借金による離婚や慰謝料請求、返済義務などについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 法務省の調査では、27.5%の夫婦が「浪費・ギャンブルが原因で離婚」と回答
  • 基本的に配偶者の借金の返済義務はない。ただし、連帯保証人・連帯債務者になっている場合は返済しなければならない
  • 場合によっては慰謝料請求も可能。弁護士に相談を

目次

【Cross Talk 】配偶者がギャンブル依存症で借金・・・離婚できますか?

配偶者がギャンブル好きで何度も借金をしており、離婚したいです。病院でギャンブル依存症と診断されました。離婚できますか?

依存症という事もあり、深刻な状況ですので離婚できる可能性は高いです。まずは相手と話し合いましょう。

借金を理由に、離婚や慰謝料・養育費を請求することはできる?

配偶者がギャンブルや浪費で借金をするタイプで「離婚したい」という人は少なくありません。法務省の調査で離婚原因を集計したところ、「浪費」は17%、「ギャンブル」は10.5%で合計27.5%という結果でした。借金が原因の離婚や返済義務について、慰謝料・養育費の請求などを解説していきます。

浪費・ギャンブルで離婚する夫婦は全体の27.5%

知っておきたい離婚のポイント
  • 夫婦が合意している際には離婚が可能
  • 拒否された場合には「法定離婚事由」を確認する

配偶者が離婚の話し合いに応じません。どうすれば良いですか?

家庭裁判所へ調停を申立てる事を検討しましょう。弁護士に相談をしてみるのも選択肢の1つです。

27.5%の夫婦が浪費・ギャンブルが原因で離婚している

法務省が2020年に行った「協議離婚に関する実態調査結果の概要※」では、「離婚した原因(夫婦関係が破綻した原因)」の中で「浪費」は17%、ギャンブルは10.5%で合計27.5%です。

R132-【図解】借金で離婚、慰謝料はもらえる?相場は?養育費についても解説

※参考:法務省 協議離婚に関する実態調査結果の概要

借金の有無は定かではありませんが、浪費やギャンブルに困り離婚に至るご家庭は少なくないと言えるでしょう。配偶者を経済的に追い詰める「経済的な暴力」が13.5%、「生活費を渡さない」は9.9%、失職(経済的困窮)は4.3%です。

借金で離婚できる要件とは

夫婦2人が合意している際は、理由を問わず離婚ができます。

しかし、一方が拒否している場合、最終的に裁判となりますので離婚が認められる「法定離婚事由」が必要です。

民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

借金や浪費は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
ただし「キャッシングをしたが全て返した」「生活を圧迫するほどでない」などの状況では離婚として認められる可能性は低いでしょう。

ギャンブル依存症で生活費を使い込む、闇金業者にお金を借り職場に取り立てが来て退職し生活できなくなった、何度も注意しているのに借金を繰り返すなどの事例では離婚が認められる可能性があります。
借金が原因で別居し、
別居が長期間になった時は「重大な事由」となる
でしょう。

なお、働ける健康状態でありながら働かない、借金が原因で家を出たなど配偶者が困る事を分かっていながら夫婦の同居・協力・扶助の義務を放棄した場合には「悪意の遺棄」とみなされ離婚できる事があります。

一方で奨学金や親族の借金の肩代わりなど、やむを得ず借金をした際には離婚が認められにくい傾向にあります。

借金の返済義務がある?結婚前の借金は?

配偶者の借金を返済する義務はあるのでしょうか?
借金の連帯保証人・連帯債務者になっている場合は、借金を返さなくてはいけません。また、夫婦の生活のために借金をした場合は連帯して責任を負います。

民法第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない

配偶者がギャンブルや浪費・娯楽のために借金をした場合には返済義務はなく、結婚前の借金も同様に返済の義務は負いません。

財産分与では、住宅ローン・教育ローンなどは分与の対象となる可能性が高いでしょう。しかし個人的な理由による借金は、分与には関係ありません。
財産分与に向けてクレジットカードの明細やレシート、借用書・督促状などを証拠として残しておきましょう。

借金での離婚、慰謝料・養育費は払ってもらえる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 借金の理由によっては慰謝料請求ができる。相手の支払い能力も考慮されるので注意
  • 養育費は、離婚後親権を持たない親にも支払い義務があるため請求ができる

配偶者にほとんど貯金がない状態です。定職には就いていますが・・・養育費は請求できますか?

養育費はたとえ離婚して親権を持っていない親でも子どもの生活や教育のために支払わなくてはいけません。給与から支払ってもらう形で請求しましょう。

借金の理由によっては慰謝料が可能。支払いが困難な場合は分割払いを

慰謝料は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」場合に請求できます。借金が離婚の原因となり、夫婦の生活が破綻した、病気になってしまったなどの場合は慰謝料が認められる可能性があるでしょう。

慰謝料請求を検討している場合は、財産分与と同様にクレジットカードの明細やレシート領収書などを証拠としてとっておくことをおすすめします。
ただし、配偶者に支払い能力がないと差し押さえもできないため慰謝料が少額になってしまうおそれがあります。
分割払いを提案するといった方法も検討しましょう。

養育費は借金があるからという理由で減額できない

養育費は離婚によって親権を失った親であっても支払い義務を負います。
裁判所のホームページにある「算定表」を基に話し合い決定しましょう。

話がまとまらない場合には家庭裁判所に「養育費請求調停」を申立てます。離婚調停の中で養育費について話し合うことも可能です。

慰謝料や養育費を取り決めた後は公正証書として内容を書面化することをおすすめします。
公正証書に支払い義務がある人が「支払いが滞った場合には直ちに強制執行を受ける事を認諾する」旨を記載することが可能です。
「強制執行認諾文言」と呼び、家庭裁判所での手続きをせずに強制執行の手続きができるようになります。

相手の支払い能力に不安がある場合は弁護士に相談を

慰謝料・養育費などで相手の支払い能力に不安がある人は、まず弁護士に相談してみましょう。
相手から慰謝料を支払えなくても、財産分与で多めに財産を譲ってもらう、分割払いを提案するなどの方法があります。
弁護士にも得意な分野とそうではない分野がありますので、弁護士への相談をおすすめします。

まとめ

配偶者の借金に困り離婚を希望している方は、まず相手と話し合い離婚について、財産分与や慰謝料などについて取り決めを行いましょう。
話がまとまらない、話し合いで不安がある方は弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。専門家としての知識と経験が豊富な弁護士と一緒に、スムーズな離婚を進めていきましょう。