- 養育費が支払われない場合の強制執行
- 養育費が支払われない場合の給与の差し押さえ
- 養育費が支払われない場合の給与の差し押さえ手続き
【Cross Talk 】養育費を支払ってもらえないのですが…
離婚して子どもとは一緒に暮らしています。元夫から養育費の支払いをしてもらっていたのですが、先々月から支払いが止まっていて連絡がとれません。元夫に養育費の支払いをさせるために何か良い手はないですか?
元夫の給与の差し押さえをしましょう。全額の差し押さえはできませんが、一度差し押さえれば毎月継続して勤務先から支払ってもらうことができます。
そうなんですね!詳しく教えてください。
養育費が支払われない場合、話し合いなどで求めても支払いが受けられない場合には、強制執行をして回収することになります。強制執行の対象となる財産には様々なものがありますが、最も効率よく回収できるのが相手の給与です。このページでは、給与の差し押さえについてお伝えいたします。
養育費が支払われない場合に給与を差し押さえられるのか
- 養育費が支払われない場合には相手の財産に強制執行をすることができる
- 給与は債権として上限があるものの強制執行の対象になる
養育費が支払われない場合に元夫の給与を差し押さえられるんですね。
はい、給与も債権として財産といえるためです。ただし、給与を全額差し押さえられるとすると生活ができなくなるので、制限があります。
養育費が支払われない場合に給与を差し押さえられるのでしょうか。
養育費が支払われない場合には相手の財産の差し押さえができる
養育費が支払われない場合、子どもの監護をしている側の親は、養育費の支払義務があるもう一方の親に対して、法的手続によって支払いを求めることができます。
調停や裁判を起こし養育費の支払い義務が認められた後も支払いをしないのであれば、相手の財産を差し押さえてお金に換える強制執行をすることができ、この強制執行によって、支払われていない養育費の支払いを求めることになります。
給与は差し押さえの対象となる
強制執行の対象は、強制執行に関する法律である民事執行法に定められている、差し押さえを禁止する動産・債権を除いたものが対象になります。
- 動産:貴金属・バッグ・自動車など
- 不動産:土地・建物・マンションなど
- 債権:貸付金・預貯金・給与など
給与は、会社に対して金銭の支払いを求めることができる債権で、
差し押さえの対象となります。
しかし、給与を全額差し押さえできるとなると、生活ができなくなってしまいます。
そのため、給与として差し押さえできるのは、原則として、
税金・社会保険料を控除した残りの1/4が上限となっています。
例えば、手取りの給与が24万円であれば、1/4の6万円までが差し押さえ可能となります。
例外的に、給与の手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超える部分が差し押さえ可能となります。
例えば、手取りの給与が60万円ある場合には、27万円が差し押さえ可能となります。
この制限は給与だけですので、もし相手が会社役員で受け取っているのが役員報酬である場合には、全額を受け取ることが可能です。
給与への差し押さえは、
一度行われると未払い分が無くなるまで毎月該当する部分が差し押さえられます。
養育費での差し押さえについては1/2まで差し押さえができる特例がある
この上限について、養育費の支払いを求めて差し押さえをする場合には
上限が1/2となり、より多くの金額を差し押さえることができます。
また、手取りの額が66万円以上ある場合には、33万円を控除した額を差し押さえることができます。
例えば、手取りの給与が24万円であれば、1/2の12万円までが差し押さえ可能です。
また、手取りの給与が80万円あれば、33万円を控除した47万円を控除した額を差し押さえることができます。
養育費を差し押さえるための手続き
- 養育費を差し押さえるための手続き
- 相手の銀行口座がわからない場合には弁護士に依頼して弁護士照会をしてもらうのが良い
では、養育費を差し押さえるための手続きを教えてください。
順を追って確認してみましょう。
養育費を差し押さえるための手続きを確認しましょう。
債務名義がない場合には養育費の支払いを求めて調停・裁判を起こす
養育費の支払いを求めて給与を差し押さえる場合に限らず、強制執行をするためには、取り立てをする債権が存在することと、その範囲を公証する書類である「債務名義」が必要です(民事執行法22条)。
養育費の支払いを求める場合の債務名義となりうるものとしては、
- 公正証書で作成した離婚協議書
- 離婚調停で作成された調停調書
- 離婚審判で作成された審判書
- 離婚裁判で作成された判決文・和解調書・認諾調書
などが挙げられます。
もし協議離婚で離婚をして、公正証書で離婚協議書を作成していない場合には、債務名義がないことになるので、債務名義が必要です。
その際には、養育費の支払いを求める調停・裁判を起こし、債務名義を取得することになります。
強制執行の手続きを行う
債務名義を取得したら、強制執行の手続きを行います。給与は債権なので、強制執行の中でも債権執行という手続きを行います。
強制執行も裁判所で行うのですが、強制執行を行う裁判所(執行裁判所)については、東京地方裁判所では庁舎がある霞が関ではなく、目黒にある民事執行センターという場所にあるので注意してください。
申立ての準備として、
- 相手の住所
- 相手の勤務先の特定
以上2点を行いましょう。
申立てに必要な書類としては、
- 申立書(表紙・当事者目録・請求債権目録・差押債権目録のセット)
- 債務名義の正本(公正証書で作成した離婚協議書・判決書・調停調書等)
- 送達証明書(債務名義の正本または謄本が相手に送達されたことを証明する)
- 戸籍・住民票・戸籍の附票(債務名義に記載された氏名や住所が変更している場合)
- 法人の資格証明書(給与を支給しているのが法人である場合)
が挙げられます。
申立書の書式は裁判所のホームページにPDFやWordファイルで公開されているので、そこからダウンロードしてもかまいません。
参考:債権執行に関する申立ての書式一覧表|裁判所
申立時には、4,000円分の収入印紙と、裁判所が指定する郵便切手を購入する必要があります。
提出された書類に不備がなく、申立てが認められると、裁判所は債権の差押命令を、勤務先(手続きの中では第三債務者と呼びます)に送達します。
会社は裁判所に対して陳述書という書面を提出し、差し押さえるべき債権があるかないかを回答します。
相手が現実に働いていて、差し押さえることができる債権がある場合には、次に取立を行うことになります。
会社に対して支払いを請求する
差押命令が送達されて1週間が経過すると、取立を行うことができます。
会社と支払い方法について協議を行い、支払いを受けます。
支払いを受けた後は取立届を作成して裁判所に提出します。
まとめ
このページでは、養育費の支払いを受けられなかった場合の強制執行についてお伝えしました。
強制執行は、どうしても用語が難しく、理解しづらい、手続きが難しい、と諦めてしまう方も多いです。
弁護士にご依頼いただければ、取立までお任せいただけますので、お悩みであればまずはご相談ください。