- 離婚協議書はどのような場合に必要か?
- 離婚協議書を公正証書で作成する場合
- 離婚協議書の記載例(サンプル)
【Cross Talk 】離婚協議書って必要ですか?
夫と離婚をすることになりました。夫は大手企業で働いており、新しい居住先も明かしていて、慰謝料・養育費などの支払いは問題ないので、離婚協議書は不要かな…と思っています。
離婚後に養育費の支払いが止まったときに、口約束だと養育費の支払いを受けるまで1年以上かかることも珍しくありません。そのため、離婚協議書は必ず、さらに公正証書で作ることをおすすめしています。
そんなにかかるんですね!詳しく教えてもらっても良いですか?
協議離婚をする際には、夫・妻で取り決めた事項は離婚協議書として作成しておきましょう。どんなに相手が信頼できる方でも、細かいところで言った・言わないという事態に発展しかねませんし、養育費のように長期間支払っていくものについては、途中で支払いが滞ることも珍しくありません。離婚協議書は必ず作るべきです。離婚協議書の作成サンプルとともに確認しましょう。
離婚協議書とは
- 離婚協議書とは
- 離婚協議書は公正証書で作成することが望ましい
離婚協議書とはどのようなものですか?
協議離婚をするときに離婚に関する合意を証明するために作成するものです。できれば公正証書で作成しておきましょう。
離婚協議書とは、協議離婚をするにあたっての合意を証明するために作成された書面のことをいいます。
離婚の種類
離婚には、当事者の合意でする協議離婚のほかに、調停で行う調停離婚・裁判で行う裁判離婚があります。
調停離婚・裁判離婚では、それぞれ調停調書・和解調書・判決という形で離婚時の諸条件が書面になります。
しかし、協議離婚をする場合には、慰謝料・財産分与・養育費などの事項は、離婚をするかどうかとは別に協議をする必要があります。
そして、合意した内容を証明するために作成されるのが離婚協議書です。
離婚協議書は必ず作る必要があるか
離婚協議書は必ず作る必要があるのでしょうか。
協議離婚について定める民法では、協議離婚書の作成・提出は求められていません。
そのため、法律上は必ず協議離婚書を作る必要はないといえ、協議離婚書を作らずに離婚をする夫婦も存在します。
しかし、慰謝料・財産分与の支払いはもちろん、子どもがいる場合には長期にわたって養育費の支払いや面会交流などの関わりを持つことになります。
一度揉めてしまうと、養育費の支払いを受けられない・子どもに会わせてもらえない、といったトラブルに発展しかねません。
そのため、離婚協議書は必ず作っておくことを推奨します。
公正証書で作成すると何が違うのか
離婚協議書は公正証書で作成することが推奨されます。
公正証書とは、公証人という公務員に作成してもらう公文書のことをいいます。
離婚協議書を公正証書以外で作成していた場合は、その内容どおりの慰謝料・養育費を支払わない場合には、裁判を起こして判決をもらわないと、強制執行ができません。
公正証書(正確には「執行受諾文言付公正証書」)があると、裁判をせずにいきなり強制執行に進むことができるため、慰謝料・養育費などの支払いがない場合に、速やかに強制執行をすることができます。
離婚協議書はいつまでに作成する必要があるか
離婚協議書はいつまでに作成する必要があるのでしょうか。
離婚協議書の作成は義務ではないので、離婚協議書の作成をいつまでにすべきといった法律もまたありません。
そのため、離婚前から作成しておいても良いですし、離婚と同時に、または離婚後でも作成は可能です。
ただし、財産分与請求権は2年・慰謝料請求権は3年などの時効があります。
時効後に請求をして離婚協議書に書いてもらうということは期待できませんので、なるべく早い段階から作成するのが良いでしょう。
離婚協議書のサンプル
- 離婚協議書のサンプル
- 作成した離婚協議書の取扱い
離婚協議書にはどのようなことを記載すれば良いですか?
離婚協議書のサンプルを見てみましょう。
離婚協議書に何を書くか、サンプルと一緒に確認してみましょう。
夫東京太郎(以下、「甲」)と妻新宿花子 (以下、「乙」)は、協議離婚することに合意し、下記の通り離婚協議書を取り交わす。
書式について
書式について特に制限はないので、パソコンで作成して、プリンターで印字しても構いません。
タイトル
タイトルについても決まりはないので、「離婚協議書」とするのが良いでしょう。
当事者双方が離婚に合意したこと
第○条と記載する前に、双方が離婚に合意して離婚協議書を取り交わす旨を記載します。
夫・妻それぞれのフルネームを全て記載すると、内容が読みづらくなるので、それぞれ「甲」「乙」と置き換えることもこちらで記載します。
親権者・監護者の指定
親権者・監護者の指定を行います。
このサンプルでは、親権者・監護者を母にすることにした例です。
稀に父が親権者となりながら、母とともに暮らすために監護権を母とすることもあります。
詳しくは、「監護権とはどのような権利?親権との違いは?」で詳しく述べておりますので、ご確認ください。
養育費の支払いについて
2 振込手数料は甲の負担とする。
3当事者双方は、前記子の病気、進学等の特別の費用の負担については、別途協議するものとする。
子どもがいる場合には養育費の取り決めもしておきましょう。
ここでは、夫が妻に対して、子どもの大学進学を見越して22歳になるまで、毎月6万円の支払いをする旨の合意ができた場合を前提に規定しています。
慰謝料の支払いについて
2 振込手数料は甲の負担とする。
離婚にあたって、例えば不倫をした、暴力・DVをふるった、ということが離婚の原因になった場合には、精神的苦痛が発生しているといえます。
このような場合には、慰謝料の支払いが問題になります。
慰謝料の支払いをする場合は、金額だけではなく、支払日・支払方法・振込手数料負担についても合意をし、記載します。
こちらの場合では、夫に対してのみの請求で、1回での支払いを前提にしています。
場合によっては、不倫相手との連帯債務にする・分割で支払うという場合もあります。
不倫相手との連帯債務にする場合には、
2 振込手数料は甲・丙の負担とする。
このように記載しましょう。
分割で支払う場合には、
(1) 支払いを1回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき、強制執行、競売、執行保全処分を受け、或いは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産、民事再生手続開始の申立てがあったとき。
(4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(5) その他乙の責めに帰することができない事由によって、所在が不明となったとき。
分割で支払う場合のポイントは、分割回数と毎月の返済金額を記載すること、及び振込手数料についての規定の次に3項として、期限の利益喪失の規定を置くことです。
この規定は、支払時期にない支払いを拒むことができる、いわゆる期限の利益を喪失させるためにあるもので、残額を一括で支払うよう請求することができるようになります。
2 振込手数料は甲の負担とする。
慰謝料とは別に財産分与として金銭の支払いを受ける場合の規定です。
面会交流について
1 面会交流は月に1回、6時間以内とし場所は甲乙協議の上決定する。
2 面接時は事前に甲は乙に連絡するものとする。
面会交流とは、子どもを監護していない方の親が、子どもと会うことをいいます。
年金分割の割合について
甲(平成1年1月1日生)(基礎年金番号 ○○-○○○○○)
乙(平成3年1月1日生)(基礎年金番号 ○○-○○○○○)
年金分割について合意ができた場合にはきちんと記載しておきましょう。
公正証書で作成すること
甲・乙は、本件離婚協議書と同趣旨の強制執行認諾文言付公正証書を作成することに合意した。
上述したように、離婚協議書は公正証書で作成されるのが望ましいといえます。
公正証書で作成するためには、この一文を作成しておきましょう。
精算条項
甲と乙は、上記の各条項の外、名義の如何を問わず金銭その他の請求を相互にしないことを確認する。
争いを蒸し返さないために、他の請求をしないことを確認する文言のことを精算条項と呼んでいます。
署名欄
氏名: 印
(乙)住所:
氏名: 印
最後に署名捺印をするための欄を設けます。
不倫相手にも慰謝料を請求する場合には、不倫相手にも署名をしてもらう欄を設けます。
作成した離婚協議書の取扱
離婚協議書は2部作成し、それぞれが保有します。
複数のページにまたがる場合には、ページの折り目に2枚の紙に重なるように契印を押します。
作成した2通の離婚協議書を重ねて割印もしておくのが通常です。
まとめ
このページでは、離婚協議書とはどのようなものか、簡単なサンプルと一緒にお伝えしました。
協議離婚をする場合に、当事者で決めたことを書面にするために作成するのが離婚協議書です。
基本的なことについてはこのページで述べていますが、離婚の状況に応じて、離婚協議書の記載の方法は異なります。
そのため、離婚協議書の作成にあたっては、弁護士に相談しながら行うことをおすすめします。