- 法律上ワンオペ育児だけで離婚は難しいが、別居が長引けば「婚姻を継続し難い重大な事由」となる
- 裁判で「ワンオペ育児だけ」を理由に慰謝料が認められる可能性は低いが、任意の話し合いでもらえることも
- まずは相手と話し合い、話がまとまらない場合には弁護士にご相談を
【Cross Talk 】私ばっかり・・・ワンオペ育児で離婚したい!
配偶者が育児に非協力的でいわゆる「ワンオペ育児」です。2人の子どもなのに私だけで育児するのが辛くて・・・離婚できますか?
話し合いで相手が合意すれば離婚できます。拒否された場合は調停や審判を申立てます。
詳しく教えてください。
夫婦のうち1人に育児の負担が偏る状態を「ワンオペ育児」と呼ばれています。離婚した夫婦におけるワンオペ育児の割合はおよそ8割と高い数値です。
ワンオペ育児が理由となる離婚は、相手が合意すれば可能です。しかし拒否され最終的に裁判になった場合は、「ワンオペ育児だけ」での離婚が認められる事例は少ないです。
ワンオペ育児とは、ワンオペ育児と離婚、専業主婦の場合や慰謝料について解説していきます。
ワンオペ育児は離婚理由になる?
- 相手が合意すれば離婚は可能だが、最終的に訴訟となった場合は難しい
- ただし、別居が長引くと離婚が認められる可能性が高くなる
ワンオペ育児を理由に離婚できますか?
相手が離婚を拒否して最終的に裁判となった場合は難しいかもしれません。しかし双方が合意すれば離婚は可能です。
離婚した夫婦におけるワンオペ育児の割合はおよそ8割
「ワンオペ育児」とは夫婦のどちらか、その一方のみが育児をする行為を指します。人手不足の企業で行われるワンオペレーション(1つの店舗を1人の従業員で回す)を育児に当てはめた言葉です。
従来は父親が働きに出て母親が専業主婦となり家で育児をする風習がありましたが、共働きが増える中で「ワンオペ育児」は夫婦の一方が負担を強いられるため、離婚の原因になる事例が多くなっています。
2020年度に法務省が実施した「協議離婚に関する実態調査」の結果によると、離婚前の夫婦が同居していた際、どちらか一方が子どもの面倒を見ていた「ワンオペ育児」の割合は79.9%に上ります。
参照:法務省 2020年度協議離婚に関する実態調査結果の概要
https://www.moj.go.jp/content/001346482.pdf
夫婦間で「育児の分担」に対する認識がずれている事例も
なぜワンオペ育児が原因で離婚に至ってしまうのでしょうか?
まず育児は24時間休みがなく、乳幼児は夜泣きすることも多いため、肉体的な負担が大きい点が挙げられます。また、2人の子どもにもかかわらず「仕事で疲れているから」など配偶者が無責任な態度をとると「なぜ私ばかり」という気持ちになる方もいるでしょう。
夫婦の一方が「育児に協力している」という認識で、もう一方は「最低限の事しかやってくれない」という認識のずれが生じた結果、離婚に至る場合もあります。
例えば「乳幼児のオムツを替える」という行為は育児に協力していると言えますが、オムツを替えるためには「オムツをスーパーなどで買い、使った後のゴミを区分して定められた日にちに捨てる」という育児に付随した行動も必要となります。
上記のように夫婦の一方がオムツを替える(育児の一環を負担する)だけで満足し、もう一方は不満を募らせるといった経緯で離婚に至る事態も想定されます。
「言えばやってくれるけど主体的に動いてくれない」という受け身の姿勢が相手にストレスを与える可能性もあります。
ワンオペ育児だけでは離婚は難しい。別居が長引けば「婚姻を継続し難い重大な事由」となる
離婚は双方が合意することで成立しますが一方が拒否した場合、最終的には離婚裁判となります。
裁判で離婚が認められる事由は以下の5つです。
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
不貞行為(不倫)・悪意の遺棄(同居を拒否するなど夫婦間の義務を履行しない)などが離婚事由となります。ワンオペ育児「だけ」では離婚事由として認められるのは難しい可能性が高いです。
ただし、ワンオペ育児が原因で別居し、別居が長引いた場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまる可能性があります。
ワンオペ育児で慰謝料は請求できる?専業主婦の場合は?
- 任意の話し合いで慰謝料を請求することができる
- 裁判ではDVや不貞行為などがある場合、慰謝料が認められる可能性が高い
専業主婦で資格を持っていないため離婚した後、経済的に心配です。ワンオペ育児で慰謝料請求はできますか?
相手が同意した場合には慰謝料がもらえます。裁判になった場合、請求の理由がワンオペ育児だけでは難しいかもしれません。
ワンオペ育児だけで慰謝料請求は難しい。しかし・・・
ワンオペ育児を理由に慰謝料の請求はできるのでしょうか?
慰謝料は民法709条の「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」※2という不法行為の条文を基に請求します。
離婚においては「離婚原因を作った」「相手の行為によりうつ病などの精神疾患にかかった」ことなどが「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」とみなされ慰謝料が認められます。
よってワンオペ育児だけでは慰謝料請求は困難と言えます。
ただし、裁判ではなく任意の話し合いで相手が慰謝料を払うことを約束した場合は、慰謝料を受け取ることが出来ます。
裁判ではワンオペ育児の他に、DVや不貞行為・正当な理由がなく家にお金を入れない、もしくは家を出ていくなどの行為があった場合は慰謝料を認められる可能性が高くなるでしょう。
財産分与で多めに財産を譲ってもらうという方法もあります。
専業主婦だからといってワンオペ育児が「当たり前」ではない
「専業主婦は外で働いていないから主に育児をするべき」という意見もあります。しかし、専業主婦には育児の他にも家事という役割があります。また子どもの夜泣きで睡眠時間が削られる、自分の時間が確保しづらいため追い込まれてしまう母親も多いでしょう。
離婚を検討している方は、親権や養育費の問題もありますのでまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
ワンオペ育児で離婚、慰謝料を請求する流れ
「ワンオペ育児で離婚したい」という場合は、まず夫婦で話し合います。慰謝料を請求したい方は慰謝料についても相手に伝えておきましょう。
話し合いがまとまらない、もしくは話し合いができない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申立てます。
調停を申立てる前に、弁護士へ相談し代理人となってもらうことで、裁判所で調停をせずに解決できる事例もあります。
もし、調停を行い、不成立に終わった際には離婚訴訟を起こし、判決を得るという流れになります。
まとめ
ワンオペ育児で悩んでいても「離婚後の金銭面が心配で離婚に踏み切れない」という方は多いのではないでしょうか。裁判外の交渉は弁護士に代理を依頼することが可能で、場合によっては慰謝料をもらえる可能性があります。まずは離婚問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。