- 会社が残業代の請求を無視するのは、いくつかの理由が考えられる
- 支払う気がない、様子を見ている、支払いの準備に時間がかかるなどの理由がある
- 残業代を請求する方法として内容証明を送る、労働審判を申立てる、訴訟を起こす、などがある
【Cross Talk 】残業代を請求しても無視された場合はどうすればいいの?
残業代を会社に請求したのですが、何の返事もないまま日にちだけが過ぎていきます。残業代の請求を無視された場合はどうすればいいでしょうか?
会社が請求を無視する理由はいくつか考えられます。支払う気がないので無視している場合は、内容証明で請求するなど、何らかの対応をする必要性が高いケースです。
相談者:会社が請求を無視する場合は、何らかの対応が必要になるんですね。どんな方法があるかを教えて下さい!
残業代を支払ってくれないので会社に請求したところ、返事がないまま無視されるというケースがあります。
会社が請求を無視する理由は色々と考えられますが、会社が残業代を支払う気がなく無視している場合は、その後に何らかの対応を取る必要性が高いです。
そこで今回は、残業代を請求しても会社に無視された場合に、どのような対応方法があるかなどを解説いたします。
残業代の請求を無視する理由
- 会社が残業代の請求を無視する理由は、いくつかの可能性がある
- 残業代を支払う気がない、様子を見ている、支払いの準備に時間がかかっているなどが考えられる
会社に残業代を請求したのですが、いくら待っても返事がありません。どんな理由が考えられますか?
請求を無視する理由はいくつかの可能性があります。支払う気がない、様子を見ている、支払うが準備に時間がかかっているなどです。
残業代を支払う気がない
会社としては請求されても残業代を支払う気がないケースです。
たとえば、「1人の従業員が言っているだけのことだから、無視しても会社にとって特に困ることはないだろう」などと判断して、支払わないと決めたなどです。
従業員からすると残業代をきちんと支払ってもらいたいところですが、会社は要求通りに支払う気はないので、このままでは会社に残業代を支払ってもらうことは期待できません。
請求をしても会社は支払う気にならなかったということで、さらに請求を続ける、労働審判を起こす、思い切って訴訟を起こすなど、何らかの手を考える必要があります。
また、会社に支払う気がないので、自分だけで交渉しても支払いに応じる可能性は高くありません。労働問題に詳しい弁護士に相談するなど、味方になってくれる専門家を探す必要性が高いケースです。
請求について様子を見ている
残業代の請求をされたものの、どうしたものか判断がつかずに様子を見ているケースです。
たとえば、複数の従業員に対して残業代が未払いの場合、1人の従業員から請求があったからといって支払ってしまうと、他の従業員からも次々に請求されてしまう可能性が高くなります。
そこで、本来は支払うべきケースであるとわかっていても、支払った後に会社にとって望ましくない状況に発展することを恐れて、このまま無視を続ければ従業員がそれ以上の請求を諦めてくれるのではないか、と会社が期待することがあります。
どのような理由があるにせよ、請求について様子を見ているということは、そのままでは会社としては支払う気がない可能性が高いです。残業代を支払ってもらうには、次の手を考える必要性が高くなります。
支払いのための準備に時間がかかっている
会社としては残業代を支払うつもりですが、支払いのための準備や手続きに時間がかかっているケースです。
例えば、残業代の正確な金額がわからないので計算している、支払いの担当部門に根回しをしているなどです。
会社としては残業代を支払う気はあるものの、残業代として支払うつもりの金額が従業員の請求額よりも低いというケースもあり得ます。
会社が従業員の請求通りに残業代を支払うのであれば問題はありませんが、会社が提示してきた金額に納得がいかない場合は、自分の請求通りに会社に支払ってもらうべきかを検討する必要があります。
残業代の請求を無視された場合の対処方法
- 残業代の請求を無視された場合は、対処法としていくつかの選択肢がある
- 内容証明を送る、労働審判を申立てる、訴訟を起こす、労働基準監督署に通告するなどの方法がある
会社に残業代の請求を無視されてしまいました。どうやら支払う気がないようです。会社に残業代を支払わせるには、どんな方法がありますか?
いくつかの選択肢があります。内容証明を送る、訴訟を起こす、労働審判を申立てる、労働基準監督署に通告するなどです。残業代の金額によっては少額訴訟も検討できます。
内容証明を送る
内容証明(内容証明郵便)とは、以下の3点を客観的に証明することができる郵便の方法です。
・誰が誰に対して
・どのような内容の文章を
・いつ送ったのか
通常の手紙などで残業代を請求したと主張しても、会社側が「残業代を請求する書面は受け取っていない」と言われると、客観的に証明することは困難です。
内容証明の場合、上記の3点を証明することができるので、残業代を請求したことを客観的に証明するのに役立ちます。
注意点として、内容証明はあくまで請求したこと自体を証明するものなので、請求の内容が法的に正しいことを証明できたり、請求した内容を強制的に実現させるなどの効果はありません。
労働審判を申し立てる
労働審判とは、労働者と会社の間で発生した労働問題について、迅速かつ適切な解決を図ろうとするための裁判所の手続きです。
裁判官が判決を下す裁判とは異なり、労働審判官(労働問題を担当する裁判官)と労働審判員(労働問題に関する専門知識・経験を有する者)で構成される労働審判委員会が事案を審理します。
労働審判は原則として3回以内で審理を終結するなど、裁判に比べて早期に解決しやすいのが特徴です。また、審判が確定すれば裁判における確定判決と同様の効力が生じます。
ただし、労働審判の判断に同意するかどうかは当事者が判断するので、会社側が審判の結果に同意しなければなりません。
正式な裁判をする
会社がどうしても請求に応じない場合などは、裁判所に提起して正式な裁判をして、未払いの残業代の支払いを会社に請求することができます。
裁判では労働者側と会社側がそれぞれの主張をしたり証拠を提出したりして、最終的に事件を担当する裁判官が判決をします。どちらも控訴せずに判決が確定すると、確定判決に基づいて強制執行が可能になります。
裁判は勝訴が確定すれば未払いの残業代を回収しやすいのがメリットですが、審判などと比べると一般に判決までに時間がかかるのが特徴でもあります。
少額訴訟をする
60万円以下の請求に限定されますが、通常の裁判に比べてより迅速な手続として、少額訴訟があります。
通常の裁判は判決までに時間がかかるのが通常ですが、少額訴訟の場合は原則として1回の期日のみで審理が終了し、判決が出されるのが特徴です。
判決が確定すれば通常の裁判の判決と同様の効力があるので、請求する残業代が60万円以下の場合は、少額訴訟を検討する選択肢もあります。
労働基準監督署に通告する
労働基準監督署は厚生労働省の出先機関であり、会社が労働基準法などの労働に関する法規を遵守しているか確認・監視することを主な業務とする機関です。
未払いの残業代がある場合は、会社が残業代をきちんと支払ってくれないことを労働基準監督署に通告することで、労働基準監督が会社に指導・勧告をしてくれる可能性があります。
ただし、指導・勧告はあくまで会社に是正を促すための措置であり、未払いの残業代を直接支払わせるような強制力まではありません。
まとめ
会社に残業代を請求しても無視された場合、いくつかの理由が考えられます。残業代を支払う気がない。請求の様子を見ている、残業代の支払いの準備に時間がかかっているなどです。
会社が残業代を支払う気がなく請求を無視している場合、内容証明を送る、労働審判を申立てる、訴訟を起こすなどの対応方法を検討する必要性が高くなります。
どのような対応をすれば会社が残業代を支払う可能性が高いかは、個別具体的なケースごとに専門家が判断する方が良いので、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。