- 親権とは
- 離婚をする際の親権の決め方
- 親権を獲得するための有利な進め方について
【Cross Talk 】子どもの親権を獲得したいのですが…
夫と離婚を考えています。すでに話し合いをしたのですが、子どもの養育をどちらが行うかについて全く折り合いがつきません。
親権が決まらなければ離婚調停や裁判によります。年齢や本人の意向にもよりますが、年齢が幼ければ幼いほど母親の方が一般的には有利です。
子どもはまだ10歳です。相談に乗ってもらえますか?
成年に達しない子どもに対する身分や財産に関する権利・義務のことを親権と呼びます。婚姻中は父母が共同で親権を行ないますが、離婚をする際にはどちらか一方が親権者になります。夫婦のどちらが親権者となるのか、その決め方や、親権を獲得したいときに有利になるにはどのようにすれば良いかなどについて確認しましょう。
親権とは
- 親権とは
- 離婚をするときには親権はどちらか一方のみが行使することになる
そもそも親権とはどのようなものなのでしょうか。
子どもの財産管理や、養育をするにあたって親が子どもに対して持っている権利や義務をまとめたものを親権と呼んでいます。婚姻中は共同して行うことになるのですが、離婚をするとどちらか一方のみが行使することになります。
親権とはどのようなものか、誰が持っているものなのかについて確認しましょう。
親権とは
親権とは、成年に達しない子どもに対して養育や財産管理のために親が有している権利や負っている義務の総称をいいます。
未成年者の保護の観点から、子どもの養育・財産管理のために、親権者である親には様々な権利や義務が定められています。
例えば、
・子どもの居所を指定する権利(民法821条)
・親は子どもの法律行為についての同意権(民法5条)・代理権(民法824条)
などがあります。
離婚をするときには親権はどちらか片方の親に決める
親権は婚姻中は父母が共同して行うことになりますが(民法818条3項)、離婚をする場合にはどちらか一方のみが親権者となります(民法819条)。
そのため、離婚の際にはどちらが親権者として子どもを養育するかを決める必要があり、争いになる場合があります。
離婚する際の親権の決め方
- 協議離婚をする場合には親権者も当事者の協議で決める
- 調停離婚をする場合には調停で合意し裁判の場合には裁判所が定める
親権はどのように決めるのですか?
協議離婚をする場合には親権者も決める必要があります。決まらない場合には離婚裁判を提起することになるのですが、その前に離婚調停を経る必要があります。
離婚する際の親権の決め方は次の通りになっています。
協議離婚の場合
民法819条1項では、協議離婚をする場合にはその一方を親権者と定めるよう規定しています。
協議離婚をする際には手続きとして離婚届の提出が必要ですが、離婚届には未成年者の子どもがいる場合の親権者を記載する欄があります。
仮に親権についてこれから詰めるとして、離婚だけでも先にしたいと思っても、子どもの親権が決定せずに記載がされていない場合には、離婚届は受理されません。
離婚に合意していて、争いがあるのが親権のみであるような場合でも、合意できていない場合には法的手続きを利用する必要があります。
離婚調停・離婚裁判の場合
法的手続きとして、離婚裁判を起こす前に、必ず離婚調停をする必要があります。
離婚調停では調停委員が当事者の話を聞きながら財産分与や養育費などについての意見をすりあわせ、親権についても同様に取り扱います。
当事者どちらが親権者となるかも含めて全て合意ができ調停が成立すると、その合意の通りに親権者が決定します。
調停でも合意が得られない場合には、離婚裁判を提起することになり、そこでは裁判所が父母の一方を親権者と定めることになります(民法819条2項)。
親権獲得を有利に進めるには
- 親権についての諸原則
- 親権獲得を有利にすすめるための方法
私達夫婦は離婚については合意していますが、親権については合意に至っていません。夫は「自分の方が稼ぎがあるから自分が面倒を見た方が子どもにとって良い。」と言っています。そう言われるとなかなか反論もできず…。
お子さんは10歳とおっしゃってましたね?一般的に親権は母親の方が有利です。夫が自分の方が稼ぎがあるとおっしゃるのであれば、親権を勝ち取ったうえで、養育費をきちんと払ってもらう方向にシフトしましょう!
親権の獲得を有利に進めるためにはどのような方法があるでしょうか。
親権の決定に関する原則
親権の決定に関する原則について、調停や裁判では以下のような原則に基づいて判断されることを知っておいてください。
・現状維持の原則
・子の意思の尊重
・兄弟姉妹不分離の原則
まず、親権に関しては、母性優先の原則、つまり母親が有利に働きます。
これは、子どもは母親と過ごしている時間が多いことが理由に挙げられますが、とくに乳幼児の場合には授乳などの問題もあり、この原則によってより強く母親が有利になります。
子どもの年齢や、母親の育児の内容、それまでの父親の育児への関わり方など、個別の事情によって、この原則をどこまで重視するかどうかが変わってきます。
次に、今ある環境はなるべく変えるべきではないとする、「現状維持の原則」というものがあります。
子どもの生活環境を大きく変えることは、子どもの心身の成長に大きく作用します。
引っ越さなければならない場合や、学区が変わり転校が必要になるような場合、子どもには環境の変化という大きな負担が生じます。
すでに別居をしていて、別居先で学校に行っているような場合には、現状維持の原則が有利に働きますが、これから実家に帰る等によって新しい学校に行かせることになるのであれば不利に働くことになります。
次に「子の意思の尊重」という原則です。
当然ですが、子どもが嫌がっている方の親を無理やり親権者とするのは、子どもにとって負担となります。
子どもが一定以上の年齢になって、離婚をするならばどちらの親についていきたいかという判断ができる状態になってくると、調停委員や裁判所はより子どもの意向を重要視することになります。
なお、15歳以上の場合には裁判所は子どもの陳述を聞かなければならないことになっています。(家事事件手続法169条1項)。
最後に「兄弟姉妹不分離の原則」です。
子どもが複数居る際には、基本的に兄弟姉妹は分離しないで全員どちらかの親権とするのが望ましいと考えられています。
親権獲得を有利にするためには
以上を踏まえると、親権獲得を有利にするためには、争って調停や裁判になった場合に、上記のような判断基準のもとで有利となる状況を作りつつ、そのことを示す証拠を集めていくことが不可欠といえます。
例えば、
・現状別居先の住所から学校に通って両親(子どもからすると祖父母)も協力して面倒をみている(現状維持の原則)
・幼いながらも子どもは母親と離れることを嫌がっている(子の意思の尊重)
・兄弟数人と一緒に暮らしている(兄弟姉妹不分離の原則)
それまでの父親の育児へのコミットや、維持したほうが良い現状などを裁判所で主張するための証拠となるものを積極的に確保することは、調停・裁判を有利にします。
調停・裁判になった際に不利となることを相手が理解すれば、交渉段階でもそれを材料に有利に進めることが可能といえるでしょう。
まとめ
このページでは、親権の決め方や、親権獲得のために有利になる方法についてお伝えしました。
親権獲得のための交渉を有利にすすめるためには、親権の判断の基準となる原則に沿って行動し、証拠を集めることが重要です。
どのような行動や証拠が必要かは、個々のケースで異なるため、弁護士に相談しながら行うことをおすすめします。