離婚時の親権争いについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 離婚後に母親が親権を持つ確率が8割超
  • 母親に監護能力・実績がない、精神疾患にかかっている、虐待している等の場合では父親が親権を持つことも
  • 監護の実績・能力がある、経済的な安定、周囲のサポートがあると親権を取れる可能性が高くなる

目次

【Cross Talk 】離婚の親権、母親と父親どっちが有利?

2歳児の父親で離婚予定です。今は妻が子どもの面倒を見ているのですが、親権が欲しいです。親権を取ることはできますか?

基本的に結婚中に子どもの世話をしていた方が親権を取る可能性が高いので、難しいかもしれません。特に乳幼児は母親が親権を獲得する確率が高いです。しかし例外もあります。

詳しく教えてください。

裁判所が親権者を決定する基準の1つに「母親優先の原則」があり、離婚時に母親が親権を持つ確率は8割超となっています。ただし、母親が育児に参加していないまたはしたことがない、精神疾患にかかっている、子どもに虐待やネグレクト(育児放棄)をしているなどの場合には父親が親権を取る事例があります。本記事では母親が親権を取る確率と取れない事例、裁判所の判断基準や親権を取るためのポイントを解説していきます。

離婚時に母親が親権を持つ確率が8割超だが、例外もある

離婚後、母親が親権を持つ確率が8割超だが取れない事例もある

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚後に母親が親権を持つ確率は8割を超えている
  • 父親が親権を取る事例は、母親に育児の実績がなく父親が育児をている場合、母親が精神疾患にかかっている、ネグレクト・虐待をしているなどの場合

日本では離婚後母親が親権を持つ場合が多いと聞きましたが…

総務省統計局の「人口動態調査」によると、子どもがいる夫婦で離婚後に母親が親権を持つ確率は8割超となっています。

母親が親権を持つ確率が高い

総務省統計局が実施している2020年の「人口動態調査※1」によると、子どもが1人の家庭で夫が親権を持つ割合は2000年代以降では20%以下、妻が親権を持つ割合は80%以上で推移しています。

子どもが2人以上になると妻が親権を持つ割合はさらに高くなる傾向があります。

日本では母親が親権を持つ確率が高いです。裁判所が親権者を決定する際の基準の1つに「母親優先の原則」※2があり、特に乳幼児は母親が親権を獲得する確率が高くなっています。

しかし、2017年に参議院で「母親優先の原則」に関する質問書が出され※2、父親が「育休」をとるといった育児参加の機会が増えるなど今後親権の割合が変わる可能性があります。

母親が親権を取れない事例もある

母親が親権を獲得できない事例としては主に以下の理由が挙げられます。

  • 母親に監護能力・実績がない
  • 子どもが父親と暮らすことを望んでいる
  • 精神疾患にかかっている
  • ネグレクト(育児放棄)
  • 身体的・精神的虐待など

親権※3は子どもの利益のために行使されるため、母親と暮らすことで子どもの健全な成長を阻害する場合は親権が獲得できない可能性が高いです。
親権について話し合いで解決できない場合、最終的には審判や訴訟で裁判所が判断を下すことになります。

離婚時の調停で親権を取るためには

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権は基本的に結婚中に子どもの監護・教育をしていた親が優先される
  • 親権を取るためには監護実績・能力、健康である、サポートを受けやすい環境などが重要となる

結婚中は妻が子どもの面倒を見ていましたが、虐待があったようで…。親権は取れますか?

親権は子どもの利益が最優先されます。よって、母親から虐待やネグレクトがあったときには父親が親権を持つ確率が高いです。

親権の判断基準とは

親権はまず両親の話し合いによって決めることとされていますが、意見が合わない・話し合いができないときには調停・審判を申立て、親権者を決定します。

親権は基本的に婚姻中に子どもを監護・教育していた親が優先され、乳幼児の場合は特別な事情がない限り母親が優先される場合が多いです。※4

裁判所のホームページ内「親権者変更調停※5」によると、調停での取り決めに関して以下のように記載されています。

親権者の変更は,子どもの健全な成長を助けるようなものである必要があるので,調停手続では,申立人が自分への親権者の変更を希望する事情や現在の親権者の意向,今までの養育状況,双方の経済力や家庭環境等の他,子の福祉の観点から,子どもの年齢,性別,性格,就学の有無,生活環境等に関して事情を聴いたり,必要に応じて資料等を提出してもらうなどして事情をよく把握し,子どもの意向をも尊重した取決めができるように,話合いが進められます。

裁判所では、親に関しての経済力や家庭環境、監護能力・実績など、子どもは年齢・性別・性格・就学状況・生活環境などを総合的に把握し、親権者を判断します。

調停を有利に進め、親権を取るためのポイント

親権の獲得を希望しており裁判所で調停・審判を行う予定の方は、以下のポイントをおさえておきましょう。

  • 子どもの意思を尊重する
  • 監護の実績・監護能力がある
  • 心身共に健康であること
  • 祖父母のサポートを受けやすく環境が整っている
  • 経済的に安定しているなど

まだ離婚届を出しておらず離婚と親権について話し合う際には夫婦関係調整調停(離婚)、別居中・離婚後には「子の監護者の指定調停※6」を申立てます。

「監護者」とは子どもの身の回りの世話をする、教育する、しつけをする方を指します。離婚時に親権者を決めていても、親権者が適切な監護を行っていない場合などでは子の保護を図るために親権者とは別に監護者を定めることがあります。※7

監護者が持つ「身上監護権」と、子どもの財産を管理する、子どもに代わって契約などの法律行為をする「財産管理権」を合わせたものが親権となります。

子どもが親権者を選べるようになる?

基本的に15歳以上の子どもは、判断能力が身についている場合が多く親権に関しては子どもの意思が尊重されます。

調停では、親同士が親権者の変更に同意していても子どもの意思確認が必要です。場合によっては、意向を確認するために第1回調停期日の前に子どもに照会書を送付することもあります。※8

まとめ

このページでは、離婚で母親が親権を持つ確率や取れない事例、離婚時の調停における親権の判断基準や親権を獲得するためのポイントについてお伝えしてきました。
日本では母親が親権を持つ確率が高いですが、基本的には結婚中に主に育児をしていた方が親権を持つ場合が多いです。まずは離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。