- 財産分与調停とは?
- 財産分与調停の申立て方法とは?
- 財産分与調停を適切に進めるためのポイントとは?
【Cross Talk 】離婚時の財産分与の調停はどのような手続きなのでしょうか?
離婚する際の財産分与調停とはどのような手続きですか。
調停とは、家庭裁判所の調停委員を介して当事者間で話し合いを進める手続きです。
財産分与調停について詳しく教えてください。
離婚に関して、家庭裁判所に財産分与の調停を申立てる場合、その手続きはどのように進めることになるのでしょうか。
このページでは、財産分与の調停の申立て方法や、調停を適切に進めるために重要となる3つのポイントについてお伝えしていきます。
財産分与の調停とは?
- 財産分与とは
- 財産分与は離婚前・離婚後でも請求できる
財産分与調停とはどのようなものでしょうか。
家庭裁判所を利用して財産分与について話し合う手続きのことです。
財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する時や離婚が成立した後に分割する制度のことをいいます。
民法上、離婚をする場合には、一方から他方に対して財産の分与を請求することが認められています。
財産分与には、以下のような要素があると考えられています。
・清算的財産分与:夫婦が共同生活を送る中で形成した財産を公平に分配する要素
・扶養的財産分与:相手方に対して離婚後の生活を保証する要素
・慰謝料的財産分与:離婚の原因を作ったことへの損害を賠償する要素
財産分与の対象となる財産は、夫婦共有財産です。
夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても、実際には夫婦の協力によって取得された財産については、財産分与の対象となります。
他方、相続や贈与によって一方が単独で得た財産は、財産分与の対象となりません。公的年金は、財産分与ではなく、「年金分割(請求すべき按分割合に関する処分)」の手続を使うことになります。
具体的には、婚姻期間中に形成された以下のような財産が財産分与の対象となります。なお、婚姻状態にあっても別居期間中に形成された財産は除外されます。
・現金・預貯金
・土地・建物などの不動産
・自動車、家具・家電
・保険解約返戻金
・個人年金 など
離婚前でも離婚後でも財産分与の請求は可能
財産分与を請求する場合には、まずは当事者間で話し合いを行い、話し合いでは解決できない場合に家庭裁判所に調停の申立てを行うことになります。
離婚前でも離婚後でも、財産分与の請求をすることができますが、離婚前後で手続きが異なります。
まず、夫婦が離婚前の場合には、「夫婦関係調整調停(離婚)」の中で財産分与について話し合いを行うことになります。夫婦関係調整調停手続きでは、財産分与のみならず、親権・面会交流・養育費、慰謝料請求などの離婚条件について話し合いが行われることになります。
夫婦関係調整調停で当事者双方が合意できた場合には、定まった離婚条件で離婚が成立します。このような手続きによる離婚を調停離婚といいます。
他方、夫婦が既に離婚が成立している場合には、財産分与を求めて「財産分与調停」を申立てることになります。
この調停手続きでは、財産分与についてのみ当事者間で話し合われることになり、基本的にその他の事項についての話し合いは行われません。
なお、この場合には、財産分与調停の申し立ては、離婚から「2年以内」にする必要があるため注意が必要です。
財産分与調停の申立ての流れ
- 財産分与調停の申立ての方法は?
- 財産分与調停の申立ての流れは?
財産分与の調停はどのような流れになるのでしょうか。
以下で具体的な財産分与調停の流れについて解説しましょう。
財産分与の基準時
財産分与の対象となる財産については「別居時」を基準として判断します。したがって、結婚してから別居するまでに夫婦の共有財産となったものが分与の対象となります。
これに対して、分与される財産の評価は「離婚時」を基準に判断されます。
現金や預貯金などのように結婚時・別居時・離婚時で評価額が変動しないものは問題となることは少ないですが、株式などの有価証券のように価値の変動があり得る財産は適切な評価が重要になります。
調停の申立て方法
調停を申立てる場合には、管轄の家庭裁判所に必要書類を提出して手続費用を納める必要があります。
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が申立てるべき裁判所となります。
財産分与の調停を申立てる場合に必要となる書類は以下のようなものです。
・申立書:財産分与請求調停申立書 ※離婚前の場合は夫婦関係調整調停申立書
・離婚時の夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
・夫婦共有財産に関する財産目録
・財産の存在を示す資料:預貯金通帳の写し、不動産の登記全部事項証明書 など
調停手続きの流れ
調停手続きでは、家庭裁判所の裁判官1名と専門的な知見を有するとして市民の中から選ばれた調停委員2名で構成される調停委員会が両当事者から言い分を聞き、助言や協議などを行います。
調停手続き内で当事者が合意できると、合意した内容が調停調書に記載されることになります。
この調停調書は、確定判決と同一の効力を有し、強制執行の際の債務名義となります。
他方、調停によっても話し合いがまとまらなかった場合には、調停不成立(不調)となり調停手続は終了します。この場合、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判(内容を決定)することになります。
この審判書も、確定判決と同一の効力を有し、強制執行の際の債務名義となります。
財産分与調停を適切に進めるためのポイントとは?
- 基本ルールと例外
- 相手の財産の把握
- 不安な場合には弁護士に相談すべき
財産分与を適切に進めるために必要なことはなんですか。
財産分与調停を進めるにあたって重要なポイントについて解説していきます。
分与割合
財産分与の割合については、夫婦それぞれ「1/2」とするのが基本です。
夫のみがはたらき、妻が専業主婦の場合、夫から半分以上の分与割合が主張されてもそのような請求を認める必要はありません。
専業主婦・主夫やパート勤務のように収入が少ない場合であっても、家事労働を分担したという貢献があったおかげで、共有財産を形成することができたと考えられています。
したがって、上記のような収入の少ない当事者も、1/2の割合で財産分与を求めることができます。
相手の財産の把握
財産分与調停を適切に進めるためには、相手方の財産について正確に把握しておくことが重要です。
特に相手方が夫婦共有財産を隠していたことで、対象財産に含めず手続きを進めてしまった場合、本来得られたはずの財産を得られなくなってしまいます。
したがって、同居期間中に適切に財産調査を実施して、夫婦共有財産については漏れなく財産目録に記載して、財産分与の請求を行う必要があります。
相手方が財産隠しをしていることが疑われる場合、弁護士に事件を依頼すると弁護士会照会などの手段によって隠し財産の調査ができる可能性があります。相手方が任意に財産を開示せず隠している疑いが濃厚な場合には、離婚事件に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。
特別の事情がある場合には主張する
夫婦共有財産の分与割合について、1/2ルールの変更を求めるべき特別な事情がある場合には、きちんと主張していく必要があります。
具体的に特別な事情といえるのは、以下のような場合です。
・夫婦の一方の特殊な才能・能力によって財産を形成した場合
・夫婦の一方に激しい浪費があった場合
・特有財産のみを原資として財産を形成した場合 など
ご自身の場合に、基本ルールを変更すべき特別な事情に該当するのか判断が難しいという場合には、必ず弁護士に相談するようにしてください。
まとめ
以上この記事では、離婚時の財産分与調停の申立ての方法や進め方について詳しく解説してきました。
財産分与の調停を適切に進めるために、法律の専門家である弁護士のアドバイス・サポートを受けることができます。
ご自身のみで財産分与調停の手続きを行うことに不安がある場合には、離婚事件の経験が豊富な弁護士に相談するようにしてください。