- 弁護士の探し方は御自身に合った方法でかまわない
- 弁護士の選ぶときはコミュニケーションの相性も考える
- 限られた時間内で効率よく相談するため経緯をまとめる
【Cross Talk】残業代請求を弁護士に相談しようか悩んでいます
毎日終電まで働いているのに会社から残業代が一切支払われていません……。納得はできないのですが、家族や友人に相談するとよくある話のようにも聞こえて……。もう誰に相談したら良いかわからなくなってしまいました……。ただ、弁護士に相談するのも大げさな気がして……。
お辛いですね。残業代請求について弁護士に相談することはちっとも大げさなことではありません。むしろ、弁護士に相談することで解決が早まりスムーズにいくことの方が多いです。また、弁護士にとって残業代請求は、ここ数年よくご相談される問題で、珍しいことではありません。
そうなのですか!?詳しく聞きたいです。
弁護士にご相談するということは、そうそう人生に何回もあるわけではありません。それに、知り合いに弁護士がいるという人も多くはないでしょう。弁護士の探し方とご相談の仕方は、誰もが分からなくて当然です。そこで、残業代請求のために、弁護士探しをしようと思った方へ向けて、弁護士の探し方や、弁護士にご相談する際のポイントなどを解説しましょう。
まず弁護士を探してみる
- 弁護士は必ず見つかる
- 探し方は御自身に合った探し方で良い
いざ弁護士に相談したくても、知り合いにはいないので、どうやって弁護士を探せば良いのかわかりません……。
お知り合いにいないということであれば、インターネット利用、弁護士会への問い合わせ、法テラスへの問い合わせ、という3つの方法で弁護士を探すことができますよ。
インターネットで探す
弁護士や法律事務所は、ウェブ上にホームページを開設している所も珍しくありませんので、グーグルやヤフー等の検索エンジンで、「弁護士」、「法律事務所」と検索すると、星の数ほどのウェブサイトがヒットいたします。
この方法における最大のメリットは、いくつもの選択肢の中から、御自身のニーズや価値観にあった弁護士を能動的に探すことができることでしょう。他方、星の数ほどのウェブサイトが出てくるので、どこに依頼すれば良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。そのようなときには、次の項目(弁護士探しの重要ポイント)を参照してみてください。
弁護士会に問い合わせる
全ての都道府県には、弁護士会という弁護士の加入団体があります。そして、お住まいの地域の弁護士会に問い合わせると、法律相談や弁護士の案内を受けることができます。
この方法においては、弁護士を選ぶことができませんが、インターネットで探す方法のように自らが能動的に弁護士を探す必要はありません。
法テラス(日本司法支援センター)に問い合わせる
法テラス(日本司法支援センター)とは、地域的な理由(近くに弁護士がいない)や経済的な理由(弁護士費用を一括で支払えない)等から法律サービスを受けづらい方に対して、国が協力することで、適切な法律サービスを受けられるようにすることを目的とした機関です。
そして、このような理由をお持ちの場合には、お住まいの地域の法テラスもしくは総合受付に問い合わせると、法律相談や弁護士の案内を受けることができます。
なお、この方法においても、弁護士を選ぶことができませんが、インターネットで探す方法のように自らが能動的に弁護士を探す必要はありません。
弁護士探しの重要ポイント
- 場所と時間、費用、注力分野のニーズの観点で探す
- もっとも重要なのは依頼する弁護士とコミュニケーションの感覚が合うか
弁護士や法律事務所ってたくさんあるんですね……。どの弁護士に相談したらいいか迷ってしまいます……。
迷われてしまった場合には、場所と時間、費用、注力分野、相性の視点で弁護士を選んでみましょう。
場所と時間のニーズ
弁護士にご相談する場合、基本的には、実際にその法律事務所(相談場所)まで行き、弁護士と直接会ってご相談する必要があるので、法律事務所の場所、営業時間はとても重要です。
ホームページや電話で、場所について、法律事務所の所在地が自宅もしくは勤務先の近くにあるのか、本店のみならず支店があるのか等を確認してみましょう。また、時間について、特にお仕事をされている方や育児をされている方等時間的な制約がある方は、夜は何時まで営業しているのか、土日祝日の対応はあるのか等を確認してみましょう。
費用のニーズ
弁護士にご相談・依頼する場合に、どのような費用がかかるか確認しましょう。ご相談だけみても、法律事務所によっては、相談自体を無料としている事務所、初回相談のみ無料としている事務所、初回相談から有料としている事務所など様々です。また、初期費用やトータルコストがどの程度かかるのかはとても重要です。ご相談時には、必ず確認しましょう(残業代請求にかかる弁護士費用の相場を知りたい方は「残業代請求のための弁護士費用・相場はどのくらい?」を参照してみてください)。
注力分野のニーズ
何を選ぶにもそうですが、実力や経験のある人に依頼したいというのが正直なところです。しかしながら、弁護士の場合、法律によって広告の表示内容が規制されているので、ホームページや広告で、実力や経験を見極めることはほぼ不可能です。その場合には、ホームページ等で、その法律事務所がどういった案件に注力しているのかを確認してみましょう。
確認材料の1つとしては、残業代請求や労働問題についての事例紹介、コラム、Q&A等、情報発信の量や質(わかりやすさ)が挙げられます。なぜなら、情報発信の量や質イコールその法律事務所がその問題についてどれだけ注力しているかとも考えられるからです。
相性のニーズ
弁護士は、法律とコミュニケーションを用いて、依頼者の問題を解決に導く専門家です。そして、弁護士も人ですから、弁護士それぞれがさまざまな価値観やコミュニケーションの感覚を持っています。コミュニケーションの感覚には、人柄はもちろん、説明のわかりやすさ、レスポンスのスピード感、勢い等も含まれるでしょう。
最終的にはそれらを総合的に考え、ご相談をする方が、この弁護士に依頼したい、この弁護士と相性が合うと思える弁護士に依頼することが大切です。
相談前に準備することは
- 持参すべきものは、弁護士や事務員から案内されるので不安にならなくても良い
- 限られた時間内で効率よく相談するため、事前に経緯をまとめておく
弁護士への相談日が決まりました!何か準備しておいたり、持って行ったりした方が良いのでしょうか?
弁護士や法律事務所の事務から案内されたものをまずは準備しましょう。
必要な持参物
弁護士にご相談する場合に、何を持っていくべきか不安になる方も多いでしょう。もっとも、多くの法律事務所は、法律相談の予約において、持参してほしいものも案内してくれるので安心してください。
基本的な持参物としては、本人確認のための身分証明証、当日契約となった場合に備え印鑑(認印)等が挙げられます。
そして、特に残業代請求については証拠の有無がカギとなるので、関係する資料を、法律相談時に必ず持参しましょう(証拠の集め方については「未払い残業代請求のための証拠の集め方」を参照してみてください)。
ご相談に至る経緯
弁護士がご相談を受ける場合に、もっとも大切なことは相談者の話を聞くことです。ただ、ほとんどの法律相談には 30分や60分といった時間的な制約があるので、弁護士には、その限られた時間の中で、効率よく重要な点(事実関係や証拠の有無)を確認していくことが求められます。
そのときにとても役立つものが、ご相談までの経緯をまとめたものです。メモでも何でも構いません。ご相談する方にとっても、ご相談時にどの順序で話すべきか等整理されますし、作成しておくことをおすすめいたします(ご相談の際に基本的な残業代請求の知識を持っているとご相談に至る経緯の説明がしやすいので「会社に対する未払い残業代請求で、自分でできること」も参照してみてください。)。
依頼した後でも弁護士は変えられる
- 弁護士に事件を依頼するにあたっても、もっとも大切なことは信頼関係
依頼した弁護士が信用できなくなってしまいました……。それでもその弁護士に頼み続けるしかないのでしょうか……。
依頼した後でも弁護士を変えることができます。また、他の弁護士にセカンド・オピニオンを求めることもできますよ。
セカンド・オピニオン
弁護士に事件を依頼するにあたってもっとも大切なことは信頼関係の構築です。時には、弁護士と意見が食い違い不安になることもあるでしょうが、お互いにコミュニケーションを経て納得や解消できることも多くあるようです。他方、依頼している弁護士ではない別の法律事務所の弁護士に、事件の進め方等について意見を求めることもできるので、一人では悩まないでください。
弁護士の変更
一度弁護士を頼んだからといって、その弁護士に頼み続けるしかないというわけではありません。弁護士との契約は委任契約なので、解任(依頼者から断ること)、辞任(弁護士から断ること)については、基本的に自由です。もっとも、基本的には着手金が無駄になってしまったり、事件の進捗によっては手数料が発生したりする場合もあるので、契約を解除する場合には、必ず事前に契約内容や費用を確認しましょう。
残業代の計算方法
- 残業代の計算方法・割増率について確認しよう
残業代はどうやって計算するのですか?
残業などの時間外労働や休日労働・深夜労働などに応じた割増率などの計算方法を確認しましょう。
未払いの残業代はどのように計算するのでしょうか。
残業代は残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率で計算する
残業代は「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率」で計算をいたします。
それぞれの計算方法について確認しましょう。
残業時間とは
まず、残業時間はどうやって計算するのでしょうか。
問題になることが多いのが残業であるため、「残業時間」という呼び方が一般的なのですが、労働契約で決められた労働時間(所定労働時間)を超える労働をした場合には、その部分についても残業代を支払う必要があります。
ですので、終業時間が終わっても仕事を続ける残業だけではなく、早出や休日出勤も含んで計算をいたします。
仕事を持ち帰って家で仕事をしていた場合、仮眠時間、移動時間など、労働時間に含んで良いかの難しい問題があるものもあります。
疑問に思うことは積極的に弁護士にご相談をしてみましょう。
なお、
など、本サイトで解説しているものもありますので、参照にしてください。
この未払い残業代については、3年を超えると時効により消滅してしまいますので、過去3年分を計算して使用者に請求することになります。
なお、民法改正のため2年から3年に時効が延長されていますが、民法改正以前(令和2年3月31日以前)に発生している未払い残業代については2年で時効により消滅するため、お早めに弁護士にご相談することをおすすめいたします。
1時間あたりの基礎賃金
残業代の請求対象となる時間が確定すれば、次に1時間あたりの基礎賃金を求めます。
派遣社員や時給制のアルバイトであるような場合には計算は容易なのですが、正社員のように月給制の場合にはどう計算するのでしょうか。
毎月支払われる給与には、給与そのものではなく手当が含まれていますが、一部の手当は基礎賃金から除外する必要があります(労働基準法施行規則21条)。
そのため、同規則21条により除外する手当を除いた月給÷1カ月に働く時間数(月平均所定労働時間)で計算をして求めます。
月平均所定労働時間の計算は、「残業代計算に必要な「月平均所定労働時間数」とは?算出(計算)方法も解説」のページで詳しい解説をしていますので、参照してください。
なお、除外する手当としては、通勤手当や住宅手当がその典型例ですが、これら手当に該当するかどうかは、名目ではなく実質で判断するため、詳細は弁護士にご相談しましょう。
割増率
残業した時間に応じて割増賃金が設定されており、1時間あたりの基礎賃金に次の割増率をかけて計算をいたします。
区分 | 割増率 |
1日8時間以内の残業 | 0% |
1日8時間以上の残業 | 25% |
1日8時間以上の残業+深夜労働 | 50% |
残業が1ヶ月60時間を超えた場合 | 50% |
休日労働 | 35% |
休日労働+深夜労働 | 60% |
このように割増率が労働をしている区分によって異なるので、どのカテゴリーに属する残業を行ったかを分類して、分類ごとに割増率を掛けて、最後に合算して計算をいたします。
割増率については「【図解】残業代の計算に必要な時間単価の「割増率」とは?」でも解説していますので、気になる方はこちらもご参照ください。
まとめ
弁護士の探し方と相談の仕方を解説しましたがいかがでしたでしょうか。自分に合った弁護士は必ず見つかります!あきらめないでください!