- 離婚届を勝手に出すと相手に通知される
- 当事者双方が離婚の意思がないにもかかわらず勝手に離婚届だけを出しても無効
【Cross Talk 】離婚届を勝手に出されたらどうなるの?
夫と険悪な状態が長期間続いています。もし勝手に離婚届を出された場合にはどうなるのですか?
協議離婚は当事者双方が離婚に合意して行われる必要があり、勝手に離婚届だけ出しても無効なので安心してください。万が一勝手に出された場合の対応方法として、離婚無効確認調停・訴訟というものがあります。
そうなんですね!詳しく教えて下さい。
協議離婚をする際には離婚届の提出を行います。通常離婚の合意をしてから当事者が納得して提出するものなのですが、届けにあたって当事者が必ず出頭しなければならないものでもない以上、勝手に出すことも可能です。しかし協議離婚は当事者の合意によって離婚するもので、勝手に出しても無効です。本当に勝手に離婚届が出された場合の対応方法などについても確認しましょう。
離婚届を勝手に出すとどうなるか
- 離婚届を勝手に出すと相手に通知される
- 離婚届だけ勝手に出しても無効
離婚届を勝手に出すとどうなるのですか?
手続きのうえでは相手に通知されることになっており、離婚も無効です。
離婚届を勝手に出された場合にどのようなことが起きるかを確認しましょう。
離婚と離婚届の関係
離婚と離婚届の関係について整理しましょう。
離婚には、
- 夫婦の合意で離婚する協議離婚
- 離婚調停で離婚する調停離婚
- 離婚審判で離婚する審判離婚
- 離婚裁判で離婚する裁判離婚
の4種類があります。
このうち、裁判所を利用する調停離婚・審判離婚・裁判離婚については、調停・審判・判決があると離婚が成立するので、離婚届は離婚したことの報告にすぎません。
一方で協議離婚については、夫婦の離婚の合意と離婚届の提出で離婚が成立することになっています。
離婚の種類によって離婚届がどのような意味を持つか異なることに注意が必要です。
離婚調停・離婚審判・離婚裁判をした場合には勝手に出される
以上のように、離婚調停・離婚審判・離婚裁判をした場合には、それぞれ調停・審判・裁判がされることによって離婚が成立しているので、離婚届は当事者のいずれか一方が勝手に出すものであるといえます。
協議離婚で勝手に離婚届だけ出しても無効
問題は協議離婚として離婚届を勝手に出された場合です。
協議離婚は夫婦が離婚の合意をして離婚届を提出することによって成立します。
しかし、離婚届を作成して提出すれば形式的には離婚することが可能です。
この場合、離婚の合意ができていないので、実質的には離婚は無効とされています。
勝手に離婚届を出すと通知される
以上のように離婚届けは勝手に提出して受理される可能性があります。
ただし、戸籍法27条の2第2項で、本人が離婚届の提出に出頭したことが確認できない場合には、その当事者に通知することを規定しています。
そのため、万が一勝手に離婚届を出された場合には、通知を受けて確認することができます。
なお、離婚届が受理されたからといって、合意のない離婚届の提出が有効になるわけではありません。
離婚届後に結婚をすると重婚になる
離婚届を勝手に出した後に、別のパートナーと結婚することがよくあります。
この場合、離婚をしたとされる前婚がそのまま法的には存在する一方で、形式的には戸籍上離婚したこととなっているため、後婚も当然に無効になるわけではなく、法的には重婚という状態になります。
重婚の場合,前婚の当事者及び後婚の当事者は、後婚につき取消しを請求することができます(民法744条)。
文書偽造に関する罪に問われる
離婚届を相手に知られずに出すためには、署名・押印を偽造する必要があります。
つまり離婚届を勝手に出した場合には、有印私文書偽造罪(刑法159条)が成立し、作成した離婚届を提出すると有印私文書行使罪(刑法161)が成立します。
また、離婚届が提出されると、離婚した事実が戸籍に記載されることになり、誤った事実を記載させることで、公正証書原本不実記載罪(刑法157条)が成立します。
離婚届を勝手に出された場合の対応方法
- 離婚無効調停・離婚無効裁判で離婚を無効とする
- 離婚が無効になった場合には戸籍も訂正する
万が一離婚届を勝手に出された場合にはどうすればいいんでしょうか。
離婚無効調停・離婚無効裁判で離婚を無効と判断してもらって戸籍を訂正することになります。
離婚届が勝手に提出されて離婚したとされた場合には、離婚無効調停・裁判を提起して離婚が無効であるとしてもらって、戸籍の訂正を行います。
離婚無効確認調停
離婚届が勝手に提出されたことによって離婚されたと扱われた場合には、離婚の合意がなかったとして離婚が無効であることを法的に確定する必要があります。
このような場合、「裁判を起こす」「訴訟をする」ことになるのですが、離婚などのような家庭の問題で手続きの後にも当事者の関係が続くようなものについては、まず当事者で意見をすりあわせて手続きを行なうのが適切という観点から、まず調停を行なうこととなっています(調停前置主義)。
そのため、離婚無効確認調停を起こします。
調停とは、裁判官1名と離婚問題に詳しい調停委員2名が、当事者相互から意見を聞き、調停案を当事者に示し、これに応じる形で紛争解決をする手続きです。
当事者の意見を聞きながら中立な立場の裁判官・調停委員が公平な立場で落とし所を探る手続きのイメージです。
ただ、本件のような離婚無効確認においては、離婚届を勝手に出したのか出していないのか、という争いになるので、落とし所を探るという手続きでの解決が難しい可能性が高いです。
調停案に当事者が合意出来ない場合には、不調として離婚無効確認調停は終了します。
なお、些細な食い違いで合意に至らない場合には、審判という手続きが利用されることがあるのですが、離婚届が勝手に出されたか出されていないかで最後まで争いになっている場合には、些細な食い違いとは言うことができず、審判が行われることはあまりありません。
離婚無効確認訴訟
離婚無効確認調停が不調に終わると、裁判を起こして離婚無効確認をしてもらいます。
裁判では、離婚に合意をしていなかったという事実を主張し、それを裏付ける証拠を提出して、離婚が無効であることを確認する判決を勝ち取ります。
離婚無効確認訴訟では、離婚届が偽造であることの立証として筆跡鑑定を行ったり、離婚届が提出された日時に離婚をする理由がないことを主張・立証することになります。
戸籍の訂正
離婚が無効であるという調停・判決を得た後に戸籍の訂正を行なうことも忘れずに行います。
調停が成立した日もしくは判決が確定した日から10日以内に戸籍の訂正を行なうこととされています(戸籍法116条1項)。
この戸籍の訂正は、住民票などを取り扱っている、お住いの市区町村の市民課などで行います。
離婚届を出されそうなときには離婚届不受理申出
- 離婚届を出されそうな場合の予防策に離婚届不受理申出がある
現時点では離婚届を出されていない場合に、なにか予防策のようなものはないでしょうか。
役所に「離婚届不受理申出」を出しておけば、離婚届は受理されません。
もし離婚届を勝手に出されそうな場合の予防策が離婚届不受理申出です。
離婚届不受理申出とは、離婚届があった場合に、市区町村で届けを受理しないとする制度で、これによって離婚届が受理されて勝手に離婚扱いになるのを避けることができます。
離婚届不受理申出は、本籍地もしくは住所地の市区町村の離婚届を扱っている窓口で行います。
郵送ではできないので気をつけましょう。
また代理人による申出も原則できず、代理人によって行なう場合には公正証書などが必要となります。
手続きについては必ず申出をしようとする市区町村のホームページを確認しましょう。
まとめ
このページでは、離婚届を勝手に出された場合についてどうなるかお伝えしました。
もし離婚届を勝手に出されたような場合には、調停・裁判などの手続きが必要となります。
弁護士に相談して確実に手続きをすすめることをおすすめします。