養育費を強制執行するメリット・デメリット、お金が取れない場合の対処法を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 離婚時に養育費の支払いを取り決めており、一定の要件を満たす場合は「債務」として強制執行(差し押さえ)が可能
  • 養育費の強制執行は必ず差し押さえができるとは限らない、手続きが煩雑などのデメリットがある
  • 元配偶者が養育費を支払わず、お困りの方は弁護士に相談を

目次

【Cross Talk 】養育費の強制執行って何ですか?

元配偶者が養育費を支払ってくれません。強制執行という方法があると聞いたのですが・・・

養育費の強制執行とは、養育費を支払う義務がある方が義務を果たさなかった際に請求できる権利を持つ方が裁判所に請求権を申立て、裁判所が強制的に執行する(財産を差し押さえる)手続きです。しかし、必ず差し押さえができるとは限りません。

詳しく教えてください!

養育費の強制執行のデメリットとは?会社が拒否している場合はどうすれば良い?

元配偶者が養育費を滞納している場合、強制執行認諾文言と執行文を記した公正証書があるなどの要件を満たすと強制執行の手続きができます。養育費の強制執行は、給与や預貯金が差し押さえられる場合が多いですが中には経営者が従業員をかばい強制執行に応じない事例もあります。
今回は養育費の強制執行のメリット・デメリット、会社が拒否している場合の対処法などを解説していきます。

養育費の強制執行とは何か、メリット・デメリットとあわせて解説!

知っておきたい離婚のポイント
  • 話し合いのうえで養育費を取り決め、強制執行認諾文言と執行文を記した公正証書がある場合などには強制執行の手続きができる
  • 強制執行は手続きが煩雑で、必ず養育費を回収できるとは限らないというデメリットがある

養育費の支払いは口頭で取り決めたのですが、強制執行はできますか?

強制執行の手続きをする際には、家事調停調書正本や強制執行認諾文言と執行文を記した公正証書など「債務名義の正本」が必要で、当事者のみで作った合意書や口約束のみでは出来ません。

  • 話し合いの上で養育費を父母が取り決め、強制執行認諾文言が記され執行文を付与した公正証書がある
  • 調停や審判・訴訟の結果、養育費を支払うことが確定し、家事調停書・家事審判書(確定証明書)・和解調書または判決書などを所有し執行文を付与している

強制執行認諾の文言※1とは、養育費を支払う義務を負う方の支払いが滞った際には直ちに強制執行を受けることを承諾する旨の文章です。執行文とは、「強制執行を行うことができる効力があるか否か及びその効力の範囲」公的に証明する文書を指します。

養育費の支払いを公正証書で取り決めても、強制執行認諾文言と執行文が無いと強制執行が困難になってしまいます。

強制執行の対象となる財産は、給料や預貯金・不動産などです。
強制執行には様々な種類がありますが、養育費や婚姻費用の支払いを受けるために用いられることが多いのは「債権執行」です。※3
債権執行とは、債権者(強制執行認諾文言と執行文付き公正証書などを持ち、養育費を滞納された方)の申立てにより裁判所が債権差押命令を出し債務者(養育費の支払い義務がある方)の持っている債権(給料や預貯金など)を差し押さえることで、強制的に養育費相当額を受け取ることができる手続きです。
差し押さえた債務者の給料や預貯金は、債務者の勤務先もしくは金融機関から受け取ることができるようになります。
養育費の場合は、税金や社会保険料等を控除した給与の2分の1相当額まで差し押さえが可能です。将来分も差し押さえることができます。※4

※3債権執行は、債務者の住所を管轄とする地方裁判所に申立書などの必要書類を提出することで申立てが可能です。提出先は家庭裁判所ではありませんので、ご注意ください。

養育費を強制執行する側のメリット・デメリット

強制執行する側のメリットは、強制執行が成功した場合に本来支払われるべきだった養育費の全てまたは一部を受け取ることができる点です。
相手に「養育費を支払わなかったら差し押さえられる」という心理的な圧迫を加え、今後の養育費滞納の防止につながる可能性があります。

一方で、養育費の強制執行は必要書類が多く手続きが煩雑というデメリットがあります。
また相手に差し押さえられる財産が無い場合は差し押さえができません。時手の財産について自身で調査する必要があり、申立てても既に相手が仕事を辞めている、預金口座からお金を引き出した場合では強制執行ができません。
今後、相手と決定的に対立する構図になってしまうという点もあります。

養育費を強制執行される側のデメリット

養育費の強制執行は。給与・預貯金が差し押さえられる場合が多いです。よって強制執行される側にとっては勤務先に知られてしまうというデメリットがあります。

滞納した養育費に加え損害遅延金も支払うこともあります。子どもとの面会交流に影響が出てしまう恐れもあります。
将来の給料を差し押さえられると、生活費が足りなくなってしまう可能性が生じます。

会社に拒否されるなど、強制執行でお金がとれない場合はどうすれば良い?

知っておきたい離婚のポイント
  • 会社に拒否されても債務名義の正本がある場合は、1週間を過ぎると「取立」ができる。取立訴訟も可能
  • 強制執行の手続きができない、お金がとれないなどお困りの方は弁護士に相談を

元配偶者が経営者で、養育費の強制執行を会社に拒否されました。どうすれば良いのでしょうか?

養育費の場合は1週間を過ぎると「取立」が可能になります。取立訴訟を起こすこともできます。

訴訟を起こし、将来分の差し押さえをするという方法がある

強制執行で給与を差し押さえ、会社が対応をしなくても養育費の場合は1週間※5を過ぎると「取立」が可能になります。

会社に連絡を行い話し合った上で請求先の口座を通知することで、支払われる可能性もありますが経営者が従業員である相手をかばい支払わないこともあります。

強制執行で給与を差し押さえて1週間を過ぎると取立権がありますので、取立訴訟を起こすことで結果的に養育費を支払わせることができるかもしれません。しかし、訴訟には手間と時間がかかりますのでまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

元配偶者にお金がない場合は事実上回収が不可能に

強制執行を行っても、元配偶者がお金を持っていない場合には事実上回収ができません。
相手が働いている場合は将来分の給与を強制執行により差し押さえられることがありますが、元配偶者が無職、預貯金が無いといった場合、回収は困難になるでしょう。

その場合、一定の期間をおいて相手が資産形成をしてから取立を行うという方法があります。

強制執行の手続きが難しい、お金がとれないなどお困りの方は弁護士に相談を

「公正証書が無く強制執行ができない」「強制執行の手続きが難しい」などお困りの方は弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士が間に入り内容証明郵便を出すことで、相手が養育費を支払うようになる可能性があります。
また、代理人として相手と話し合ってもらうことができますので元配偶者と顔を合わせることなく養育費が回収できるかもしれません。

まとめ

養育費の滞納でお困りの方、強制執行の手続きを希望する方はまず弁護士に相談してみるという方法があります。
離婚・養育費の問題の実績がある弁護士に相談することで、強制執行ができるか否か、手続きの準備などを知ることができるでしょう。