親権停止など親権を制限する方法について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 親権停止は最長2年間親権を停止できるもので、親権を制限する方法の1つ
  • 虐待されている子どもの安全を守ると同時に、親権停止の間に虐待した親や家庭環境を改善し親子の再統合を図る
  • 親権停止の申立てについて、悩んでいる方は弁護士に相談を 

目次

【Cross Talk 】親権停止とはどのような制度なのか?

3年前に離婚し、元配偶者が子どもを育てていますが共通の知人から虐待の可能性があると聞きました。子どもが心配です。親権停止ができると聞きましたが、どのような制度なのでしょうか?

親権停止とは最長2年間親権を停止できる制度です。家庭裁判所に審判を申立てます。

詳しく教えてください!

最長2年間親権を停止できる親権停止と親権制限制度について解説

親戚で虐待されている可能性のある子どもがいる、元配偶者や子どもの元配偶者が虐待をしているおそれがある場合は一体どうすれば良いのでしょうか?
まず児童相談所に通報するという方法もありますが、親族など近しい関係の場合は心配になる方が多いでしょう。裁判所に申立て、審判が下された場合には、親権を停止させることが可能です。
親権停止は最長2年間親権を停止でき、子どもの安全を守ると同時に親権停止の間に虐待した親や家庭環境を改善し親子の再統合を図る制度です。今回は親権停止の概要、親権喪失や管理権喪失との違い、実際に申立てられた事例や親権停止後はどうなるかを解説していきます。

親権停止とは最長2年間親権を停止できる制度

知っておきたい離婚のポイント
  • 子どもの利益を著しく害するときには「親権停止」で最長2年間親権を停止できる
  • ネグレクトや虐待などで親権停止になる事例が多い

親権停止させるためにはどうすれば良いのでしょうか?

家庭裁判所に親権停止の審判を申立てます。子どもの利益を著しく害すると判断されると最長2年間親権が停止されます。

親権停止の目的・役割とは?親権喪失・管理権喪失との違いも

親権停止とは、2012年に創設された親権を制限する制度の1つで子どもの利益を著しく害するときには最長2年間親権を停止できます。

(親権停止の審判)
民法※1第八百三十四条の二 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」とは、親権者の子どもへの虐待・ネグレクトなどが該当します。
親権停止は「親からこどもを一時的に引き離すことでこどもの心身の安全を守ると同時に、親権が停止されている間に虐待した親や家庭環境を改善し、親子の再統合を図ること」が目的です。期限を付けることで親子の環境・関係が改善した時に再び一緒に暮らせるという点が他の親権制限制度との違いです。

親権停止は、家庭裁判所の審判により決定します。

子ども、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人などの関係者などが家庭裁判所に申立てをすることで、親権者に対して親権停止の審判が可能になります。

他に親権を制限できる制度として、「親権喪失」「管理権喪失」があります。

親権喪失とは、親権停止と異なり、期限を定めずに親権者が親権を失う制度です。
虐待やネグレクトなど親による親権の行使が著しく困難または不適当な場合に請求できます。
管理権喪失は、親権者の財産管理権の行使が困難または不適当な場合で、子の利益を害する場合に請求でき、審判がされた場合には子どもの財産管理権をもつ親権者が権利を失います。
なお、親権は身上監護権という身の回りの世話をする権利と財産管理権という財産の管理や代わりに契約を結ぶ行為をする権利があります。

2つの権利は両親で分けることができます。
例えば管理権を持つ親が子の利益を著しく害する行為をした、親権と管理権をもつ親が身の回りの世話はきちんとしているものの子どもの財産を危うくした場合などに、関係者などが管理権喪失を請求できます。

親権停止はどんな場合に申立てる?実際に申立てられた親権停止の事例

親権停止はどのような場合に申立てられるのでしょうか?
裁判所のリーフレット※2には、児童虐待は児童の虐待防止等に関する法律により4つの類型があると記載されています。

2012年に創設された親権停止制度ですが、2013年に児童相談所長が、申立てた親権制限に係る審判の申立ての事例が裁判所のホームページで公開されています。※3
2013年の親権停止の審判の申立ての実績は16 自治体で 23 事例でした。 主な事例 としては、以下のとおりです。

1つ目の事例は親が宗教的な理由から輸血を拒否したという内容です。
輸血をした後、宗教的な背景があることからこの事案も認容されました。

2つ目の事例ではネグレクトで腎機能が悪化した子どもが臓器移植ネットワークに登録したところ、保護者が登録抹消手続きの連絡をして親権停止となりました。
3つ目の事例は父親からの性的虐待です。
その他には同居男性からの性的虐待などの事例があり、虐待やネグレクトにより親権停止が請求される場合が多いことが分かります。

親権停止になると親権者は義務や権利を失う

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権停止になると親は最長2年、身上監護権・財産管理権を失う
  • 分からないことがある方は弁護士に相談を

親権停止になると、どうなるのでしょうか?

親権者は子どもの身の回りの世話や財産の管理などが、最長2年間できなくなります。その間は祖父母に預けられる、関係者が未成年後見人選任の申立てをするといった方法があります。

親権停止になると親は一時的に身上監護権・財産管理権を失う

親権停止になると、親は一時的に身上監護権・財産管理権を失います。

停止の期間は最長2年間で、家庭裁判所の審判によって長さが決まります。裁判所の「親権制限事件及び児童福祉法に規定する事件の概況 2022年度※3」によると、親権制限事件の新受件数のうちもっとも多いのは「親権停止」で、2022年は減少傾向にあります。
係者が未成年後見人選任の申立てをするといった方法があります。

親権停止の後、事態が改善されていると判断された場合は親に親権が戻ります。

親権停止中はもう一方の親が預かる、祖父母が預かる可能性がある

親権が停止されている間、親権者は身の回りの世話や財産の管理ができません。
よって周りの状況によっては、もう一方の親や祖父母が子どもを預かる可能性があります。
代わりに子どもを養育する者がいない場合は、親族などが未成年後見人選任の申立てをします。

親権停止申立ての前に弁護士に相談を

親戚や元配偶者が子どもを虐待しているおそれがあり、親権停止の申立てを考えている方はまず弁護士に相談することをおすすめいたします。

親権停止は却下されるケースもあり、判断が難しい傾向にあります。まずは親権問題に詳しい弁護士に相談するという方法もあります。

まとめ

親権停止とは何か、親権喪失・管理権喪失との違いなどを解説しました。
親権停止の申立てを検討している方は、まず法律の専門家である弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。