離婚調停・訴訟における管轄の家庭裁判所について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 離婚調停は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てる
  • 離婚訴訟は夫または妻の住所地を管轄する裁判所で、調停と裁判所が異なることも
  • 離婚調停・訴訟の手続きで、不安なことや分からない点がある方は弁護士に相談を

目次

【Cross Talk 】離婚調停の管轄の家庭裁判所はどこですか?

離婚調停をする予定です。別居しているのですが、管轄の裁判所はどこになるのでしょうか?

相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てることが可能です。ただし、訴訟は夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所です。調停と同じ裁判所になるとは限りません。

詳しく教えてください!

離婚調停・訴訟の家庭裁判所の管轄について解説していきます。

離婚調停の家庭裁判所の管轄は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所と定められています。当事者が合意する裁判所は離婚調停では申立てが可能ですが、訴訟では「調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるとき」のみ調停と同じ裁判所での審理が認められます。
今回は、離婚調停と訴訟の管轄の家庭裁判所について、管轄ではない裁判所に申し
立てたときにはどうなるか、外国籍の方の離婚訴訟における管轄の裁判所などを解説していきます

離婚調停の管轄は相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚調停は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てる
  • 管轄ではない裁判所に申立てると、基本的には管轄のある裁判所に移送されるが「特に必要がある」と認められると申立てられた家庭裁判所で事件が処理される

離婚調停を申立てる予定です。私は名古屋、相手は東京に住んでおり「裁判所は名古屋でも良い」と言われました。名古屋圏の裁判所でも大丈夫でしょうか?

大丈夫です。家事事件手続法第245条に、調停は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄という規定があります。

離婚調停は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てる

離婚調停は、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申立てます。

家事事件手続法※1
第245条 家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。

相手方の住所は実際に住んでいる場所を指します。管轄の家庭裁判所は、裁判所のホームページで調べることができます。

例えば相手が大阪に住んでおり、自身が東京に住んでいるため中間地点の名古屋にしたいという場合もあるでしょう。

当事者同士が話し合い、名古屋で合意した場合には名古屋圏の家庭裁判所で調停をすることが可能です。
申立書には、申立書を提出する家庭裁判所を記入する欄があります。

民事訴訟法※3第11条では管轄の合意について以下のように定められています。

民事訴訟法
第11条 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
2 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

合意は、書面もしくは電磁的記録(電子メールでやり取りしたものなど)で行います。後のトラブルを避けるために、やり取りを残しておくことが望ましいです。

管轄ではない裁判所に申立てると、原則管轄のある裁判所に移送される

管轄ではない裁判所に離婚調停を申立てると、家庭裁判所の職権によって管轄の家庭裁判所に事件が移送されます。

ただし、「特に必要がある」と認められた際には申立てられた家庭裁判所で事件が処理されます。これを「自庁処理」と呼びます。

家事事件手続法※1
第9条 裁判所は、家事事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。

離婚調停については上記の通りですが、離婚訴訟はどうなっているのでしょうか?

離婚訴訟の管轄の裁判所とは?相手が外国籍の場合はどうなる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚訴訟は、原則夫または妻の住所地の家庭裁判所が管轄となる
  • 夫婦のいずれかが外国籍もしくは外国に住んでいる場合は、被告が日本に住んでいる、夫婦2人とも日本の国籍を持っている場合などでは日本の裁判所が管轄になる

調停が不成立で、訴訟を起こすことになりました。調停のように合意で決めた裁判所はだめなのでしょうか?

人事訴訟法により、訴訟は当事者(夫または妻)の住所地を受け持つ家庭裁判所が管轄と定められています。調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があるとみなされると、調停と同じ場所での裁判が認められることもあります。

当事者(夫または妻)の住所地を受け持つ家庭裁判所が管轄

離婚訴訟は基本的に当事者(夫または妻)の住所地を受け持つ家庭裁判所が管轄です。なお、調停とは異なり、合意管轄は認められていません。

人事訴訟法※4
第4条 人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。

訴訟を起こす予定の家庭裁判所と離婚調停を取り扱った家庭裁判所が異なる場合には、「特に必要がある」と認められると離婚調停を取り扱った家庭裁判所で訴訟できる事例があります。※5

外国籍の方の離婚訴訟、管轄の裁判所はどこ?

夫婦のいずれかが外国籍もしくは外国に住んでいる場合は、どこの国で裁判を行うか(国際裁判管轄)が問題となります。

例えば以下いずれかの事情がある場合には、日本の家庭裁判所に訴訟を提起することが可能です。


※6

離婚の訴えを提起した方を原告と呼び、離婚の訴えを提起された方を被告と呼びます。

「特別な事情」は判断が難しいため、どこの裁判所に訴えるべきか悩んでいる方は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

訴訟も管轄でない裁判所に申立てられると基本的に移送される

管轄ではない裁判所に訴訟を提起した際にも、基本的に管轄の裁判所に移送されることになります。
訴訟については、合意で決定した裁判所が管轄することはできません。

「合意により定めた場所で離婚調停を行ったので、引き続き裁判をしたい」という場合もあるかもしれません。しかし、人事訴訟法※4第6条では「調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるとき」に限られています。

離婚調停・訴訟の手続きで、分からないことがある方は弁護士に相談を

管轄の裁判所や、申立ての必要書類の取り寄せなど調停・訴訟の手続きで分からないことがあるときには、弁護士に相談してみましょう。

「調停や訴訟を有利に進めたい」という方にとっても、弁護士に相談することは有効な方法の1つといえます。弁護士は法律の専門家であり、紛争解決のスペシャリストですので対処法やアドバイスを尋ねることができます。

まとめ

離婚調停は相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所が管轄です。
この記事を参考に、離婚調停・訴訟の裁判所の管轄について知っておきましょう。事務手続きで分からないことがある方、調停や訴訟をスムーズに進めたい方は弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。