自分が今どんな労働条件で働いているのかの確認するために就業規則が必要です。
ざっくりポイント
  • 就業規則の内容をチェックしよう
  • 就業規則には労働時間や賃金など「絶対的必要記載事項」が記載されているか?
  • 自分の労働条件はどうなっていたか?
  • 労働条件が正当であるかどうかを確認したうえで、残業代の請求をする準備を整える
  • 就業規則はいつでも見ることのできる場所に設置されているか?
 
目次

【Cross Talk】就業規則は重要

私は毎日遅くまで残業をしていますが、残業代がでないんです。先生、正当な残業代を支払ってもらうために、私は何をすればいいでしょうか?

まず、あなたの会社の就業規則の内容を確認してみてください。そこには労働時間や賃金に関する事項など、あなたの労働条件に関する重要な事項が記載されてあるはずです。まずは、就業規則を確認して、あなたが現在どのような労働条件で働いているのかを把握しましょう。正当な残業代を請求し、会社側の主張に対する正当な反論を行うためです。

就業規則から、私の労働条件を把握する必要があるんですね。

就業規則ってどう確認するの?

残業代の請求をするためには、就業規則を確認する必要があります。現在自分がこの会社でどのような労働条件で働いているかというのは、とても大きな問題です。

労働条件が分からなければ、会社の反論に対する対応ができません。就業規則を確認して、会社側へ対抗するための準備を整え、自分の主張を再確認しておくことが大切です。

未払い残業代請求で就業規則をチェックする理由とは

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 自分の働き方が会社の就業規則に則ったものであることの確認をする
  • 就業規則の規定には無い働き方をさせられていないかを確認する
  • 労働契約が就業規則の定める基準に達しているかどうかの確認をする

ところで、残業代請求をするために、どうして就業規則をチェックする必要があるのでしょうか?

会社が労働者の労働条件について、そのすべてを個々の労働契約書で定めることは少なく、就業規則に労働条件の多くを一律に定めていることが多いです。そして、就業規則に規定された労働条件は、そのまま個々の労働者の労働条件に反映されます。そのため、労働条件を把握するためには、就業規則を確認することが必須になります。

就業規則とは?

就業規則とは、労働条件や従業員が働くうえで守るべき規律を会社が定めたルールのことをいいます。

労働基準法の89条の規定では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対しては、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出ることを義務付けています。

【時間外労働の就業規則例】
1.業務上の都合によりやむを得ない事由のある場合には、時間外労働または休日労働を命じることがある。この場合は、労働基準法上の時間外労働、休日労働に該当する場合は、同法の定める労使協定の範囲内において時間外労働、休日労働を命じる。
2.労働基準法上の休日労働は、毎週の休日のうち最後の1回の休日に労働させた場合とする。

就業規則と労働契約の関係

個々に交わされた労働契約書の定めに加えて、就業規則に定められた内容が、個々の労働者の労働条件を決定します。そして、就業規則と労働契約書の内容が重複した場合には、労働者に有利な内容を定める方が優先します。なお、労働契約書及び就業規則が、労働基準法に定める基準に達しない場合にはその部分は無効になり、労働基準法に定められた内容が個々の労働者の労働条件になります。

会社には従業員に就業規則を周知する義務がある

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 就業規則は従業員が容易に閲覧できるような場所に掲示するか備え付けておく必要がある
  • 書面の交付やパソコン内にデータ化していつでも閲覧可能にしておくことも「周知」と言える
  • 会社側が周知義務に違反すると罰金の可能性がある

就業規則というのは、会社に言えばすぐに見せてもらえるものなのでしょうか?

会社は、就業規則を従業員がいつでも見られるような場所に設置しておくことを義務付けられています。

「周知」と言えるには、労働者が知ろうと思えば容易に知りうる状態にしておくことが求められます。

具体的には、作業場など常時誰しもが見やすい場所に掲示するかまたは備えつけることです。その他には、就業規則を書面で交付する、会社のパソコンなどで従業員ならいつでも閲覧することができるような状態にしておくことも「周知」に該当するといえるでしょう。

一方で、金庫や鍵付きの机の引き出しの中に置いておくなど、一部の従業員しか見ることのできない保管場所に保管するのは、これにはあたりません。

なお、会社側がこの周知義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられることになります。

会社に就業規則を見せてもらえなかったら

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 直接会社側に就業規則の提示は義務付けられていることを伝えて公開してもらう
  • 裁判で証拠として提出できるように書面で申請しておく
  • 労働基準監督署に就業規則提示を無視したことに対して労働基準法違反の申告をする

就業規則が社内で公開されていませんでした。在職中ですが、会社側に就業規則を提示して欲しいと頼んだら、それは出来ないと断られました。どうすればいいですか?

就業規則は周知義務のあるものであるということを、会社側に伝えて交付してもらうのが、手っ取り早い方法です。それでも断られたり誤魔化されたりした場合は、書面を作成して会社に送付することや、労働基準監督署に法律違反の申告をしましょう。

会社側に見せてもらうように再交渉してみる

会社側が就業規則を見せてくれない場合には、労働基準法違反であることを述べてもう一度見せてもらうように頼みましょう。それでも見せない場合には、書面を作成して公開するよう求めましょう

書面だと、その後に裁判で争うことになった時のために、有効な証拠として保存しておくことができます。もし、書面で請求しても回答してくれない場合、「申し出を無視された」として客観的な証拠として提示することができます。

また、郵送する際の注意点としては、普通郵便ではなく特定記録郵便を利用して、会社に送付したという証拠を残しておくことが大切です。

それでも開示を拒むなら、労働基準監督署に申告する

それでも開示しない場合には、労働基準監督署(労基署)に労働基準法違反の申告をしましょう。会社が就業規則を開示してくれないと労基署に申告すれば、労基署が是正勧告を行います。悪質な違反と認定されれば、罰金刑の可能性もありますので、労基署への申告をすれば、会社は就業規則を開示するでしょう。

申告方法は、書面で行うのが一般的です。また、書面の備考欄に、この申告書を提出した者の個人的な氏名などの公表を避ける文言を一筆加えておくことも忘れないようにしましょう。

【合わせて読む】退職後に就業規則の開示を拒まれたら?

退職後であっても、「労働者及び使用者のほか、当該事業場を退職した者であって、当該事業場との間で権利義務関係に争い等を有している者」であれば、就業規則の開示要請ができるので、ご自身で労働基準監督署に開示を求めることができます(平成13・4・10基発第354号)。

まとめ

時間外労働をさせたら、その分残業代を出すのが当たり前のことです。
残業代を請求する前に、会社側から誤魔化されたりしないよう、しっかりと就業規則の確認をして、会社側に堂々と請求できる状態にして挑むことが大切です。