- 親権は財産管理権と身上監護権を総称したもので、監護権は身上監護権を意味する
- どちらが強いというものではないが、親権は財産管理権と身上監護権2つの権利を持つ
- 親権と監護権を分ける際には慎重に検討を。弁護士に相談するという方法も
【Cross Talk 】親権と監護権はどちらが強いのですか?
親権と監護権が分けられると聞きました。どちらが強いのでしょうか?
親権は財産管理権と身上監護権を指し、監護権は身上監護権のみを意味します。「どちらが強い」というものではありませんが、親権の方が広い権限を有することとなります。
詳しく教えてください!
「親権」とは財産管理権と身上監護権を意味します。日本では財産管理権と身上監護権を父母がそれぞれ持つことができ「財産管理権と監護権(身上監護権)」を分けることを検討する夫婦も存在します。
しかし財産管理権と身上監護権を分ける場合、夫婦が離婚後も子どものことでこまめに連絡を取る必要があるというデメリットが生じます。
今回は親権と監護権の違い、どちらが強いのか、分けるメリット・デメリット、夫婦で意見が分かれた際の対処法を解説していきます。
親権と監護権の違いとは?どっちが強い?
- 親権は財産管理権と身上監護権を指し、監護権は身上監護権のみを意味する
- どちらが強いというわけではないが、親権を持つ人が子どもの財産管理と身上監護ができるようになる
離婚にあたって配偶者と親権の取り合いになってしまい、財産管理権と身上監護権を分ける話し合いを進めています。分けても大丈夫ですか?
財産管理権と身上監護権(監護権)を分けると、監護権のみを持つ親は財産の管理や法律行為に関して財産管理権を持つ親に確認をとらなければいけません。両親の仲が悪いと子どもに悪影響を及ぼすことがありますので、慎重に検討しましょう。
親権は身上監護権と財産管理権を指し、監護権は身上監護権を意味する
親権とは親の義務であり、子どもの利益のために行使することとされています。※1
親権は大きく分けて「財産管理権」と「身上監護権」があります。
親権の種類 | 内容 | 根拠となる法律 |
---|---|---|
財産管理権 | ・子どもの財産を管理する、契約などの法律行為を代わりに行う | ・民法第824条※2 |
身上監護権 └監護教育権 └居所指定権 └職業許可権 |
・子どもの身の回りの世話をする、教育をする ・住所や居所を決める ・子どもの職業を許可する |
・民法第820条 ・民法第822条 ・民法第823条 |
財産管理権は子どもの財産を管理し、法律行為(契約など)を代わりに行うことです。
身上監護権は主に子どもの身の回りの世話をして教育を行う権利です。
親権は身上監護権と財産管理権を意味します。
監護権は、身上監護権という意味合いで用いられることが多いです。
親権と監護権は「どちらかが強い」というものではない
親権と監護権はどちらかが強いというわけではありません。
ただし、親権を持つ人が財産管理権と身上監護権の両方を有することになりますので、親権の方が広い権限を有するといえます。
例えば両親が親権争いで揉め、親権を財産管理権と身上監護権を分けた場合、身上監護権を持つ親は子どもと一緒に暮らしますが、財産の管理や法律行為に関しては親権を持つ親に確認を取らなくてはいけません。
財産管理権を持つ親は、財産の管理や契約などを代わりに行えますが子どもの面倒を見ることはできず身上監護権を持つ親と比べて子どもと接する時間が短いでしょう。
法律上では両親が財産管理権と身上監護権を分けそれぞれ持つことができますが、実際にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
親権と監護権を分けるメリット・デメリット
裁判所の「2022年司法統計年報※3」における「『離婚』の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち『子の親権者の定め』をすべき件数」によると子どもの親権(財産管理権)と監護権を分けた場合は合計93件で、全体の0.54%が親権と監護権を分けたという結果です。
実際に財産管理権と身上監護権を分ける事例は非常に少ないということが分かります。
親権と監護権を分けることで、監護権を持つ親は財産の管理や法律行為に関して財産管理権を持つ親に確認をとらなければいけません。
そのため、意思決定までに時間がかかり、両親の仲が悪いと子どもに悪影響を及ぼしてしまうデメリットが考えられます。ただし、監護権を持つ予定の親が入院をしている、海外に単身赴任をしているなどの特殊なケースでは財産管理権と身上監護権を分けることがあります。子どもへの影響を考慮し慎重に検討しましょう。
親権が欲しい!夫婦で意見がまとまらない場合の対処法
- 夫婦で親権について話し合っても意見がまとまらない場合は、調停で親権について話し合う
- 親権をめぐる調停とは別に、「子の監護者の指定調停(審判)」「子の引き渡し調停(審判)」という手続きがある
夫婦で話し合い、財産管理権と監護権を分けない方が良いという結論になりましたがどちらが親権を取るかで揉めています。
意見がまとまらない場合は、調停で話し合いを進めていくことになります。心配な場合は弁護士に相談することを検討しましょう。
「子の監護者指定・引き渡しの調停(審判)」を申立てる
夫婦で親権について話し合っても意見がまとまらない場合は、調停で親権について話し合うことになります。
親権をめぐる調停とは別に、「子の監護者の指定調停(審判)」「子の引き渡し調停(審判)」という手続きがあります。
子の監護者の指定調停(審判)とは離婚もしくは別居した夫婦の間で、どちらが子の監護をするか裁判所の手続により子どもの監護者を定めるものです。
配偶者が子どもと共に別居した場合は、家庭裁判所に子どもの引き渡し調停または、審判の申立てをすることが考えられます。
ちなみに親権を持っていない親が、親権を持つ親に対して子どもの引き渡しを求めるためには、引き渡し調停とともに親権者変更の申立てを行う必要があります。
離婚前であり婚姻中に監護実績がある方は、まず子どもの監護者の指定調停(審判)を申立て、自身が監護者に指定されると子どもと一緒に暮らすことができます。
監護者として指定されると、親権をめぐる調停が有利になる可能性もあります。
子どもの監護実績を重ね、環境を整えておく
親権をめぐる調停を有利に進めるためには、子どもの監護実績が重要になるといわれています。
婚姻中に監護実績があると、親権獲得に有利になりますので子どもの監護実績を重ねておきましょう。
また、親権を獲得した後に子どもが健やかに暮らせるよう環境を整えておくことも重要です。
監護実績がない方は、親や親戚などからのサポートや経済面などをアピールするという方法があります。
親権は子どもの利益のために行使されますので、「子どものため」の行動を心がけましょう。
弁護士に相談する
親権について話し合いがまとまらない場合、まずは弁護士を通して任意の話し合いをするという選択肢もあります。
弁護士は法律の専門家です。相談する際には、離婚や親権の問題に詳しい弁護士を選ぶことをおすすめします。
まとめ
親権と監護権はどちらが強いというものではありません。親権について悩みがある方は弁護士に相談してみると良いでしょう。
弁護士に相談し、法律の観点からの対処法・アドバイスを聞くことでスムーズに解決できる可能性があります。