離婚時における株の財産分与について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 結婚中に夫婦が協力して築いた財産は、株も含めて財産分与の対象
  • 婚姻前に取得した株・会社名義の株などは対象外となる可能性がある
  • 株は現物分割・代償分割・換価分割の3つの方法で分割できる

目次

【Cross Talk 】離婚時に株は財産分与できる?

配偶者と離婚に向けて話し合っています。配偶者の名義で株を保有しているのですが、財産分与できますか?

婚姻中に取得し夫婦が協力して築いた資金で購入したものであれば分与対象で名義は問いません。ただし、会社名義の株・結婚前に取得した株は対象外となる可能性があります。

分与できるのですね!詳しく教えてください。

離婚時の株の財産分与について解説していきます。

離婚したまたは離婚を予定している夫婦のどちらか一方が株を保有している場合は、財産分与できるのでしょうか?結婚期間中に協力して形成したお金で取得した株は財産分与の対象となります。
相続・贈与で得た株や会社名義の株など、分与対象外となる場合もあります。離婚時の株の財産分与について、分与の方法・注意点について解説していきます。

婚姻中に夫婦が協力して得た株は分与できる

知っておきたい離婚のポイント
  • 夫婦が協力して形成した財産は株を含めて分与の対象となる
  • 会社名義の株・結婚前から保有していた株は分与の対象にならない可能性がある

所有している株は、結婚中に私が会社員として稼いで購入しました。妻は家事をしていただけなのに、分与しなければならないのですか?

どちらかが働きに出ている場合でも、他方が家事をして財産形成に協力した場合には分与の対象となります。

婦が協力して形成した財産は分与の対象となる

株・投資信託など有価証券を含めた財産は「夫婦が婚姻中協力して形成したもの」である場合、離婚時に財産分与の対象となります。

株はどちらか一方の名義になっている事例が多いです。しかし、例えば妻の名義であっても2人で協力して築いたお金で購入したものであれば財産分与の対象となります。
どちらか一方のみが働いていた場合でも一方が家事をして支えていたときには、「実質的に夫婦の財産である」と考えられます。※1

民法762条※2「夫婦間における財産の帰属」では以下のように定められています。

第762条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

財産分与は基本的に2人で話し合い決定しますが、話し合いがまとまらないときには家庭裁判所に調停を申立てることになります。

財産分与の対象になる株とならない株

2人で協力して築いた財産は財産分与の対象となりますが、以下の場合では分与の対象外とみなされる可能性があります。

婚姻前から保有している株
相続・贈与で取得した
会社名義の株など

会社名義の株に関しては、基本的に「会社の資産」とみなされる可能性が高いでしょう。
ただし、夫婦で会社経営をしており実質的に個人の財産である場合には財産分与の対象となる事例があります。弁護士など専門家に相談してみましょう。

相続・贈与で得た株など、配偶者の協力を得ずに取得した財産は「特有財産」とみなされ財産分与の対象外です。
離婚時の財産分与は原則1/2で分けることとされていますが、離婚後の生活保障として多めに譲る、慰謝料を上乗せする場合もあります。
分与割合も2人で相談して決定することになります。

株を財産分与する方法と注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 株の分割方法は現物分割・代償分割・換価分割の3つ
  • 上場株式と非上場株式では手順が異なるため注意する

保有している株式が非上場株式なのですが、どうやって評価すれば良いですか?

基本的に「時価」で評価します。非上場株式の分割は専門知識が必要となりますので、税理士など専門家に相談することをおすすめします。

現物分割・代償分割・換価分割の3つの方法がある

株や不動産など現物の財産は離婚時の場合「現物分割・代償分割・換価分割」の3つの方法で分けることが可能です。

現物分割は現物をそのまま分ける方法で、代償分割は一方が株を取得しもう一方には相応の財産または現金を譲る方法です。
換価分割は株を売却した代金を分割します。

株は市場が開いている間は毎日価額の変動が生じますので、売却のタイミングが難しい事例が多いです。価額が下がっている際には代償分割にする、上がっているときには売却してしまい換価分割するなど状況に応じて対応しましょう。

なお財産分与が土地や建物・株式などの有価証券で行われた際には、分与した人に譲渡所得税が課される可能性が生じます。※3

自身もしくは配偶者が社長であり出資した場合にも注意が必要です。
出資(増資)したお金が夫婦の共有財産である場合、持ち分割合が財産分与の対象となります。
夫婦で出資した、結婚前に会社を設立し婚姻中に増資したなどの状況でも話し合いが必要となります。

株の分与は上場株式と非上場株式で方法が異なりますので、チェックしておきましょう。

上場株式の場合

上場株式を分与する場合、現物分割・代償分割で名義が変わるときには管理先の証券会社に名義変更の申請手続きを依頼します。名義人がそのまま保有するときには変更の手続きは不要です。
換価分割の場合には、売却した代金を引き出し分与します。

非上場株式の場合

非上場株式は市場で取引することができません。
基本的に「時価」で評価し、分与の方法については話し合いで決定します。
非上場株式を分与する際には株主に対して承認を得る必要があります。※4
株主の承認は会社法によって「株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない※5」という定めがあります。ただし、定款に別段の定めがある場合は記載された方法に従い株式を分与します。

株式譲渡について会社の承認が得られた際には、離婚協議書・公正証書など記録したうえで財産分与として株を譲渡します。譲渡した人と譲り受けた人が共同して、会社に対して株主名簿の名義の書き換えを請求します。※6

分与や評価額で意見が別れるときには弁護士に相談を

「夫は譲り受けたいというが妻が応じない」「評価額を巡って意見が別れている」など財産分与でトラブルが起きたときには弁護士への相談をおすすめします。

財産分与で意見がまとまらない、話し合いが出来ない場合には家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申立てます。
ただし、調停をする前に弁護士を代理人として話し合うことも可能です。
離婚時の財産分与における話し合いは当事者同士では感情的になってしまいがちですが第三者が介入することで、冷静に話し合えることが期待できます。法律の専門家として対処法を聞くこともできます。

まとめ

離婚時の財産分与における株の取り扱いについて解説してきました。
まずは株が夫婦で協力して得た財産であるか否かを検討しましょう。話し合いがまとまらない、意見が割れているときには弁護士への相談をおすすめします。