- 専業主婦(夫)でも、離婚時には原則1/2の財産分与を請求できる
- 家事をせず財産形成に協力しなかった場合は、分与割合が少なくなる可能性がある
- 配偶者と話し合いがまとまらない時には弁護士にご相談を
【Cross Talk 】専業主婦(夫)でも離婚時に財産は分与される?
離婚予定の専業主婦です。結婚してから外に働きに出ていないので、財産分与は難しいでしょうか?
いいえ。専業主婦でも家事などで夫婦の財産形成に貢献していると、原則、共有財産の半分を受け取ることができると言われています。年金の分割も可能です。
詳しく教えてください!
「離婚したいけど専業主婦(夫)だから財産をもらえないのでは」「財産が分与されないなら離婚を諦めよう」とお考えの方は多いのではないでしょうか。
夫または妻が外で働いていなくても、家事などで夫婦の財産の形成に貢献したとみなされると財産分与が可能です。
法務省の「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要」によると、婚姻中に一方が専業主婦(夫)になったことで財産分与に影響を及ぼした夫婦はわずか8.6%です。
今回は専業主婦(夫)と財産分与、もらえる金額の目安、年金分割など財産分与の注意点を解説していきます。
専業主婦(夫)でも財産分与は受けられる!家を分与する事例や割合が少なくなる場合とは
- 専業主婦(夫)でも、共有財産の形成に貢献した場合は、離婚時に原則1/2の財産分与を受けとれる
- 専業主婦(夫)になったことで財産分与に影響を及ぼす夫婦の割合は、全体の8.6%
専業主婦でも財産が分与されるんですね!いくら受け取ることができるのでしょうか?
夫婦の共有財産の価額によって異なりますが、原則、共有財産の1/2とされています。一般的に婚姻期間が長いと共有財産が多いため、分与される財産も多い傾向があります。
専業主婦(夫)でも、離婚時には原則1/2の財産分与を受けとれる
離婚時の財産分与では、夫婦が結婚中に協力して築いた財産が対象です。
よって結婚中に夫婦の内一方が働きに出て、もう一方は専業主婦(夫)でも家事などで配偶者を支えていた場合は財産を受け取ることができます。
法務省のホームページには「家庭裁判所の審判では,夫婦が働きをしている場合と、夫婦の一方が専業主夫(婦)である場合のいずれでも、夫婦の財産を1/2ずつに分けるように命じられることが多いようです」と記載されています。
財産分与はいくらもらえる?不動産はローンや名義に注意を
2022年の司法統計年報における、「『離婚』の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の
支払額別」の総数をグラフで示した結果は以下の通りです。
最も多いのは「100万円以下」で次いで「算定不能・総額が決まらず」「400万円以下」です。
婚姻期間が長くなると共有財産が増えますので、財産分与の支払額は多くなる傾向にあります。
婚姻期間25年以上の場合は、「算定不能・総額が決まらず」が最も多く次いで「1,000万円以下」「2,000万円以下」です。
財産分与は、基本的に1/2で分割されますが、離婚後の生活保障や慰謝料として上乗せされ、多めに譲る事例もあります。
相続・贈与で得た財産や結婚前の預貯金は対象外で、婚姻生活中の共通の預貯金や購入したマイホームなどの財産が分与対象です。
不動産を分与する際には、ローンや名義に注意が必要です。
例えば、住宅ローンが残っており、ローンの契約者ではない方が家に住み続ける場合は、住み続ける方が金融機関に相談し、ローンの契約者に変更することをおすすめします。
離婚の財産分与では、「ローンの契約者が家を譲り、婚姻中に専業主婦(夫)だった方がもらった家に住み続け契約者がローン返済を約束する」という場合があります。この場合では、契約者のローン返済が滞った場合に家に住む続ける方は最終的に家を追い出され競売にかけられてしまいます。
ローンを完済した家を分与する場合では、固定資産税・都市計画税の納税通知書などの書類は名義人宛てに届きますので、家の名義人=住み続ける人にしましょう。
住宅ローンの契約変更ができない場合には、代わりの連帯保証人・連帯債務者を探す、売却するなどの方法があります。
専業主婦(夫)の財産分与の割合が少なくなる場合とは
専業主婦(夫)でも家事をしないなど、共有財産の形成に協力しなかった場合は、財産分与の割合が少なくなるでしょう。
ただし、裁判に発展した際には、相手方が家事をしなかったことを立証する必要があります。
専業主婦(夫)になったことで財産分与に影響を及ぼす事例は、全体の8.6%
法務省の「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果」によると、「婚姻生活中に、いずれかが専業主婦・主夫になったこと(常勤職から非常勤職への転換を含む)により収入は減少しましたか。減少した場合には、そのことが、(専業主婦・主夫の側が得る)財産分与の金額に何らかの影響を及ぼしましたか」という問いの結果は以下の通りです。
「収入が減少し、財産分与に影響があった」という回答は全体の8.6%です。
「いずれも婚姻生活中に専業主婦・主夫になっていない」を除くと「婚姻に伴う収入の減少があったが、財産分与には影響なし」という回答が最も多い結果となりました。
離婚時における専業主婦(夫)の財産分与の注意点
- 年金分割の請求は日本年金機構に。請求期限は離婚から2年以内
- 配偶者と財産分与の割合などで揉めている場合は弁護士にご相談を
配偶者に1/2の割合で財産分与を請求したら「専業主婦だったのだからもっと少なくていいだろ」と言われてしまいました。今後のことを考え少しでも多くもらいたいのですが…。
弁護士への相談をおすすめします。たとえ専業主婦でも、共有財産が実質的に夫婦のものであれば原則は1/2と言われています。
離婚時の年金分割請求は2年以内に!受給額に注意
離婚時には、財産分与の他に婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を分割できる「年金分割」が請求できます。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、専業主婦(夫)だった方は3号分割として婚姻期間に国民年金の第3号被保険者期間がある場合に離婚の翌日から2年以内に日本年金機構に請求が可能
です。
合意分割では夫婦の合意が必要ですが、3号分割は当事者の合意は必要ありません。
財産分与の対象は婚姻期間中に協力して形成した財産
財産分与の対象は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産
です。
そのため、結婚前の財産、相続・贈与で得た財産などは対象外です。現金・預貯金・有価証券だけではなく、不動産・貴金属など形のある資産も含まれます。
マイホームの頭金を親に出してもらった場合は、頭金を除いた分を分与します。
マイホームなど名義が自身のものではなくても、実質的に夫婦が協力して築いた財産であれば財産分与の対象です。
3)配偶者と話し合いがまとまらない場合は専門家にご相談を
配偶者と財産分与で話し合いがまとまらない、揉めている場合は弁護士への相談をおすすめします。
第三者である弁護士を通して話し合うことで解決する可能性があります。ただし、場合によっては財産分与の請求調停を申立てた方が良い場合もあります。
弁護士は法律の専門家であり紛争解決のプロですので、離婚問題に強い弁護士に対処法や今後どのような流れになるかを教えてもらうことができるでしょう。
まとめ
たとえ専業主婦(夫)でも、家事などで財産の形成に寄与した場合には共有財産の分割を請求できます。
相手に「専業主婦(夫)だから」という理由で財産分与を拒否されている、分与割合などについて話がまとまらない場合には弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。