- 離婚しないことで、法律的に婚姻費用の分担義務がある。一方で、離婚すると児童扶養手当・ひとり親控除など公的制度が利用できる
- 別居を続けると、夫婦のうち収入が低い方は婚姻費用がもらえるなどのメリットがあるが子どもや自身の精神面に悪影響を及ぼす可能性がある
- 別居期間が長くなると、裁判で離婚が認められる可能性が高くなる
【Cross Talk 】ずっと別居しているのに離婚しない状況を続けるべき?
妻と別居して3年が経ちます。離婚の話が一切出てこないのですが、このまま別居を続けるべきでしょうか?
弁護士:まずは2人で話し合ってみてはいかがでしょうか。別居することで良い距離感を保ち上手くいく夫婦もいますので、そのままで良い場合もありますが再婚できないなどのデメリットもあります。
詳しく教えてください。
別居期間が長期にわたっているからといって、必ずしも離婚する必要はありません。しかし、どちらかが現在の状況に不満や不安を感じている場合は、2人で話し合う必要があります。
法律的にも離婚と別居では違いが生じ、子どもがいる場合は子どもにも影響を及ぼします。
今回は法的な別居と離婚の5つの違い、別居して離婚しないメリット・デメリット、別居を続ける際の注意点を解説していきます。
法的な離婚と別居の違いとは?それぞれのメリット・デメリットも
- 離婚すると勤務先から扶養手当・家族手当などの支給がなくなるが、児童扶養手当・ひとり親控除などの公的制度を利用できるようになる
- 経済的なメリット・デメリットだけではなく、自身の精神面や子どものことを考え総合的な判断を
別居して3年目です。離婚したいのですが、子どものことを考えるとどうしたら良いのかわかりません。
経済面では離婚しないと婚姻費用がもらえますが、ご自身のお気持ちやお子さんのお気持ち、環境を考えて判断することが重要です。弁護士などの専門家に相談してみるのも良いかもしれません。
法的な別居と離婚、5つの違い
別居と離婚では法律上で主に以下の5つの違いがあります。
- 1.扶助義務・婚姻費用分担の義務がある
- 2.勤務先から扶養手当・家族手当などの支給
- 3.児童扶養手当・ひとり親控除など公的制度の利用
- 4.税務上の扶養に入れるか否か
- 5.相続権の有無
夫婦には互いに生活を助け合う(扶助)義務があります。
金銭的には婚姻費用を分担する義務が生じます。一般的に夫婦のうち収入の高い方は、別居中であっても低い方に婚姻費用を支払います。離婚をすると婚姻費用の支払義務がなくなりますが、子どもの養育費は支払わなくてはいけません。
勤務先から家族手当・扶養手当などが支給されている場合、企業の規定によっては離婚すると手当の支給がなくなります。
子どもがいる夫婦が離婚し、子どもを引き取った親はひとり親として一定の要件を満たすと児童扶養手当を受給できる、ひとり親控除が受けられるなど公的制度が利用できます
配偶者は税務上扶養に入ることが可能ですが、離婚すると扶養には入れません。
どちらかが亡くなった場合、離婚していないと配偶者として相続の権利があります。
子どもがいる場合は、子どもの親権にも変更があります。
婚姻中は両親の共同親権ですが、離婚すると両親のどちらかが親権を持つことになります。
離婚と別居、どちらが得?
離婚届を出さずに別居を続ける状態と離婚する場合ではどちらが得なのでしょうか?
自身の収入が低い(もしくは働いていない)場合、婚姻費用を請求できますので別居を続ける方が金銭的なメリットがある場合もあります。しかし、子どもがおらず自分の収入だけで暮らせる方であれば金銭的には離婚しても問題はないでしょう。
しかし、離婚は金銭的な損得勘定だけではありません。自身の精神面や子どもへの影響も重要です。
「再婚を希望しているから離婚したい」「子どもがいるから離婚できない」「離婚してすっきりしたい」など将来や子どものこと、自分の気持ちなどを考え損得だけではなく総合的に判断することが重要です。
「自分でもどうしたら良いのか分からない」「子どもを第一に考えるとどうするべきなのか」という方は、弁護士に相談するという方法もあります。
ずっと別居して離婚しない場合のメリット・デメリット
別居を続け離婚しないことのメリットは、収入が相手より少ない場合に婚姻費用を受け取れる点です。
子どもがいると養育費を受け取れますが、養育費は子どもだけを対象とした費用で、婚姻費用は配偶者と子どものための費用です。よって婚姻費用の方が相場の金額が高く設定されています。
子どもがいる場合は、子どもの苗字を変えなくて済むことがメリットになる場合もあります。ただし、近年離婚する夫婦が増え子どもの苗字が変わることが以前より珍しくない状況といえるでしょう。
別居を続けることで、夫婦関係が修復したときに夫婦のまま元に戻れるというメリットもあります。
離婚する夫婦は以前より増えていますが、保守的な団体や企業で働いていると出世で不利になる、小学校・中学校受験で不利になってしまう可能性があります。そのような状況を回避できる点はメリットといえます。
一方で、別居を続け離婚しないことにストレスを感じる方は精神的な負担が生じてしまいます。
子どもにとっても「なぜ両親はずっと別居しているのに、離婚しないのだろう」「自分のせいではないか」と悩みを抱えてしまう可能性があります。
また、相手が失業したとき・病気になった場合などでは助け合う義務があります。
離婚しないことで、結婚したいと思った人に出会ったときに再婚できないという点もデメリットです。
離婚しないまま別居を続ける場合の注意点
- 別居期間が長くなると、裁判で離婚が認められる事例がある
- 「婚姻費用ありき」の生活はリスクが高いので要注意
長期間の別居は裁判で離婚が認められると聞いたのですが本当ですか?
必ずしも別居によって離婚が認められるわけではありませんが、認められる可能性は高くなるでしょう。
相続権はどうなる?
離婚をしないと配偶者と子どもに相続権がありますが、離婚をすると相続権があるのは子どものみです。
さらに亡くなった方が離婚後に再婚していると相続が複雑になってしまい、トラブルに発展してしまう事例があります。
内縁関係の場合は相続の権利はありません。
別居期間が長くなると、裁判で離婚が認められる可能性がある
夫婦の別居期間が長くなると、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として裁判で離婚が認められる可能性があります。
別居期間は法律で「○年」と決められているわけではありませんが、5年を超えると離婚が認めらやすいといわれています。別居を続けたい場合は、5年を超えた時に一度今後について話し合ってみるのも良いでしょう。
婚姻費用をもらっている人は要注意
別居しながら婚姻費用をもらっており「婚姻費用がないと生活ができない」という場合は要注意
です。
別居が長引くと相手が婚姻費用の減額を求めてくる場合があり、減額されると生活ができなくなってしまいます。
公的な書類で契約している場合を除き、相手がいつまでも婚姻費用を払ってくれる保証はありません。
「婚姻費用ありき」の生活はリスクが高いため、注意しましょう。
まとめ
ずっと別居しており離婚しない状況に納得できない、状況を変えたい方は相手と話し合うことをおすすめいたします。お互い忙しく話し合いができない、相手の顔を見たくない場合には弁護士に依頼することで弁護士を介した話し合いが可能になります。まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。