- 障害者になったことで離婚ができるかどうかは、場合によって異なるので専門家に相談を
- 相手が意思決定できると協議離婚できる可能性があるが、意思決定できない場合はまず後見人の選任を
- 障害年金は、原則財産分与の対象ではない
【Cross Talk 】配偶者に障害があることで離婚はできるのでしょうか?
配偶者が事故により身体に障害が生じ、私が介護しているのですが疲れてしまいました。経済的にも厳しい状況です。非常に心苦しいのですが、離婚は可能でしょうか?
相手が同意すれば協議離婚が可能ですが、同意しない場合は調停をすることになるでしょう。障害だけではなく、夫婦の事情もあるでしょうから場合によって異なるといえます。
詳しく教えてください!
配偶者が障害者になったことで離婚することは可能なのでしょうか?
一口に「障害」といっても様々な障害があり、程度によってもどれくらい日常生活に支障があるのかが異なるという現状があります。
民法第770条では、離婚裁判ができる事例の1つに「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」がありますが、身体の障害については規定がありません。
今回は障害者になったことが原因の離婚について、離婚する場合の財産分与や養育費などを解説していきます。
障害者になったことが原因の離婚は、場合別で対処法が異なる
- まずは離婚後の生活がどのようになるのか、確認しておく
- 調停や裁判では、障害だけではなく夫婦の事情もあわせて判断される
相手は障害者で意思決定ができる状態ですが、離婚は可能でしょうか?
まずは話しあってみましょう。双方が合意している場合には協議離婚ができます。
まずは離婚後の生活について考えておく
障害がある方が離婚する際には、経済的・生活面などを考慮し「自身だけで一人暮らしができるか」
がその後の生活で重要となります。
一口に障害と言っても、身体障害・精神障害・発達障害など※1様々な種類があり日常生活にどのくらい影響があるかは人によって異なります。
「離婚後に日常生活を一人で送るのが困難」という方は、施設への入所や支援サービスを受けることを検討しましょう。
経済的に困窮することが見込まれる場合は、地域包括支援センターや支援団体などに相談することで、生活保護や障害年金の受給などを勧められることがあります。
生活保護や障害年金を申請する前には要件を確認しておきましょう。
そもそも、障害になったことが理由で離婚は可能なのでしょうか?
障害者になったことが理由で離婚は可能なのか
民法第770条では、離婚の訴訟ができる例は以下の5つと規定されています。
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
四では「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」と定められています。
配偶者に重度の精神疾患・精神障害がある場合には離婚訴訟を起こすことが可能です。ただし「精神疾患があるから必ず離婚が認められる」という訳ではありません。
身体障害は五の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性も出てきますが、かかる場合に当たるかは慎重に判断されるものであり、障害だけではなくその他の夫婦の事情も関係します。
意思決定ができる相手とは話し合いを、できない相手には後見人を選任する
離婚を希望しており、配偶者に障害があり自身で意思決定ができる場合にはまず相手と話し合いをします。
離婚で取り決めることはまず離婚するか否か、財産分与、子どもがいる場合は養育費・面会交流についてなどがあります。
話し合いで双方が合意すれば、離婚届を提出することで離婚は可能です。
財産分与の取り決めなどを行っていきましょう。
一方で、配偶者の意思決定が難しい場合には成年後見人を選任するという方法があります。
ただし後見人がいても上記の「裁判上の離婚」に該当し、裁判などで離婚を認められなくてはいけません。
いずれにせよ場合によって異なりますので、弁護士などの専門家に相談することをおすすめいたします。
相手が障害者の場合は離婚時の財産分与、養育費はどうなる?
- 話し合いができる場合は、財産分与、養育費などについて2人で話し合う
- 障害年金は財産分与の対象にはならない
離婚が決まりました。障害年金は財産分与できるのでしょうか?
基本的には対象外です。事情があって分割したい場合には2人で話し合いましょう。
財産分与、養育費などはまず2人で話し合う
相手が意思決定できる場合は、財産分与や養育費などについて2人で話し合います。
離婚時に分与できる財産は、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産です。結婚前の預貯金・相続や贈与で得た財産は分与の対象外です。
養育費は両親の年収や子どもの人数によって異なり、基本的には裁判所の「養育費算定表」※2を参考にします。
ただし養育費を支払う義務のある方が障害者で算定が困難な場合は、調停や審判・裁判などで養育費を決める可能性があります。
障害年金は財産分与の対象になる?
障害年金は財産分与の対象にはなりません。
障害年金だけではなく、年金は分割制度がありますので分割制度を利用することになります。
離婚時には婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することが可能です。
しかし、障害基礎年金※3は分割が不可能です。障害厚生年金※4は、3号分割の場合に分割はできません。
3号分割とは、主に国民保険の第3号被保険者が請求するもので当事者間の合意は必要ありません。
(2)当事者の合意または裁判手続きにより按分割合を定めた(合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます)
(3)請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していない
上の3つの要件を満たした合意分割では、分割できる可能性があります。※4
分からないことがある方は弁護士に相談を
離婚にあたって分からないことがある、2人の意見が合わずに揉めている場合には弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士は法律の専門家であり、紛争解決のプロでもあります。離婚分野に詳しい弁護士に相談することで適切な対処法を教えてもらう、アドバイスをもらうことができるでしょう。
まとめ
障害者になったことで離婚ができるかどうかは、場合によって異なります。
障害がある方は、まず離婚後の生活がどうなるかを考えておくことをおすすめいたします。
離婚の際に不明点やトラブルがある場合には、離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめいたします。