不当解雇された場合その解雇内容と残業代を争う場合のご相談先について解説します。
ざっくりポイント
  • 行政機関に対する不当解雇のご相談先は都道府県労働局がある
  • 行政機関の介入があった場合でも、強制力はない
  • 不当解雇を争うのであれば、弁護士にご相談する方法が良い

目次

【Cross Talk】不当解雇された場合はどんな機関や人に相談したら良いのでしょうか。

会社に解雇されてしまったのですが、その理由が納得できません。
不当解雇かもしれないので相談したいのですが、そもそも行政にご相談した方が良かったでしょうか。

不当解雇の案件でしたら、私たち弁護士も十分お力添え可能ですよ。不当解雇について、厚労省所管の都道府県労働局にご相談する方法もありますが、都道府県労働局が関与する場合は、指導や助言にとどまることがあり、裁判による判決のような強制力はありません。
また、事案によっては、相手方が強硬な姿勢を採ってきて、労働局の関与だけでは問題が解決しない場合もあります。
そのため、まずは弁護士にご相談をし、事案に応じた適切な解決方法がないかを聞いてみるのが良いでしょう。

なるほど、会社側が行政などの助言によって話し合いに応じてくれそうな場合には、各行政機関を利用するという選択肢があるのですね。しかしながら、会社側が話し合いで合意に至った内容を守らないなど、事案によって適切な解決方法もさまざまなので、初めから弁護士に相談するといったことも考えられるのですね。

不当解雇された場合のご相談先ってどうすればいいの?

解雇されたけど、不当解雇かもしれないと思った場合、どうしたら良いのでしょうか。不当解雇と思われる場合、通常はハローワークや労働基準監督署やユニオンにご相談するといったことが考えられます。
また、不当解雇するようなブラック企業の場合には、あわせて残業代の未払いがある場合などがあります。今回は、こうした場合のご相談先についてご紹介いたします。

不当解雇とはどんな場合のこと?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 労働基準法、労働契約法等に違反する解雇は不当解雇となる
  • 解雇の合理的な理由がなく、社会通念上相当ではないとされる解雇は不当解雇となる

私の場合、就業規則には解雇することができると記載されてはいるようなのです。どのような場合に不当解雇となるのでしょうか。

労働基準法では、特定の理由で解雇することを制限しています。また、労働契約法上、合理的な理由がなく社会通念上相当ではない解雇も制限しています。これらに違反する場合には、就業規則に解雇の規定があっても不当解雇になりえます。


まず、不当解雇とはどのようなものなのかを確認しましょう。

法律上解雇が許されないとされる理由に基づく解雇

労働基準法19条1項は、業務上負傷・疾病にかかった場合の休業期間の解雇や産前産後の女性が休業した場合の解雇を制限しています。また、男女雇用期間均等法9条2項は、女性労働者が婚姻したことを理由とする解雇を禁止しています。このように、法律よって解雇の時期や理由を制限している場合があります。

これらの法律に違反する解雇は不当解雇といえます。

解雇権の濫用とされる場合がある

上記各法律に違反しない場合でも、合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇については、解雇権を濫用したものとして無効とされます(労働契約法16条)。
どのような解雇が合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないかについては、解雇の種類(普通解雇・整理解雇・懲戒解雇)によって判断する必要があります。

詳しくは、「これって不当解雇?不当解雇チェックリスト」を参照してください。

不当解雇を争う場合のご相談先

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇を争うには解雇通知書、解雇理由証明書などの証拠を収集する。
  • 不当解雇を争う場合には、未払い残業代を請求する好機である。

不当解雇を争いたい場合には、どこに相談するのが一番良いのでしょうか。

ご相談先としては、「労働組合」「都道府県労働局」「総合労働相談コーナー」あとは、「弁護士」などがあげられます。

労働基準法は、法定労働時間を厳格に定め、法定労働時間を超える労働について割増賃金の支払いを義務付けるなど、基本的に労働時間の長さに応じた賃金を支払うことを想定しています。

しかし、業務の内容によっては、労働時間を労働者の裁量にゆだね、かつ労働の長さではなく労働の成果によって賃金を支払うのがふさわしいものもあります。

労働組合

労働組合は、労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体です。従前は、企業内に作られる企業別の労働組合が一般的でしたが、現在は、労働組合のない企業も増加しています。社内に労働組合のない場合には、社外の労働組合(一般に、「ユニオン」と呼ばれます。)に加入するといった選択肢があります。

労働組合に加入することで、加入している労働組合の問題があると判断すれば、団体交渉の申し入れなどを行い、会社と交渉をしてくれます。

しかし、組合費の負担が必要であることや、組合の問題があると判断しないと交渉してくれない場合があるなど、必ずしも望みどおりの行動をしてくれない場合があります。

都道府県労働局

都道府県労働局では、不当解雇に限らず、幅広く労働問題について受け付けています。労働問題のご相談先として労働基準監督署を思い浮かべる方も多いと思いますが、労働基準監督署は、労働基準法などの関係法令の違反を監督する行政機関なので、労働基準法に違反していない解雇については積極的に動いてくれません。

これに対して、労働局は、不当解雇など法的解釈の必要な労働問題に関して、解決のためにご相談、助言、あっせんなどを行う行政機関であるため、不当解雇のご相談先は、労働局の方が適切です。

具体的には、下記の3つの内容について受け付けています。
1. 総合労働相談コーナーにおける情報提供
2. 都道府県労働局長による助言・指導
3. 紛争調整委員会によるあっせん

総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局内、および、労働基準監督署内に設置されています(どの労基署に設置されているかは、各都道府県労働局のウェブサイトに掲載されています)。

総合労働相談コーナーでは、解雇、労働条件、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、セクシュアルハラスメント等を含めた労働問題に関するあらゆる分野のご相談を、専門のご相談員が電話あるいは面談で受付しています。

弁護士

弁護士も不当解雇のご相談を受けています。

ただし、企業側の弁護を専門的に扱っている弁護士事務所も少なくありません。ご相談するまえに、その弁護士事務所のウェブサイトを確認するなどして、労働者側を受け付けているかどうか、確認すると良いでしょう。

また、初回のご相談が無料といった場合もありますので、このような弁護士であれば、今手元にお金がなくてもご相談ができます。

不当解雇を争う際に重要なこと~未払い残業代請求も可能?~

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇を争うには解雇通知書、解雇理由証明書などの証拠を収集する。
  • 不当解雇を争う場合には、未払い残業代を請求する好機である。

不当解雇を争う場合には、重要なことはどのようなことでしょうか。

まず、不当解雇を争う場合には、「不当解雇の証拠を集める」ことが重要になります。また、不当解雇を争うのでしたら、未払い残業代が発生しているのであれば、併せて請求すると良いでしょう。証拠収集の方法がわからない場合には、弁護士にご相談すると良いでしょう。

不当解雇の証拠を集める

不当解雇を争う場合には、いかなる理由で解雇されたか、解雇の手続きが適正にとられているかという点について確認することが重要です。解雇された場合、会社から解雇通知書、解雇理由証明書が交付されます。解雇通知書や解雇理由証明書を見れば自身の解雇理由がわかりますので、もし会社からそれらの書面が交付されていないのであれば、会社に請求しましょう。

また、会社に就業規則がある場合、どのような場合に解雇できるかといった解雇事由や、解雇の手続きが定められている可能性があります。規定に違反して会社が解雇をした場合には、不当な解雇となりますので、就業規則を確認することも重要です。自身だけで証拠を集めることが難しいようでしたら、弁護士にご相談して適格なアドバイスをもらいましょう。

未払い残業代があれば不当解雇と合わせて請求しよう

不当解雇された場合に、復職ではなく、金銭的な解決を希望する場合も少なくありません。そのような場合、在職中では、請求が心理的に難しかった残業代の請求についても請求してみると良いでしょう。

ただし、請求の前提としては、ご本人の勤務状況の証拠が必要ですので、タイムカードの記録、勤務日誌、上司とのメール内容などの証拠が必要になります。

すでに不当解雇をされ、それらの証拠集中が難しい場合でも、弁護士を通じて会社に開示を求めれば、会社が開示に応じることも少なからずあります。あきらめずに、弁護士にご相談してみましょう。

不当解雇を弁護士にご相談した場合の解決方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇をされた側が何を会社に請求するのか
  • 弁護士はどのように不当解雇を争うのか

不当解雇問題を弁護士に依頼した場合には、どのようなことをしてくれるのですか?

その上で会社と交渉をして、場合によっては裁判を起こします。


不当解雇を弁護士に依頼した場合に、どのような事を弁護士は会社に請求するのかを確認しましょう。

会社に対して労働者の地位にあることの確認請求をする

不当解雇では、会社の解雇が無効であるという主張を行います。
解雇が無効であるということは、解雇された労働者は現在もその会社の労働者であるということになります。
そのため、不当解雇で会社と争うときには、会社に対して解雇は無効であり、現在も会社の労働者の地位にあることを確認せよ、と請求することになります。

未払い賃金相当額の損害賠償請求をする

解雇をされると、会社から給与の支払いはされません。
しかし、解雇が無効で現在も労働者である場合には、労働者であるにもかかわらず賃金が支払われていなかった、ということになります。

ですので、労働者の地位にあることの確認と同時に、不当解雇とされていた期間の未払い賃金に相当する額の損害賠償を求めます。

不法行為に基づく損害賠償を請求する

不当解雇によって労働者は精神的な苦痛を被ります。
精神的な苦痛を受けた被害者は加害者に対して慰謝料の請求をすることが可能です(民法710条)。
そこで、加害者となる会社に対して、不当解雇によって精神的苦痛を受けたことを主張して、損害賠償を求めます。

もっとも、不当解雇の主な損害は、上記の不当解雇されていた期間の未払賃金になりますので、一般的に慰謝料まで認められる可能性は低いです。

会社と和解をする

以上のような請求を会社にすることになるのですが、不当解雇された会社に戻るということが現実には難しい場合もあります。
弁護士は依頼者の希望を聞きながら、復職を希望するのであれば復職を、希望しないのであれば現実に会社に戻れないことも考慮した損害賠償を求めて、会社と交渉することになります。

会社相手に裁判等をする

会社と交渉をしても会社が不当解雇を認めないような場合には裁判を起こすことになります。
なお、民事訴訟においては、訴訟の進捗度合いにあわせて和解の話し合いが行われますので(裁判上の和解)、これにより解決をする場合もあります。

また労働審判やADRなど、紛争内容に応じて適切な対応方法を利用いたします。

まとめ

不当解雇のご相談先としては、さまざまありますが、まずは、弁護士にご相談してみるのが得策でしょう。その中で、事案に沿った適切な解決方法や、不当解雇の争い方等を聞いてみるのが良いでしょう。