに期日が無駄に終わってしまうことになります。そして原告の訴状について擬制陳述を認めるのであれば、被告欠席の場合にも答弁書・準備書面の擬制陳述を認めなければ、公平の原則に反することになります。

    以上より、被告が答弁書を提出していれば、初回期日を欠席したとしても、その答弁書の記載内容を陳述したものとみなされるため、いきなり原告の請求が認められるということはありません。

    なお、続行期日については擬制陳述の制度はありません。

    実務上、続行期日を欠席した場合であっても出廷を促し手続きを続けられるように配慮することが多いと思われます。しかし、被告が口頭弁論期日に出頭せず、または弁論をしないで退廷した場合には、「審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を顧慮して相当と認めるとき」は、原告の申し出があれば裁判所は終局判決をすることができます(審理の現状に基づく判決、民事訴訟法第244条)。

    離婚裁判を欠席せざる得ない場合の対処法

    知っておきたい離婚のポイント
    • 離婚裁判を欠席せざるを得ない場合の対処法とは?
    • 弁護士に訴訟対応を依頼する

    離婚裁判を欠席せざるを得ない場合にはどうすればいいのでしょうか。

    離婚裁判に出廷できない場合には、適切な手続きを活用する必要があります。

    移送の申立てを行う

    「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる」と規定しています(民事訴訟法第17条)。
    したがって、当事者の一方が遠方で期日への出頭が難しく、裁判の遅延が予想される場合や、当事者を平等に扱うために必要であると裁判所が判断した場合には、事件を別の裁判所に「移送」することができます。
    ただし、裁量移送の場合には、裁判所の判断により決定されることになるため、必ずしも移送の申立てが認められるとは限りません。

    擬制陳述を活用する

    離婚裁判に出席できないという場合、初回の期日であれば陳述を擬制してもらうことができます。
    前述の通り、第一回口頭弁論期日については、当事者の一方が欠席したとしても、裁判所は「訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる」とされています(民事訴訟法第158条)。

    ただし、擬制陳述の制度は、初回期日のみですので、2回目以降は出廷する必要があります。

    続行期日については、出席当事者の予定を確認しながら手続きの中で調整されますので、裁判所にご自身の予定を適切に伝えることが重要となります。

    弁護士に依頼する

    弁護士に離婚事件を依頼しておけば、代理人として手続きに対応してもらえます。訴訟代理人は本人の代わりに訴訟行為を追行することができますので、弁護士が出廷すればご本人が出席する必要は無くなります。


    弁護士に離婚事件を依頼する場合には、当然弁護士費用がかかってきますので、事前に法律事務所に確認したうえで依頼するようにしてください。

    離婚裁判に欠席して判決が出てしまったら?

    知っておきたい離婚のポイント
    • 判決が確定するまでは上訴できる
    • 判決が確定すると原則不服申立ては難しい

    離婚裁判に欠席して敗訴判決が出てしまったらどうすればいいのでしょうか。

    敗訴判決についは適切に不服申立て手続きを行う必要があります。

    判決が確定する前に、上級裁判所に対して裁判の取り消し・変更を求める不服申立てのことを上訴といいます。第一審判決に対して上訴するには、判決書の送達を受けた日から「2週間」以内に行わなければなりません。

    判決が確定してしまった場合、確定判決に対して不服申立てをするためには「再審」という手続きをとる必要があります。ただし、再審は非常の救済手段ですので、判決の成立過程に重大な手続き違反があったり、判断の基礎となった資料に異常な欠陥があったりした場合でなければ認められません。

    まとめ

    この記事では、離婚裁判に欠席した場合に、その後の裁判がどのように流れるのか、という点について詳しく解説してきました。
    呼出を無視して欠席した場合には、ご自身に不利な内容の判決が確定してしまう可能性があります。
    そのため、離婚裁判を起こされてご自身では対応が難しいとお考えの場合には、弁護士に相談されることをおすすめいたします。