- 賃金とは
- 残業代は賃金の支払いにほかならない
- 残業代を支払わない場合の対応方法
【Cross Talk 】残業代をもらえないのですが残業代は賃金ではないのですか?
今勤務している会社についての相談です。私の会社では残業代の支払いがなく、会社に大きな利益が出たら臨時ボーナスとして出してやると言われています。残業代って働いている対価としてもらえるものなので、賃金ではないのでしょうか?賃金だったら労働基準法で支払わなければ違法なんじゃないでしょうか?
おっしゃる通りです。残業代は特別な請求権でも何でもなく賃金そのもので、支払わないことは違法です。残業代を請求する手続きと一緒に確認しましょう。
そうなんですね!ぜひ相談に乗ってください。
毎月支払われる給与ですが、労働基準法では「賃金」と呼ばれます。賃金と残業代はどのような関係にあるのでしょうか?賃金についての定義から残業代は賃金そのものといえるのです。賃金にはどのような法規制があるのか、支払われない場合にはどのように対応すれば良いのか、それぞれ確認しましょう。
残業代と賃金の関係
- 賃金とは
- 残業代は賃金であり賃金に関する法律が適用される
残業代と賃金はどのような関係にあるのでしょうか?
残業代も労働の対価なので賃金です。そのため、残業代の支払いについても賃金に関する法律が適用されます。
残業代と賃金はどのような関係なのでしょうか。
賃金とは
賃金とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」とされています(労働基準法11条)。
労働基準法の上では、どのような名称で支払われるものかは問われず、労働の対価として支払うものは全て賃金にあたるとされています。
賃金にあたる場合には後述する賃金の支払方法についての法規制にかかるほか、「事業又は事務所(に使用される者で、賃金を支払われる者」という定義がされる、労働者に該当するかどうかの判断にも利用されます(労働基準法9条)。
残業代は賃金である
残業代という言葉は労働基準法にはありませんが、所定労働時間を超えて勤務した分に対して支払われる賃金のことをいい、上記の賃金の定義にあてはまるものです。
そのため、残業代は法律上、賃金として取り扱われることになります。
賃金の支払いについての法律
賃金として取り扱われるということは、労働基準法24条が規定する方法で支払いをする必要があります。
労働基準法24条に定められていることは、賃金支払いの5原則と呼ばれる次の原則を守る必要があります。
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賃金支払いの5原則
- 通貨で
- 直接労働者に
- 全額を
- 毎月1回以上
- 一定の期日を定めて
支払わなければならない
支払わなければいけないのは当然であり、かつ、例えば
- 残業代相当の自社商品を給付するような場合は「通貨で」払うとしている1つ目の原則に違反する
- 固定残業代のみの支払いしかせずに残業代全額の支払いをしていない場合には「全額を」支払うとする3つ目の原則に違反する
- 残業代をボーナスとして年2回支給するとしている場合には「毎月1回以上」の4つめの原則に違反する
ということになります。
この規定に違反した場合には、行政指導の対象になるほか、労働基準法120条1項で30万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。
賃金である残業代を支払わせる方法
- 在職中は労働基準監督署に通告を行なう
- 離職後は民事での請求を行なう
残業代の支払いをしてもらえない場合には、どのような方法が考えられますか?
在職中には労働基準監督署に相談を行なうようにしましょう。離職後には民事での請求を行いましょう。
賃金である残業代の支払いをしない場合の対応方法について確認しましょう。
在職中は労働基準監督署に相談
在職中で仕事を続ける際にも、残業代の請求は可能です。
しかし、会社に居る間は残業代の請求はしづらいというのが現実でしょう。
この場合には、労働基準法に関する監督省庁は労働基準監督署に相談してみましょう。
会社に対して行政指導をすることを通じて、会社に対して残業代を支払うように圧力をかけることが可能な場合があります。
離職後は民事請求を行う
離職をした後であれば民事上の請求によって残業代の支払いを直接請求しましょう。
令和2年4月1日以後に発生した残業代賃金の請求権は3年で時効にかかることになっており、3年を過ぎる部分はどんどん時効にかかるので、時効にかからないように内容証明郵便で請求をして、催告による時効の完成猶予を行います(民法150条)。
請求をしても支払いをしない場合には、訴訟や労働審判という法的な手続きによって、残業代の請求を行います。
まとめ
このページでは、賃金と残業代についての関係を中心にお伝えしました。
残業代は、労働基準法に定義されている賃金であり、労働者に対してきちんと支払われる必要があります。
適切に支払わない場合には、大抵の場合退職後に民事上の請求をすることになります。