- 支給される確実性が高い退職金は、財産分与の対象になる
- 退職金支給の確実性の判断は場合によるので、弁護士に相談を
- 勤務期間のうち、共有財産の形成に貢献した期間の退職金が分与の対象
【Cross Talk 】退職金は財産分与で請求できるのでしょうか?
離婚する予定ですが、配偶者が退職金を受け取るまであと10年あります。公務員なので支給されるとは思いますが、財産分与の対象になりますか?
公務員・大企業の社員など退職金が支給される可能性が高い場合は、財産分与の対象になる可能性も高くなります。
詳しく教えてください!
退職金は、配偶者が受け取る可能性が高いと財産分与の対象になる可能性も高くなります。
例えば公務員・大企業の社員である、就業規則に記載された要件を満たしている、退職までの期間が短いなどの事例が挙げられます。
勤務期間のうち財産の形成に寄与した期間が財産分与の対象となります。
本記事では退職金と財産分与、計算方法や注意点、差押についても解説していきます。
退職金は勤務先から支給される確実性が高いと、財産分与できる可能性が高
- 配偶者が勤務先から退職金が受け取れる可能性高い場合、財産分与できる可能性も高くなる
- まずは2人で話し合い、分からない部分は専門家に相談を
確実に支給される退職金でなければ、財産分与の対象にはならないのですか?
退職金が支給されないと財産分与もできないので、確実性は重要な要素です。確実性が低くても、退職金が支払われた場合に一定の割合をもらうことができるという契約を交わすことは可能です。
離婚時に退職金も財産分与の対象になる場合とは
退職金は法的に賃金(給与)の後払いとしての性質をもちます。※1
財産分与は夫婦が協力して築いた財産が分与の対象となりますので、離婚時には退職金のうち「婚姻期間中かつ勤務期間」に該当するものは財産分与の対象になると考えられます。
ただし、退職金が支給されることが確実である場合に限られます。※2
退職までの期間が長い場合には支給されない可能性もありますので、財産分与は困難となります。
離婚時に「退職金が支払われた場合、一定の割合をもらうことができる」旨の契約をすることは可能です。契約をしたときには書面化しておきましょう。
退職金が既に支給された場合は婚姻期間中のものが対象
退職金が既に支給された際には、婚姻期間中のものが財産分与の対象となります。退職金を支給される人の配偶者が財産の形成に寄与した期間に対応する期間のものが財産分与の対象となります。
夫婦のうち一方が働きに出て、もう一方は家事などで財産の形成に貢献した場合には財産が分与されます。
財産分与は基本的に1/2とされていますが、慰謝料として上乗せする場合や離婚後の生活保障として多めに譲る場合があります。
財産分与の割合は基本的に2人で話し合い決定します。
退職前でまだ退職金をもらっていない場合は就業規則の確認を
退職前で退職金をもらっていない場合は、就業規則などで支給要件を確認してみましょう。
退職金は自己都合と会社都合、勤続年数などで要件や金額が異なります。
退職金をもらうのが10年以上という場合は、退職金の財産分与が認められるのは困難な傾向にあります。
ただし、退職が近く退職金の支給要件に当てはまる場合には、財産分与の対象となり得ます。また、公務員・大企業勤務の社員で退職金が支給される可能性が高いと、財産分与が認められる場合もあります。
退職金の財産分与は場合によるので、弁護士など専門家の意見を聞くのも良いでしょう。
財産分与、退職金の計算方法とは?妻の取り分はいくらなのか
- 既に退職金が支給されている場合は、退職金に婚姻期間を乗じて勤続期間で割り計算する
- 調停・訴訟中に、退職金を使い込まれないために「仮差押」ができる
現在、調停中なのですが、配偶者に退職金が使い込まれないか心配です。
退職金が財産分与の対象であれば裁判所に「仮差押」を申立てられます。仮差押が認められると、相手方は勝手に使うことができなくなります。
既に退職金が支払われている
既に退職金が支払われている場合は、財産分与の計算式は以下の通りです。
※ただし、別居期間は含まない。
例えば退職金が1,000万円で婚姻期間は20年、勤続期間は25年の場合は800万円が財産分与の対象で夫婦の共有財産とみなされます。
800万円に対して、分与の割合や支払い方法を取り決めます。
退職前だが将来退職金が支給される場合
退職金が支給されていない場合は、支払いの確実性を基準に共有財産に含めるか否かを判断します。例えば、下記の要素が多いと退職金が支給される可能性は高いでしょう。
- 退職金の支給が就業規則に記載されており、既に要件を満たしている
- 退職金の計算式が記されており、金額が把握できる
- 勤務先の企業・団体などの規模が大きい
- 退職までの期間が短い
例えば、公務員で退職金の支給要件を満たしており、金額が予測できる状況では退職金の財産分与が認められる可能性が高いです。
一方で、退職金の支給要件が曖昧である、会社の規模が小さく退職まで10年以上あるなど不確実な要素が多いと財産分与は認められにくくなります。
財産分与する場合には以下の計算式となります。
※ただし、別居期間は含まない。
「現時点」は離婚時もしくは別居時です。
定年退職により支給された退職金を財産分与する方法もありますが、合意して契約を交わすことが必要となります。
「退職時に退職金が支給された場合に限り、財産分与する」という条件付きの契約を結ぶ方法もあります。
いずれにせよ後のトラブルを回避するためには、口約束ではなく公正証書など書面化しておくことをおすすめいたします。
他の財産で調整することがある
2人が話し合い合意している際には財産分与で退職金が支給されることを想定し、他の財産で調整する事例があります。
例えば、共有財産が預貯金800万円・ローンを完済した家(評価額500万円)・支給される予定の退職金が300万円の場合で考えてみましょう。
将来退職金が支給される予定の方が家と支給予定の退職金をもらい、もう一方は預貯金をもらうことで1/2の財産分与が可能となります。
退職金を使い込まれないために「仮差押」を検討する
調停・訴訟中に退職金が支給されても、まだ決定されていない時点で相手が使い込むと財産分与ができなくなってしまいます。
退職金が財産分与の対象であれば裁判所に「仮差押」を申立て、認められると相手は勝手に使うことができなくなります。
「民事保全手続※3」と呼ばれ、財産を一時的に処分できないようにしておく手続きです。手続きをするためには、退職金が財産分与の対象となること、金額などの証拠を示すもの(就業規則など)が必要となることがあります。
話がまとまらないときには専門家に相談を
退職金の財産分与について2人の話がまとまらない場合には弁護士など専門家への相談をおすすめいたします。
退職金は場合によるため判断が難しいので、実績がある弁護士に相談することで専門知識と経験に基づくアドバイスが得られるでしょう。
まとめ
退職金が財産分与の対象になるかどうかは、判断が難しいため弁護士に相談してみることをおすすめいたします。話がまとまらない場合にも、法律の専門家である弁護士に相談すると適切な対処法や解決策を提示してもらえることがあります。