- 財産分与とは
- 財産分与の対象になる財産
- 財産分与を争う場合の方法
【Cross Talk 】財産分与ってどのようなものですか?
夫と離婚を検討しています。お金周りについて検討しているのですが財産分与の仕組みがいまいちわかりません。
婚姻期間中に作り上げた資産について離婚時に分配するのが財産分与です。どのような財産が対象になるかを確認しましょう。
よろしくお願いします!
夫婦は婚姻期間中、協力して生活を送り、財産を築き上げます。そして、離婚をする際には、その財産を分割することになります。どのような財産が財産分与の対象となるか、争いがある場合にはどのように決定するのかについて確認しましょう。
財産分与とは
- 財産分与の概要
- 財産分与の請求には2年の期限がある
財産分与とはどのようなものなのでしょうか。
婚姻期間中に夫婦で形成した財産について分割するものです。
財産分与とはどのようなものなのかを確認しましょう。
財産分与とは
財産分与とは、婚姻期間中に築き上げた財産を離婚時に分割することをいいます。
夫婦は婚姻期間中、協力して財産を築くことになります。
例えば、将来の貯蓄として預金を貯める・自宅や自動車を購入するなどです。
これらの夫婦が共同で築いてきた財産を離婚の際に精算するのが財産分与です。
そのため、離婚の原因がどちらにあるか、子どもの親権がどちらにあるか、という問題とは無関係に検討するのが基本となります。
なお、一方の名義で取得した財産については、一方の財産になるという規定がありますが(民法762条1項後段)、形式的に一方の名義でも、実質的に夫婦共有財産といえるものについては分与の対象になります。
財産分与の種類
財産分与はその性質からして
- 精算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料的財産分与
の3つの種類があります。
精算的財産分与とは、ここまでお伝えしているように、夫婦が婚姻期間中に形成してきた財産についての精算を行うものです。
ここまでお話した財産分与は主にこの性質を持っている財産分与です。
扶養的財産分与とは、離婚後の生活に不安がある一方が生活を維持することを目的とする財産分与のことをいいます。
夫婦が離婚をする際に、多くのケースで妻が専業主婦やパートとして働いている場合で、収入がない・少ないということがあります。
このような場合に、一方の生活が困窮しないように支払うのが扶養的財産分与です。
慰謝料的財産分与とは、夫婦の一方が他方に慰謝料を支払う義務がある場合に、慰謝料分を考慮して行う財産分与をいいます。
夫婦の一方が不貞行為を行った・DVをしたような場合には、他方に慰謝料の支払いをする場合があります。
財産分与の中で慰謝料を考慮して多めに支払うような場合、慰謝料相当部分については慰謝料的財産分与に該当します。
財産分与の割合
財産分与はどのような割合で行われるのでしょうか。
この点、法律ではどのような割合で財産分与をすると規定するものはありません。
そのため、協議離婚で財産分与の額を夫婦で決める場合には自由に設定しても良いことになっています。
調停離婚の際には調停委員会が意見を述べたり、審判離婚・裁判離婚の際には裁判所が財産分与の額を判断したりします。
このときには、基本的には1/2と判断することがほとんどです。
これについては、夫が働いていて妻が専業主婦であるような場合には不公平ではないか?と感じる方も多いようですが、夫が働く一方で妻が家事・育児に専念してサポートをしていたという評価ができ、1/2と判断されるのです。
ただ、夫婦の一方が著しく浪費をしていた場合や、逆に夫婦の一方に特殊な能力・才能がありそれに基づく資産形成をしていた場合、夫婦共働きなのに妻のみが家事・育児をしていたような場合のように一方の貢献度が高いと評価される場合に、同様に1/2と評価するのは不公平であるといえます。
そのため、民法768条3項は、一切の事情を考慮して定めることができる旨を定めています。
その結果、一方にのみ多く財産分与が認められる場合もあります。
財産分与の請求時期の制限
財産分与は、離婚後2年以内を経過すると請求できなくなります(民法768条2項但書)。
先行して離婚した場合で、一方から財産分与を受けていない場合には、2年以内に財産分与の請求をするようにしましょう。
財産分与の対象となる財産・ならない財産
- 財産分与の対象となる財産
- 財産分与の対象とならない財産
どの財産が財産分与の対象になるんでしょうか?
財産分与の対象となる財産・対象とならない財産について確認しましょう。
財産分与の対象になる財産・対象にならない財産について確認しましょう。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は、夫婦で協力して築き上げたと評価される共有財産です。
そもそも名義を共有にしている財産はその対象ですし、どちらの名義にしているか不明なものについては、民法762条2項が共有に属するものと推定するとしています。
これらの例としては、自宅にある家財・消耗品のようなものが対象になります。
また、夫婦の一方の名義になっているものは、民法762条1項でその名義人の財産になる旨が規定されていますが、実質的に共有財産といえるものについては財産分与の対象となります。
例えば、夫婦で将来のための銀行預金に貯金しているような場合、通常は夫婦のどちらか一方の名義になっていることが多いです。
また、不動産や自動車、保険の解約返戻金のような財産についても、名義が一方になっていることがほとんどでしょう。
実質的に見て夫婦で協力して取得したものについては、共有財産として財産分与の対象になります。
財産分与の対象とならない財産
財産分与の対象とならない財産のことを特有財産といいます。
例えば、夫婦が結婚前から所持していたものや、夫婦の協力とは無関係に取得したものについては、財産分与の対象となりません。
預金でも、夫・妻がそれぞれ結婚前から貯めてきた貯金や、親から相続したような財産については財産分与の対象とはなりません。
借金がある場合の注意
夫婦が債務を負っている場合の処理についても確認しましょう。
例えば、生活費のための借金をしたような場合で、夫婦の家計が同一のような場合、借金については夫婦共同でしたものとして考慮すべきです。
これらの借金は、財産分与の計算をする際に、資産から借金(債務)を差し引く形で考慮するのが通常です。
つまり、共有資産が500万円あって、借金が200万円あるような場合、残った300万円分について財産分与を検討することになります。
なお、夫婦の一方が他方に内緒でギャンブルのためにお金を借りたような場合、これを考慮する必要はないのが通常です。
財産分与に納得がいかない場合
- 財産分与に納得がいかない場合の法的手続
- まず財産分与請求調停を行なう
財産分与の交渉をしても納得がいかない場合には裁判をして請求することになりますか?
その前に財産分与請求調停を行うことになります。
財産分与に納得がいかない場合の法的手続きを確認しましょう。
調停
「法的手続き」というと「裁判」を思い浮かべる人も多いと思います。
しかし、離婚や財産分与など、離婚にまつわる争いについては、裁判を起こす前に必ず調停という手続きを経る必要があります(調停前置主義)。
まだ離婚をしておらず、離婚の条件として財産分与について争いがある場合には、いわゆる離婚調停(正式名称は夫婦関係調整調停(離婚))」を申し立てて、財産分与についても争います。
既に離婚をしていて、財産分与のみを請求したい場合には、財産分与請求調停を申し立てて請求をします。
調停で財産分与に合意が得られれば調停調書を作成し、財産の引渡を行います。
調停で合意が得られなかった場合には、基本的には裁判に進みます。
合意できなかった内容がわずかであるような場合には、審判という紛争解決手続きを利用することもあります。
裁判
調停が不調に終わったら裁判を起こします。
まだ離婚をしていない場合には、離婚裁判の中で、慰謝料・親権・養育費などとともに財産分与についても判断されることになります。
離婚をした後である場合には財産分与だけを求めて裁判をすることも可能です。
裁判で勝訴し判決が確定すれば、相手の財産に対して強制執行をすることが可能となります。
まとめ
このページでは財産分与の基本的な知識についてお伝えしました。
離婚時に問題になる金銭の問題の中でも、夫婦の共有財産についての分配という性質を持っているのが財産分与です。
財産分与を始めとして離婚時の金銭問題に直面したときには早めに弁護士に相談することをおすすめします。