- 養育費に学費は含まれるか?
- 私立や大学の学費を支払ってもらうには?
- 私立・大学の学費を請求する方法とは?
【Cross Talk 】学費を養育費として支払ってもらうためには?
養育費には子どもの学費が含まれているのでしょうか?
養育費には含まれている学費と含まれていない学費があります。
養育費と学費について詳しく教えてください。
養育費には、子どもの学費はすべて含まれているのでしょうか。子どもが私学や大学に進学した場合には、学費が高額になることになりますが、離婚した相手に学費を請求することはできるのでしょうか。
このコラムでは、養育費に含まれている一般的な学費や、私学・大学の学費を相手に支払ってもらう方法、その手続きなどについて、解説していきます。
養育費に学費は含まれる?
- 養育費に学費は含まれるか?
- 標準的な学費とは?
養育費には子どもの学費は含まれているのでしょうか?
養育費には含まれているのは標準的な学費のみです。
養育費と学費の考え方
まず「養育費」とは、一般的に子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる監護・教育・医療の費用を賄うために支払われる金銭をさします。そして、この養育費には衣食住の費用のほかに、教育費も含まれます。
養育費の分担については基本的に、父母が離婚の際に協議によって自由に合意することができますが、一般的には裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に月額の養育費を算出することが行われています。
養育費算定表では、夫婦の収入、子どもの人数などから目安となる金額を算出することができます。
養育費算定表で算出された養育費には、基本的な衣食住、医療費などのほか、公立学校に進学した際の授業料や諸経費といった「標準的な学費」が含まれています。
標準的な学費とは?
具体的に「標準的な学費」には、どのような学費が含まれており、逆に含まれていない学費はどのようなものなのでしょうか。
まず、養育費算定表では、子どもの年齢を「0歳~14歳」までのグループと「15歳~19歳」までのグループに分けています。
まず、「0歳~14歳」までの子どもの養育費には、公立中学校の子どもがいる世帯の年間平均収入に対する公立中学校の学校教育費相当額が含まれています。同様に、「15歳~19歳」までの子どもの養育費には、公立高等学校の子がいる世帯の年間平均収入に対する公立高等学校の学校教育費相当額が含まれています。
言い方を変えると、以下のような学費については、養育費算定表の「標準的な教育費」には含まれていないといえます。
- 私立の小学校の入学金及び学費
- 私立の中学校の入学金及び学費
- 私立の高校の入学金及び学費
- 大学・専門学校等の入学金及び学費
- 通学のための下宿にかかる家賃
- 習い事やクラブ活動にかかる費用 など
お子さんが私立中学・私立高校に通う場合には、当然公立学校に通うよりも多くの学費がかかってくることになりますが、養育費算定表内では考慮されてないことになります。
私立学校や大学の学費を支払ってもらう
- 私立学校、大学の学費を支払ってもらう方法とは?
私立学校や大学の学費を相手に払ってもらうことはできますか?
私立学校・大学の学費についても請求できる場合はあります。
当事者の合意がある場合
私立中学校・私立高校に通う場合の学費などは標準的な学費を超える「特別費用」となる可能性があります。特別費用についても、養育費と一緒に相手方に請求できる場合があります。
前提として、養育費の内容については、父母の話し合いによって決定することができます。
そのため、支払義務者となる非監護親と支払いを受ける監護親の双方が、話し合いによって納得している場合には、私立学校の学費等の特別費用も請求することができます。
相手方の承諾や同意は明示的なもののみならず、黙示的なものも含みます。
離婚時点で子どもが既に私立学校に通っていた場合や、離婚する時点で親権者が私立への進学を検討していることを相手方に伝えており、相手方が特段の異議を申立てていないような場合には、黙示的な承諾や同意が認められる可能性があります。
両親も高学歴である場合
両親ともに私立学校や大学を卒業していたという場合には、当該特別費用についても非親権者に負担が認められる場合があります。
離婚した両親がともに私立学校・大学を卒業・修了しているような場合には、その子どもについても私立学校・大学に進学する可能性が高くなります。そのような家庭の子どもには、私立学校・大学に進学する際の学費を保障すべきと判断されると考えられます。
したがって、両親が高学歴の場合には、私立や大学の学費も養育費に含めることが認められる可能性があります。
養育費として学費を請求する方法
- 養育費として学費を請求する方法とは?
養育費に学費を含めて請求するためには、どうすればいいのでしょうか?
養育費として学費を請求する方法を解説します。
私学・大学進学を前提に協議する
まずは、子どもを私学や大学に進学することを前提として、養育費の協議を行うことが必要です。
前述の通り、養育費の内容については、基本的には父母の話し合いによって決定することになります。そして、養育費算定表の標準的な学費には、私学や大学の学費は含まれていないため、養育費請求調停・審判でこれらを獲得することは容易ではありません。
そのため、できるだけ父母の話し合いで学費についても取り決めておくことが重要となります。
請求する側としては、学費が高いけれど子どもの将来のためには是非にも必要であることと、自分の資力だけではどうしても足りないので協力が必要である旨を、しっかりと伝えることが大切です。
協議条項を設けておく
将来の学費や教育費用については、事前に具体的な合意をしておくことが難しいことも多いでしょう。そのような場合には、子どもが成長した際に改めて父母で話し合いが行えるように約束しておくことが適切である可能性があります。
養育費の取り決めの際に、離婚協議書や合意書に「協議条項」を盛り込んでおくことをおすすめします。
協議条項とは、養育費の金額を変更する必要が生じた場合に、改めて協議することを約束するための条項です。
そこで、「子〇〇が、中学、高校、大学等に進学した場合における入学金、授業料等の学費の負担については、別途協議するものとする」などという条項を残しておくことがポイントです。
養育費請求調停・審判を申立てる
学費について、話し合いではまとまらなかった場合には、家庭裁判所に養育費請求調停を申立てることになります。調停もあくまでも話し合いによって合意を目指す手続きです。調停でもまとまらず、調停不成立となった場合は、一切の事情を考慮したうえで、裁判官が審判をすることになります。
裁判手続きを利用する場合には、離婚トラブルに詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士であれば、離婚の背景、それぞれの資力、双方の意向を考慮したうえで、納得できる解決策を提案できる可能性があります。
まとめ
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以上のように、一般的な養育費には標準的な学費として公立高校までの学費までしか含まれていません。そのため、私立学校や大学に進学する場合の学費については、算定表では考慮されていません。
ただし、このような学費も一定の場合には相手に請求することが可能です。
離婚の際に子どもの学費について悩まれている場合には、離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。