財産分与請求権は時効にかかる?対応方法は?
ざっくりポイント
  • 財産分与請求権とは
  • 財産分与請求権は時効にかかる?
  • 財産分与請求権の期間制限への対応方法は

目次

【Cross Talk 】財産分与請求権は時効にかかりますか?

夫と離婚しました。離婚したばかりで子どもとの生活にバタバタしており、お金の問題についてはこれからゆっくり決めようと思っています。お金の問題に財産分与請求権利があると思うのですが、この権利は時効にかかるのですか?

時効とは少し違う仕組みの除斥期間というものがあります。2年と短くなっているので、早めに請求することをおすすめします。

そうなんですね。詳しく教えてもらっていいですか?

財産分与請求権に時効はあるのか?

離婚をするときに様々な金銭問題を解決することになります。その中の一つに財産分与があります。財産分与請求には2年の時効とは異なる除斥期間という期間制限があり注意が必要です。また別に時効にも注意が必要です。このページでは財産分与請求権の期間制限についての仕組みについてお伝えいたします。

分与請求権とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 財産分与請求権とは
  • 離婚の際に決める金銭問題

財産分与請求権とはどのようなものですか?

婚姻中に夫婦で協力して築いてきた財産の精算を行うものです。

財産分与請求権とはどのような権利なのでしょうか。

財産分与請求権とは

財産分与請求権とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いてきた財産について精算する財産分与についての請求権のことをいいます。

夫婦は婚姻期間中、共同生活を維持するために、共同で財産を形成します。
離婚をした場合にこの共同で形成した財産について精算を行うことを財産分与といい、協議離婚をした場合には夫婦で話し合って分与を行います(768条)。

話し合いで決められない場合には家庭裁判所で財産分与請求調停が行われ、調停で合意できない場合には財産分与請求審判で決められます。
調停離婚や裁判離婚など法的手続きで離婚をする場合には、財産分与についても決められるので、あらためて離婚後に財産分与について決める必要はありません。

離婚の際に決める他の金銭問題

離婚の際には他にも次のような金銭問題を決めることになります。

・一方が他方に精神的苦痛を与えた場合には慰謝料
・子どもがいる場合には養育費

財産分与はこれらの問題と一緒に解決することが多いのですが、慰謝料については不法行為時より3年で時効にかかり、不法行為時から20年の除斥期間が定められています。

養育費については、支払い時期に支払っていないものについてはそこから5年で時効となります。
それぞれ請求する根拠が別になる関係から、異なる時効・除斥期間があることに注意が必要です。

財産分与は離婚後に行うことができる


財産分与は離婚後に行う
ことができます。
財産分与はあくまで離婚をした後に、婚姻期間中に取得した財産の精算を請求するものなので、正式な離婚前には問題になりません。
夫が生活費を払わないなどの問題については、婚姻費用の分担の問題として別の法的問題として解決することを知っておきましょう。

財産分与請求をしている間に財産を移転してしまった場合の対応方法

財産分与請求をしている間に財産を移転してしまうことがあります。
例えば、婚姻していても、夫名義で不動産を購入した場合に、離婚後に夫が不動産を売却してしまうことがあります。

この場合に、不動産の所有権を主張しても、既に不動産はなくなってしまっているわけですから、請求することはできません。
この場合には、代わりの金銭(代償金)を請求することで対応することになります。

財産分与請求権の期間制限

知っておきたい離婚のポイント
  • 財産分与請求権は離婚から2年の除斥期間がある
  • 請求権が確定してからは5年の時効

財産分与請求権には時効などの期間制限がありますか?

財産分与請求権は2年の除斥期間があるほか、請求権が確定してからは5年で時効にかかります。

財産分与請求権の期間制限について知っておきましょう。

離婚から2年の除斥期間

財産分与請求権は離婚から2年の除斥期間によって消滅します(民法768条2項)。
一定の期間で請求ができなくなる法的な仕組みには、時効(消滅時効)という制度があります。
時効については、請求権者が裁判を起こすなどの一定の行為によって、時効の更新・完成猶予という制度によって消滅を免れる仕組みがあります。
除斥期間は時効とは異なり、更新・完成猶予という制度がありません。

そのため、離婚から2年が経過してしまうと、請求ができなくなってしまいます。
財産分与請求権は2年以内に行使すれば請求権として確定し、除斥期間によって消滅しません。

財産分与請求権の行使方法について法律では定められていませんが、きちんと財産分与請求権を期間内に行使したことを証明できるように、実務上は配達証明付き内容証明郵便で請求を行います。

請求権が確定してから5年の時効

財産分与請求権は、一度行使すると除斥期間によって消滅せず、請求をすることが可能です。

しかし、一旦請求権として確定した後は、通常の債権と同様に5年の消滅時効にかかります(民法166条)。
財産分与請求権は、内容証明郵便を送った後に5年間放置してしまうと、次は時効によって消滅してしまうので注意が必要です。

時効期間が過ぎて消滅しそうになっている場合には、上述した時効の更新・完成猶予の制度によって時効が完成してしまうことを阻止します。
これらの制度にはいくつかあるのですが、催告を行って時効の6ヶ月の完成猶予を行い(民法150条)、その間に訴訟を提起して勝訴すること等で、時効の更新を行います(民法147条)。

まとめ

このページでは、財産分与請求権の時効についてお伝えしました。
婚姻期間中に築き上げた財産の精算を行う財産分与請求権については、協議離婚をした際には離婚後2年で除斥期間によって消滅することになります。
財産分与についてどう請求していいかわからない、どのように相手と交渉して良いかわからない、という場合には、早めに弁護士に相談するようにしましょう。