3号分割など、離婚時の年金分割について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、3号分割は一定の要件を満たせば相手の合意がなくても分割できる
  • 3号分割は手続き終了後に相手にも「標準報酬改定通知書」が送付され、通知される
  • 年金分割についてお悩みの方は弁護士に相談を

目次

【Cross Talk 】3号分割が相手の合意がなくてもできるって本当ですか?

離婚準備中です。年金分割は3号分割であれば、相手の合意は不要と聞きましたが本当ですか?

はい。2008年4月1日以後に、2人のうち一方に国民年金の第3号被保険者期間があり離婚日の翌日から2年を経過していない場合は3号分割ができます。3号分割では、配偶者の合意は不要です。

詳しく教えてください!

離婚時の年金分割における3号分割とは何か、年金分割の手順・よくある疑問・受給額などについて解説していきます。

離婚時の年金分割には、合意分割と3号分割があります。2008年4月1日以後に、2人のうち一方に国民年金の第3号被保険者期間があり離婚日の翌日から2年を経過していない場合は3号分割が可能で配偶者の合意を得る必要はありません。

今回の記事では、離婚時の年金分割の概要と年金分割の手順、よくある疑問、分割後の受給額などについて解説していきます。

離婚時の年金分割における3号分割とは?双方が合意しなくてもできる!

知っておきたい離婚のポイント
  • 年金分割には、2人の合意によって年金分割の割合を決める合意分割と一定の要件を満たすと2分の1ずつ分割できる3号分割がある
  • 3号分割の場合、手続き前・手続き中は自身への郵便物を見られない限り相手に通知されることはない

3号分割を請求すると、相手にばれてしまうのでしょうか?

手続き前・手続き中は、自身への郵便物を見られない限り相手には分かりません。しかし手続き後に日本年金機構から「標準報酬改定通知書」が2人に送られますので、知られてしまうでしょう。

年金分割には「合意分割」と「3号分割」がある

離婚時の年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、離婚または事実婚解消時に日本年金機構に申請することで婚姻中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割できます。

合意分割・・・2人からの請求によって婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を分割する
以下2点の要件を満たす必要があります。

  • 2人の合意または裁判手続きにより年金分割の割合を定めている
  • 離婚をした日の翌日から起算して2年の請求期限を経過していない
  • 3号分割・・・離婚または事実婚関係を解消し、以下の要件に該当した場合に国民年金第3号被保険者だった方からの請求により保険料納付記録※を2分の1ずつ分割できる

  • 2008年4月1日以後に、2人のうち一方に国民年金の第3号被保険者期間がある
  • 離婚をした日の翌日から起算して2年の請求期限を経過していない
  • ※2008年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間中の記録に限られる

    合意分割は2人の合意が必要ですが、3号分割は合意が無くても分割が可能です。
    婚姻期間中に短時間勤務や専業主婦(夫)であった方は、相手が分割に合意していない場合でも2008年4月1日以後に、国民年金の第3号被保険者期間があり離婚日の翌日から2年を過ぎていない際には3号分割を請求できます。

    3号分割を阻止できる?申請したら相手に通知される?年金分割のよくある疑問

    離婚時に「相手に年金を分けたくない」という方もいらっしゃるでしょう。
    年金分割は、原則拒否することができません。
    例外的に、婚姻中の保険料の納付について、相手が全く寄与していないなどの場合は、特別な事情として考慮され、年金分割の割合に影響する可能性があります。

    また離婚をした日の翌日から起算して2年を過ぎたときには、請求ができません。

    年金分割では、手続き後に「標準報酬改定通知書」が2人に送付されます。よって手続きをした後には相手に知られてしまうでしょう。

    手続きをする前には、自身への郵便物を見られない限り相手に通知されることはありません。
    最初に情報通知書を請求しますが、1人で請求した場合は自身宛に通知書が送付されることになっています。
    国家公務員の場合は、「国家公務員共済組合連合会」ホームページ※2によると、年金分割のための情報通知書は「(略)離婚している場合は、請求当事者だけではなく、請求していない当事者に対しても送付いたします。離婚していない場合で当事者の一方から請求があった場合は、請求当事者のみに送付いたします」と記載されています。

    年金分割後に受給できる年金額の目安

    厚生労働省の「2022年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」※3による、年金分割改定前後の平均年金月額を見ていきましょう。

    3号分割のみの場合は、2022年の平均年金月額が男子131,139円、女子51,793円です。
    女性は離婚後、年金分割ができても金額が少ない傾向にあります。
    特に専業主婦だった方は受給額が少なくなる可能性がありますので、老後の備えについて考えておきましょう。

    年金分割の手続きの流れと必要書類を解説!

    知っておきたい離婚のポイント
    • 年金分割では、まず日本年金機構に情報通知書を請求し、婚姻期間中の年金記録について把握する
    • 相手と話し合い、話し合いがまとまらないもしくは話し合いができない場合は調停へ

    年金分割の割合で相手と揉めています。どうすれば良いのでしょうか?

    家庭裁判所に対して、按分割合を定める審判または調停を申立てることが可能です。まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

    日本年金機構に情報通知書を請求する

    まず日本年金機構に情報通知書を請求し、婚姻期間中の年金記録について把握しておきましょう。請求は1人でもできます。
    なお50歳以上の方で老齢年金の受給資格期間を満たしている方、障害厚生年金を受けている方は年金分割時の年金見込額を試算できます。

    相手と話し合う

    相手と年金分割について話し合います。
    3号分割の要件を満たしている場合、相手の合意は必要ありません。しかし、財産分与・養育費などに影響を及ぼすと想定されるときには、まず2人で話し合うことをおすすめします。

    年金の按分割合(分割割合)について、2人の話し合いがまとまらないもしくは話し合いができない場合には、家庭裁判所に対して按分割合を定める審判または調停の申立てができます。※4

    離婚した日の翌日から起算して2年を経過すると申立てができなくなりますので、早めに話し合いをしておきましょう。

    必要書類を準備し、年金分割の請求手続きをする

    3号分割の場合は、日本年金機構に標準報酬改定書(年金分割の請求書)を送付します。
    合意分割では年金分割の合意書も必要となります。
    日本年金機構のホームページでフォーマットがダウンロードできます。

    離婚時に年金分割をするとき

    その後、按分割合に基づき厚生年金の標準報酬が改定されます。改定後の標準報酬については、日本年金機構からそれぞれに通知書が送付されます。 情報通知書を受けとっただけでは、年金分割の手続きは完了していませんので注意しましょう。

    家庭裁判所に審判または調停を申立てる場合も

    年金分割の話し合いがまとまらない、何らかの事情で話し合いができない場合には年金分割の割合を定める審判または調停を申立てることが可能です。

    調停や審判について不安や疑問がある方は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

    まとめ

    離婚時の年金分割における3号分割は、相手の合意が不要です。
    ただし、割合が2分の1では納得できない場合、3号分割の要件を満たしていないときには相手と話し合い合意分割をする必要があります。
    年金分割でお困りの方、手続きに不安がある方、相手と揉めている方は弁護士に相談してみましょう。