離婚の取消し・無効について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 詐欺・脅迫による協議離婚は取り消すことができる
  • 離婚届を書いた後に気持ちが変わった、勝手に離婚届を出された場合は無効になることも
  • 協議離婚を無効にしたいときには、協議離婚無効確認調停を申し立てる

目次

【Cross Talk 】勝手に離婚届を出されてしまいました。無効になりますか?

夫が離婚届を勝手に出してしまいました。離婚を取り消すことはできますか?

はい。協議離婚無効確認調停を申立て、2人の間で合意でき家庭裁判所が認めた場合には離婚を無効にできます。

詳しく教えてください!

離婚の取消し・無効はできるのか、協議離婚無効確認調停や不受理申出制度について解説していきます。

離婚届を勝手に提出された、脅迫や詐欺により離婚することになった場合は「協議離婚無効確認調停」を申し立てることが可能です。
協議離婚は、夫婦が2人とも離婚意思がある状態で離婚届を提出することで成立します。よって離婚意思がなく届出がされた場合には無効にできる可能性があります。

今回は協議離婚成立の要件と離婚の取消しについて、離婚を取消し・無効にする手続を解説していきます。

詐欺・脅迫による協議離婚は取消し、離婚の意思がなかったときなどは無効

知っておきたい離婚のポイント
  • 詐欺・脅迫、勝手に離婚届を提出された場合は離婚を無効にできる可能性がある
  • 協議離婚は、夫婦2人が離婚の意思をもち離婚届を提出することが要件である

協議離婚は離婚届を出せば成立しますよね?取消しができるのですか?

協議離婚をするためには確かに離婚届を提出します。しかし、夫婦2人が離婚の意思をもっていることも要件になりますので、どちらかに離婚意思が無い場合は調停を申し立てることが可能です。

協議離婚成立の要件とは

民法第763条※1「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」の定めにより、夫婦は協議離婚をすることができます。
協議離婚は、夫婦がお互いに離婚の意思をもち離婚届を提出する必要があります。

詐欺・脅迫による協議離婚は取消しが可能

詐欺または強迫によって離婚した方は、取消しを家庭裁判所に請求することが可能です。
例えば、配偶者に「形式上離婚してくれないか」と唆された、脅されて離婚届を書き捺印した例などが該当します。

取消権は、当事者が詐欺を発見もしくは強迫を免れた後3カ月を経過したときには消滅してしまいます。
(民法第747条2項)
詐欺・脅迫により離婚し、取り消したい場合には3カ月以内に家庭裁判所に申し立てましょう。

気持ちが変わった、勝手に離婚届を出された場合は無効になることも

離婚の意思があり離婚届を書いたものの、気持ちが変わり「離婚意思」がなくなった際には離婚は無効になるとされています。
しかし、離婚届を提出した後には戸籍上は離婚が成立しています。
戸籍の訂正をする際には、「確定判決」が必要となります。

戸籍法※2第116条 確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。

具体的には、裁判所に協議離婚無効確認調停※3を申し立てる、もしく人事訴訟を起こす必要があります。

人事訴訟法※4第2条 この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に係る訴訟をいう。
1 婚姻の無効及び取消しの訴え、離婚の訴え、協議上の離婚の無効及び取消しの訴え並びに婚姻関係の存否の確認の訴え

配偶者に勝手に離婚届を提出された際にも、調停もしくは訴訟の手続を行います。

離婚を取消し・無効にする手続

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚を無効にしたい方は、協議離婚無効確認調停を申し立てる
  • 相手が勝手に離婚届を提出することが予測される場合は「不受理申出」を

不受理申出とは何ですか?

婚姻届や離婚届、養子縁組など届出によって効力が生まれるものについて、自身が窓口に赴き届け出たことを確認できないときには届出を受理しないようにする手続です。

協議離婚無効確認調停を申し立てる

勝手に離婚届を出された、気持ちが変わり離婚したくなくなったものの離婚届が出されたといった場合には家庭裁判所に協議離婚無効確認調停を申し立てます。
協議離婚無効確認調停は、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てます。収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手、申立書とその写し、添付書類が必要です。

調停により2人の間で協議離婚が無効であるという合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査を行い合意が正当であると認められると合意に従った審判がされます。
調停で解決できない場合には訴訟を起こす流れとなります。

相手が既に別の方と結婚している場合は、婚姻取消しの調停の申立ても必要になる

離婚後に相手が既に別の異性と結婚している場合は、結婚した相手方を含めて婚姻取消しの調停を申し立てることが必要です。
調停が不成立に終わった際には、婚姻取消しの訴訟を起こします。※5

不受理申出制度について知っておこう

相手が勝手に離婚届を提出することが予測されるときには、役所に「不受理申出」をしておきましょう。

不受理申出とは、婚姻届や離婚届など届出によって効力を生ずるものについて、自身が窓口に赴き届け出たことを確認できないときには届出を受理しないようにする手続です。※6

まとめ

「離婚届を勝手に出されたが、無効にしたい」「詐欺や脅迫で離婚届を提出してしまい困っている」といったお悩みをお持ちの方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
離婚問題は、法律や戸籍など素人には耳慣れない言葉が多く法律の専門家に相談することでスムーズに解決できる可能性があります。
まずは無料相談の活用を検討してみましょう。