- 性の不一致とは
- 性の不一致が離婚原因になるか
- 性の不一致が原因で離婚する場合の注意点
【Cross Talk 】セックスレスなどの性の不一致が原因で離婚はできますか?
夫と離婚を考えています。第一子を出産してから夫とセックスレスになってしまい、家に帰っても会話もありません。このような状態でも離婚は可能なのでしょうか。
当事者が合意しているのであれば離婚は可能です。セックスレスなど性の不一致については、それが原因となって夫婦関係が破綻しているといえるような場合に離婚が可能です。
そうなんですね!詳しく教えていただけますでしょうか?
夫婦が不仲になる原因に、セックスレスや性交不能など、性の不一致が挙げられます。性の不一致といっても、軽微なものから夫婦関係が破綻するようなものまであり、背景に不貞行為があるような場合もあります。このページでは、性の不一致で離婚ができるのか、離婚ができるとして慰謝料や、離婚をする場合の注意点についてお伝えいたします。
性の不一致とは?
- 性の不一致とは
- 性の不一致の種類
セックスレスのほかにも性の不一致には種類があるのですか?
はい、性の不一致について確認しましょう。
性の不一致については、特に法律で定められた定義があるわけではなく、性に関する価値観が合わない場合や、怪我や病気・特徴などが原因で、性交渉などの関係がうまくいかないことをいいます。
一方的な性交渉の拒否であるセックスレスが話題にあがることが多いのですが、他にも
- 性機能の不全などによって性交ができない
- 一方が拒んでいるのに性交を強要する
- 異常な性交を強要する
などが挙げられます。
性の不一致を理由に離婚はできる?
- 協議離婚・調停離婚は当事者が合意すればできる
- 性の不一致は裁判離婚をする提起する際の離婚原因になりうる
セックスレスなどの性の不一致を理由に離婚はできるのでしょうか。
協議離婚・調停離婚なら当事者が納得していれば可能ですが、裁判離婚をする際には離婚原因が必要です。性の不一致も離婚原因になる場合があり、その場合には裁判離婚を請求できます。
裁判離婚を請求するのに離婚原因が必要
離婚には、当事者が話し合って行う協議離婚、離婚調停で合意をして行う調停離婚、裁判所の判決によって行う裁判離婚があります。
協議離婚・調停離婚をする場合には、当事者が合意していれば離婚は可能です。
一方、当事者で合意ができず裁判離婚をする場合には、民法770条1項各号に規定されている離婚原因があることが必要です。
離婚原因となるもの
離婚原因について定める民法770条1項は次のように規定しています。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
1号から4号では夫婦関係の破綻を認定できる具体的な事情が規定されており、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由がある」という規定で、夫婦関係が実質的に破綻している場合をあげています。
性の不一致は離婚原因になる?
セックスレスや性交不能を含めた性の不一致について直接規定はしていないので、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由がある」といえるかどうかによって判断します。
もし性の不一致が原因で、夫婦生活が破綻しているといえる場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」として裁判により離婚をすることが可能です。
なお、性の不一致のほかにも、例えばDV・モラハラがあるような場合には、これらを総合して婚姻を継続し難い重大に事由があるといえるかを判断します。
また、セックスレスであるような場合で、その理由が実は不貞行為を行っていたからといった場合には、1号が適用されて離婚原因となります。
性の不一致で離婚する場合に慰謝料を請求することはできる?
- 相手に悪質な態度があった場合は慰謝料を請求しうる
セックスレスなどの性の不一致を理由に離婚はできるとした場合、慰謝料の請求は可能なのでしょうか?
慰謝料を支払うべき精神的苦痛があった場合には、請求が可能です。
性の不一致で離婚する場合に慰謝料の請求が可能なのでしょうか。
そもそも慰謝料請求は、民法の不法行為の規定に基づいて行うもので(民法709条・民法710条)、婚姻中に精神的苦痛を受けた場合には慰謝料の請求が可能です。
相手に悪質な態度があった場合は慰謝料を請求しうる
性の不一致があっても、それだけではどちらが悪いとも言い切れない場合には、慰謝料の請求をすることはできません。
しかし、性の不一致とあわせて、悪質な態度がある場合には、精神的苦痛があったとして、慰謝料請求しうる場合があります。
また、例えばセックスレスの背景に不貞行為があるような場合には、不貞行為にもとづく慰謝料請求が可能となります。
性の不一致で慰謝料を請求できる場合・できない場合
性の不一致で慰謝料請求が認められやすい場合と、そうではない場合を確認しましょう。
慰謝料請求が認められやすくなる状況として、
- 合理的な理由なく性交渉を一方的に拒否し話し合いにも応じない
- 拒否をしているにもかかわらず無理やり性交渉を強要する
- 「家から追い出す」「生活費を入れない」など脅しによって性交渉を強要する
といった場合が挙げられます。
一方で、
- 性交できない理由が病気や事故などが原因で拒否するのがやむをえない
- 双方ともに性交渉をするつもりがなく長いあいだセックスレスになっている
といった場合には、慰謝料請求を認めることが妥当といえるまでの不法行為は存在しないと認定される可能性が高いです。
慰謝料が高額になる場合
性の不一致による慰謝料が高額になりえる要素としては、
- 婚姻期間が長期間である
- 性の不一致の期間が極めて長期間である
- 幼い子どもがいる場合の離婚
- 不貞行為・DV・モラハラなどの他にも精神的苦痛を与える行為をしている
といった場合が挙げられます。
精神的苦痛がより大きくなる事情があれば、より慰謝料が高額になる可能性があるといえます。
性の不一致で離婚する場合の注意点
- 性の不一致で離婚する場合の注意点
- 性の不一致で離婚するハードルは高いこと・証拠収集の方法、など
性の不一致が原因で離婚をする場合にはどのような注意が必要ですか?
まず、性の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」として認定してもらうことはハードルが非常に高いということを知っておいてください。
性の不一致で離婚する場合の注意点について確認しましょう。
離婚原因の中でも証拠の収集の難易度は高い
性の不一致を原因に離婚するためには、証拠収集の難易度が非常に高いことを知っておきましょう。
離婚原因があることは最終的には裁判で証拠によって立証しなければなりません。
不貞行為における他の異性とラブホテルに入った瞬間の写真というような分かりやすい証拠がある場合と比べ、明確な証拠が存在し難い性の不一致というものを立証し、それが「婚姻を継続し難い重大な事由」と認定されることは非常に難しいといえます。
セックスレスの証拠収集
セックスレスであるということを証明しようとすると、性交渉をしていないことを立証しなければならないのですが、これを証明することは実際困難です。
そのため、セックスレスであることを推認させる事情を重ねるしかありません。
例えば、性交渉に関する内容をやりとりしたメール・ボイスレコーダー・動画・SNSのメッセージのやりとりのようなものを集めます。
性交渉に関する内容だけではなく、例えば特に理由なく毎日夜遅く帰ってくることが続いている、会社の始業時間よりも朝早く出社するような場合には、二人の時間をとらないようにしようとしていると認定され、セックスレスを間接的に証明することも可能となりえるでしょう。
また、カウンセリングに通うことを提案したのに拒否をされたような場合も、セックスレスを推認することが可能です。
メールやボイスレコーダーのように、事実を客観的に認定できるものがあれば良いのですが、これがない場合でも、日記などにまとめておいて、他の客観的事実と一緒に認定できるようにしておきましょう。
性交不能の証拠収集
性交不能についても、基本的にはメール・ボイスレコーダーなどの客観的事実を収集したり、日記などで状況をまとめます。
性交不能についてはあわせて、病院での治療などを行ったかどうか、などについても証拠にできるようにしておきましょう。
性的異常の証拠収集
性的異常の証拠についても同様にメール・ボイスレコーダーなどの客観的事実を収集したり、日記などで状況をまとめます。
また、明確に性的異常を認定できそうな事情(例:性具を購入している・SM目的ホテルに連れて行こうとする・ハプニングバーへの同行を執拗に依頼してくる)がある場合には、積極的に証拠にして収集するようにしましょう。
他の離婚原因がないかも疑っておく
他の離婚原因になるものがないかも疑っておきましょう。
セックスレスも原因をよく調べてみると他の異性と不貞行為をしているようなことがあります。
また、性的不一致が原因でDVなどの暴力行為・暴言などのモラハラに発展する場合には、これらの証拠も収集すれば、婚姻を継続し難い重大な事由があると認定されやすくなります。
どのような主張ができ、それを裏付けるために収集すべき証拠にはどのようなものがあるか、弁護士に相談しておくのが大事です。
まとめ
このページでは、性の不一致で離婚が可能かについてお伝えしました。
離婚の合意ができない場合でも、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合には離婚できる可能性があります。
どのような事実を主張して、どうやって証拠で裏付けるか、を精密に考える必要があるため、まずは弁護士に相談してみてください。