- 弁護士費用は様々な内訳で決まる
- 着手金なしで成功報酬のみの法律事務所もある
- 着手金ありの事務所と成功報酬のみの事務所のどちらがいい?
- 弁護士に依頼をするか自分で請求するかの分岐点
【Cross Talk】 弁護士費用ってどう決める?
残業代を請求したいんですけど、自分で会社と交渉する自信がありません。できれば弁護士に依頼したいんですけど、どのくらい弁護士費用がかかるのか心配です。弁護士費用はどうやって決めるのですか?
弁護士は、請求する額や、実際に支払いを受けた額によって変わるのが一般的です。
どんな感じで変わるのでしょうか?具体的な例も挙げて教えてもらえませんでしょうか。
残業代を請求するには、弁護士に依頼をすることが効果的です。しかし、弁護士費用は高いというイメージを持っている方が多く、弁護士に依頼や相談をしたいが、どのくらい費用がかかるのか心配だという方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、弁護士費用の具体的内容や計算方法、弁護士に依頼をするかどうかの分岐点等を解説します。弁護士に相談や依頼をしようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
残業代請求の為の弁護士費用・相場とは
- 弁護士費用は経済的利益で計算する
- 弁護士費用の相場は30万円~
弁護士費用の内訳とか計算方法はどうなっているんですか?詳しく教えてくれませんか?
弁護士費用には、法律相談を受けた場合の相談料、実際に事件処理を依頼した場合の時点で支払う着手金、成果が得られた場合に成果に応じて支払う報酬金(成果報酬)、があります。着手金や報酬は、請求する金額や実際に支払いを受けた金額で変わるのが一般的です。
弁護士費用には、「相談料」、「着手金」、「報酬金(成果報酬)」があります。弁護士報酬以外の実費としては「預り金」もありますので、この項目で合わせて解説しましょう。そのほかにも経済的利益、弁護士費用の費用体系についても解説しますのでご覧ください。
相談料、着手金、報酬金(成果報酬)、預り金
多くの場合、いきなり弁護士に依頼するのではなく、まずは法律相談を受け、その結果次第で正式に弁護士に依頼をするというパターンが多いと思われます。
弁護士による法律相談は、30分5000円(税抜)が一般的です。ただし、最近は初回相談料無料とか、特定の分野に関する相談に限って相談料無料としている事務所も増えてきました。
着手金は、事件の依頼時に支払う費用のことです。事件処理の依頼を受けた弁護士は、依頼者との打ち合わせ、書面の作成、相手方との交渉など、いろいろな業務を行います。着手金は、これらの委任事務処理の対価と考えてください。そのため、たとえ希望するような結果が出なくても、着手金が戻ってくることは基本的にありません。
報酬(成果報酬)は、事件の終了時に結果(成果)に応じて支払う費用のことですから、着手金とは違って、成果がなければ発生しません。
弁護士費用ではありませんが、実費として、預り金を納める場合があります。事件処理には、郵便切手代などの実費が必要になるので、あらかじめ一定の額を預けておき、そこから実費を支払い、事件終了時に清算するというのが一般的です。
経済的利益とは
着手金や報酬を決める際、依頼者の「経済的な利益」の額を基準にすることがあります。
経済的利益とは、弁護士の事件処理によって依頼者が得ることのできる利益をいいます。
残業代請求のような金銭を請求する事件の場合は、通常は、着手金なら請求する金額が、報酬は実際に支払いを受けた金額が、経済的利益になります。
会社に対して残業代200万円を請求し、最終的に150万円の支払いを受けることができた場合を例にすると、着手金はこれから請求する200万円を経済的な利益として計算し、報酬は実際に支払いを受けた150万円を経済的利益として計算する、ということです。
法律事務所で多い費用体系、費用項目
相談料、着手金、報酬についての主要な費用体系は、次のようになっています。
<弁護士費用の相場>
項目 | 成功報酬制でない場合 | 成功報酬制の場合 |
相談料 | 1時間あたり1万円 | 何度でも無料 |
着手金 | 交渉 5~10万円 |
無料 |
労働審判 15~20万円 |
||
報酬 | 経済的利益の 20~30% |
経済的利益の 30% (最低金額30万円などを 定める場合もある) |
このように、事務所によって費用体系には大きな違いがあります。ただし、請求する残業代の額にもよりますが、総額でいえば30万円~は必要になる場合が多いでしょう。
「成功報酬制」の事務所もある
- 「成功報酬制」なら最初にまとまったお金を払わなくていい
- 完全成功報酬制では残業代がとれなければ弁護士費用がかからない
着手金がいらない事務所もあるんですね。残業代がもらえなくて貯金もないのでありがたいです。
成功報酬制の事務所は、最初にまとまったお金がかからないということと、残業代が支払われなかった場合には弁護士費用がかからないというメリットがあります。
最近では、残業代請求など特定の分野に限って、相談料や着手金無料の成功報酬制を採用する事務所もあります。
たとえば、相談料、着手金無料で成功報酬を会社から取り戻した額の25%と設定したとします。残業代として100万円の支払いを受けた場合、成功報酬は25万円で、75万円が手元に残ることになります(実際には、実費や消費税がかかるのでもうすこし少額となります)。
依頼者から見た着手金無料の事務所のメリットとしては、依頼時にまとまったお金を払わなくていいということがあげられます。
残業代は過去2年分、さかのぼって請求できるので、ときには200~300万円といった大きな金額になることがあります。着手金が必要な事務所の場合、特に経済的利益を基礎に着手金を計算する事務所の場合、着手金が20~30万円程度必要になる可能性があります。そのため、依頼を諦める方もいるでしょう。
成功報酬制なら、残業代が支払われた後に清算すればいいので、依頼を諦める必要はありません。
また、着手金は結果にかかわらず(請求が認められなくても)返してもらえないのに対し、成功報酬制の場合、残業代の支払いを受けられなかったときは弁護士費用を払わなくていいことも、成功報酬制の大きなメリットです。
比較してみる
- どの事務所に依頼するかは請求できる額にもよる
- 費用だけでなく事務所の対応や態度も大切
着手金が必要な事務所と成功報酬制の事務所のどちらを選べばいいんでしょうか?
請求する額や、請求が認められる見込みがどの程度があるかによりますので、一概にどちらがいいとは言えません。また、費用が安いかどうかだけではなく、事務所の対応が丁寧か、事件処理が迅速かと言ったことも重要です。
弁護士費用などの金額を比較する
1.の表からもわかるとおり、弁護士費用体系は事務所によって大きな違いがあり、非常に安いところもあれば、かなり高めのところもあるというのが実情です。依頼をする側からいえば、少しでも費用が安い方がいいでしょうし、着手金が無料の方がいいという方も多いでしょう。
しかし、成功報酬制のなかでも固定報酬を採用している事務所の場合、支払われた残業代が少ないと、手元に残るお金がかなり少なくなる可能性があります。
完全成功報酬制は、着手金や固定報酬がない分、報酬の割合が高く設定されています。一概にどの弁護士費用体系の事務所に依頼すべきとはいえず、どれだけ請求が見込めるかによって変わるといえます。
依頼時には、報酬基準に当てはめて、会社がいくら支払うと、お手元にいくら戻ってくるかを計算して、どの報酬基準がリーズナブルかを判断しましょう。
事務所の対応・態度を比較する
弁護士費用体系が安ければ安いほどいい事務所とは限りません。1件あたりの弁護士費用を安くすると、その分、多くの案件を引き受けなければ事務所を経営していくことはできません。
しかし、1人の弁護士の処理能力には当然ながら限界がありますので、多くの案件を引き受けると、1件1件に丁寧に対応できなかったり、案件の処理に時間がかかったりするおそれがあります。最悪の場合、本来得られるはずの請求額を得られない可能性もあります。
依頼をする前に、費用だけでなく事務所の対応や態度をよく確認しておいたほうがいいでしょう。
そもそも弁護士に依頼した方が得かどうかの分岐点
- 少額なら自分で請求するのもアリ
- 「成功報酬制」の事務所では依頼が断られることもある
そもそもどのくらいの請求ができれば弁護士に依頼をした方がいいのですか?
請求できる見込み額が30万円程度であれば、費用倒れのおそれがあります。そのぐらいの額であれば弁護士に依頼をせずに自分で請求することも選択肢に入るでしょう。
弁護士に依頼をした方がいいかどうかは、請求できる見込み額や弁護士の費用(報酬)体系によります。
請求額の見込みが少ない場合
たとえば、残業代の見込みが1ヶ月8万円の3ヶ月分だとすると、回収が見込めるのは24万円です。
1.の表のとおり、着手金ありの事務所でも最低額を決めているところがあり、着手金なしの成功報酬制の事務所でも固定報酬を決めているところが多いのです。
仮に24万円全額を回収できたとしても、実費もあわせれば、ほとんどの事務所で、手元に残らないか、不足が出てしまうことになります。
それなら完全成功報酬制の事務所に依頼をすればいいと思われるでしょうが、請求できる見込み額があまりにも少ない場合、そういった事務所では依頼を引き受けてもらえない可能性があります。
ですから、30万円程度の請求額なら、労働基準監督署に相談したり、弁護士の無料法律相談を受けたりして、自分で請求する方がいいと考えられます。
請求額の見込みが多い場合
これに対して、請求できる残業代が100万円だった場合、ほとんどの事務所で弁護士費用は30~50万円以内になります。50~70万円程度は手元に残るので、弁護士に依頼する意味はあると言えるでしょう。ただし、これは残業代請求が認められる可能性がそれなりにある場合の話です。
残業をしたのは間違いないが、それを裏付ける証拠がない場合、残業代請求が認められない可能性があります(証拠の集め方については「未払い残業代請求のための証拠の集め方」も参考にしてください。)。
成功報酬制では、残業代が1円ももらえなかった場合には、報酬が発生しません。ですから、残業を裏付ける十分な証拠がない場合、成功報酬制の事務所では依頼を断られる可能性があります。
まずは無料相談などで請求できる見込み額を大まかに把握して、金額が少ないようなら自分で請求するかを検討し、金額が多いようならどの費用体系の事務所が自分に合っているかを検討すればいいでしょう。
まとめ
残業代請求のための弁護士費用について解説しました。残業代請求をしたいが弁護士に依頼をした方がいいのか迷っている方や、弁護士に依頼したいがどの事務所に依頼していいかわかならいという方は、ぜひ参考にしてください。
残業代請求をするのに弁護士を探したい方は「未払い残業代請求について弁護士の探し方や相談の仕方とは?」を参考にしてみてください。