- 当事者間で合意できる離婚裁判をするには離婚原因が必要
- 整形を隠していたことも離婚原因になりうる
- 整形を隠していたことが原因で離婚する場合の注意点
【Cross Talk 】整形を隠して結婚した場合、離婚しなければなりませんか?
実は結婚前に整形をしているのですが夫には話していません。整形していたことが発覚したときに離婚の請求をされると離婚しなければならないのでしょうか?
離婚を請求されたとして、離婚しなければならないわけではありません。ただし、整形を隠していたことが、他の事情と相まって離婚原因となることがあるので注意しましょう。
詳しく相談に乗ってほしいです。
結婚前に整形していたことが発覚した場合、離婚しなければならないのでしょうか。当事者の一方が離婚に反対している場合には離婚裁判を起こす必要があるのですが、離婚裁判をするためには民法777条1項所定の離婚原因が必要です。整形していたことは離婚原因には規定されていませんが、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当するかが問題となります。
整形を隠していたことを理由に離婚はできる?
- 協議離婚・調停離婚では離婚は可能
- 他の事情とあいまって「婚姻を継続し難い重大な事由がある」といえる場合には離婚原因となり離婚裁判の提起が可能になる
整形を隠していたことが夫に知られたら離婚しなければならないですか?
離婚しなければならないというわけではありません。もちろん、当事者で合意すれば当然離婚となりますが、もし反対する場合には離婚裁判をする必要があり、その場合には「離婚原因」が必要です。そして、整形を隠していたことのみをもって、「離婚原因」が認められる可能性は低いので、裁判上の離婚ともなりません。
整形を隠していたことを理由に離婚は可能なのでしょうか。
協議離婚・調停離婚であれば当事者が合意していれば離婚ができる
離婚には、主なものとして、協議離婚・調停離婚・裁判離婚があります。
離婚はまず協議を行い、離婚の合意ができれば協議離婚がされ、合意ができない場合でもまず離婚調停が起こされ、離婚調停でも合意ができない場合に離婚裁判が起こされるという流れで進みます。
協議離婚・調停離婚をする場合には合意ができれば離婚ができます。
裁判離婚の請求には離婚原因が必要
整形を隠していたとしても離婚に応じない場合、相手は離婚裁判を提起して、離婚をするという判決をもらう必要があります。
この離婚裁判を請求するにあたって、民法770条1項に規定されている、離婚原因が必要とされています。
民法770条1項は次のように定めています。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
離婚裁判を請求するには、民法770条1項の1号~5号に該当する必要があるのです。
整形を隠していたことは離婚原因となるか
整形を隠していたことは離婚原因となるのでしょうか。
まず離婚原因を規定する770条1項1号から4号には、整形を隠していたことを規定していません。
ただ離婚原因については5号で「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と包括的な条項を定めており、夫婦関係が破綻していて婚姻を継続するのが難しいといえる場合には、離婚原因ありとして離婚裁判の請求ができることになっています。
そこで、整形を隠していたことが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるかどうかを検討することになります。
夫婦が結婚するにあたって、整形をしているか・していないかは一つの要素ではあれ、それだけではないはずです。
そのため、整形を隠していたことだけでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とはいえず、離婚原因はないため離婚裁判の提起はできないとされています。
ただ、整形を隠していたことが原因で夫婦仲がギクシャクしてしまい、その後別居するなどして夫婦関係が破綻してしまった場合や、整形を繰り返すなどで夫婦のための預貯金を使い込んだような場合には、婚姻を継続し難い重大な事由ありと認定される可能性があります。
整形を隠していたことを原因として離婚の交渉をする場合の注意点
- 整形を隠していたことを原因として離婚する場合の金銭問題
- 離婚したくない場合の注意点
整形を原因に離婚の交渉をする場合にはどのような注意点が必要でしょうか。
慰謝料・財産分与などの金銭に関することと、離婚したくない場合の注意点について確認しましょう。
整形を隠していたことを理由に離婚の交渉をする場合、どのような注意が必要でしょうか。
慰謝料を支払わなければいけない場合がある
整形を隠していたことを理由に離婚の交渉をする際に、慰謝料を支払わなければいけない場合があることに注意が必要です。
慰謝料は、精神的苦痛を与えた人が支払うもので、たとえ妻側であったとしても常にもらえるわけではありません。
妻が整形を隠していて、夫や夫婦のためのお金を使い込んで整形をしていた結果、夫婦関係が破綻していたような場合には、夫婦関係の破綻について責められるべきは妻であり、慰謝料の支払いをする必要があります。
財産分与・養育費は請求が可能
慰謝料とは別に、財産分与・養育費の取り決めをする場合には、整形を隠していたことは影響しません。
ただ、お金を使い込んでいたような場合には、その分を考慮されることになります。
養育費については、子どもの養育という観点から決められるものなので、整形を隠していたことは影響しません。
どうしても離婚したくない場合には夫婦関係が破綻しない行動を
どうしても離婚したくない場合には、夫婦関係が破綻しない行動を心がけましょう。
上述した通り、夫婦関係は容姿・整形をしていたかどうかだけで決められるものではなく、整形を隠していただけでは離婚はできないとされています。
そのため、整形を隠していたことは事実だけども、その他の行動で夫婦関係が破綻していないと認められれば離婚の請求はできないことになります。
具体的には、お金を使い込むことはしない、バレたときには素直に謝罪する、夫婦関係が悪化した場合にはカウンセリングを一緒に受けるなど修復のための行動を適切にとる、などです。
まとめ
このページでは、整形を隠していたことを理由に離婚ができるか、を中心にお伝えしてきました。
整形を隠していたこと自体では離婚はできないことが多いのですが、その他の事情と相まって離婚原因となってしまうことがあります。
離婚回避のための行動を取りたい、離婚の請求をされているような場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。