残業代にはどのような上乗せの制度がある?計算方法は?
ざっくりポイント
  • 残業代は特別な請求権ではなく給与
  • 残業した場合の通常の給与に上乗せして割増賃金が支払われる
  • 残業代が未払いの場合にはペナルティとして上乗せをして支払わせる制度がある

目次

【Cross Talk 】残業代について、給与に上乗せして支払われる制度はある?

私の会社では残業代が出ません。今度退職するので払ってもらえなかった残業代の支払をしてもらいたいのですが、通常の給与に上乗せして支払ってもらうことはできるのですか?

残業に関しては割増賃金という上乗せの制度もありますし、ペナルティとして未払い分の利息や付加金という制度があります。

そうなのですね!詳しく教えてください。

残業をした場合に払ってもらう給料には上乗せがある

残業をした場合に支払われる残業代は、通常の賃金に上乗せされた割増賃金での支払いになります。また、残業代を支払わないような場合には、ペナルティとして利息や付加金が上乗せされます。

そもそも残業代ってどういうもの?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代は給与の支払である
  • 残業した場合には通常の賃金に上乗せされた割増賃金で支払われる

まず、残業をした場合の上乗せ・割増賃金について教えてください。

残業のような時間外労働をした場合には、会社は労働者に割増賃金を支払わなければなりません。

そもそも残業代とはどのようなものでしょうか。残業のような時間外労働には割増賃金を支払わなければならないという上乗せの制度があるので知っておきましょう。

残業代の法的性格は給与である

まず、そもそも残業代はどうして支払われるか、法的な性格について見てみましょう。
残業代は法的には時間外労働に対する対価として支払われるものですので、給料として支払われます。
ボーナスのように業績に応じて支払う・恩恵としてもらえるものではなく、労働の対価として使用者が必ず支払わなければならない金銭であることを確認しましょう。

給与の支払いについての原則

給与の支払ですので、当然ながら使用者は通常の給与と一緒に残業代を支払わなければなりません。
そして、残業をする・休日出勤をするなどして、契約した労働時間以上に働いた場合には、後述する割増賃金によって支払をしなければならない、という意味で通常の賃金に上乗せがされます。

残業や休日出勤の上乗せ(割増賃金)について確認する

残業や休日出勤で、契約した労働時間以上に勤務をした場合にはどのような上乗せがあるのか、割増賃金について見てみましょう。

労働基準法では1日8時間・1週40時間を超える時間外労働のことを法定外労働としています。
例えば労働時間が1日7時間となっているときに、8時間勤務した場合の1時間の残業(法内残業)については、特に割増はありません。

1日8時間・1週40時間を超える時間外労働については、通常の賃金に25%の上乗せをした割増賃金を支払う必要があります。
そして、月60時間を超える時間外労働についての割増率は50%以上とすることとされていますが、現在、中小企業は25%で猶予をされており、大企業のみ月60時間を超える場合には50%で支払うことになっています。

なお、働き方改革関連法が成立し、この猶予の規定は2023年4月に撤廃されることになっているので、中小企業でも2023年4月以降は60時間を超える残業については50%の割増率での給料の支払が必要となります。

さらに、労働時間が深夜労働(午後10時~午前5時)にわたる場合には割増率をさらに25%上乗せをします。
休日労働となった場合には割増率は35%となります。
この規定は強行規定といって、当事者間の合意で換えることができないものですので、契約・就業規則などで割増を適用しないと規定しても、その規定は無効となるので注意しましょう。

残業代を支払わない会社へのペナルティとしての上乗せ

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 未払い残業代に付加される利息について
  • 付加金について

私の会社では残業代の支払を行っていないのですが何かペナルティとして上乗せさせる制度はありませんか?

未払いですので利息の支払が必要なのと、付加金というものを払わせられる可能性があります。

残業代が未払いの場合のペナルティについてみてみましょう。

民事法定利息

残業代は前述したように給料です。
給与は、労働者から使用者(会社)に対して請求することのできる債権ということになります。
未払いの債権がある場合には民事法定利息の請求をすることができます。

なお、民事法定利息は、遅延損害金・遅延利息という言い方もします。
この利息については昨今改正があり、2020年4月以前の債権については5%(商法の規定が適用される場合には6%)です。
2020年4月1日以降の利息については、商法の規定の適用の有無にかかわらず3%とされています。

退職後の利息

なお、この利息については、賃金の支払の確保等に関する法律によって、労働者が退職した後には利率が変更されます。
賃金の支払の確保等に関する法律は、使用者に賃金の支払をするよう促すもので、賃金である残業代もこれに含まれます。

そして、会社を退職して同法の適用を受けた場合には14.6%にまで利率が上がることになります。
給与は毎月支払うことになるのですが、支払日から退職日までの未払い部分には5%(ないし6%)で計算され、退職後には14.6%で計算されることになります。

付加金

労働基準法114条に規定されているペナルティの制度で、割増賃金の支払をしないような場合には使用者に付加金というものを請求することができます。

付加金は、労働者が裁判所に残業代を支払うよう訴訟提起した上で、裁判所が付加金の支払いを使用者に命じた場合に支払ってもらえるものです。
付加金は請求している未払い残業代の金額と同じ金額を課することになっているので、結果的に2倍の支払をさせることになります。

ただ、付加金の支払は重度に悪質な会社の行為に対してされるもので、裁判所の命令が必要ですので、残業代の支払がないからといって常に支払いを命じるわけではありません。

まとめ

このページでは、残業代の支払いについて上乗せをする制度についてお伝えしてきました。
残業代は割増賃金として所定の割増率をかけて計算されることと、未払いになっている残業代には上乗せをする制度として利息・付加金というものがあることを確認しておきましょう。