- 解雇されそうな場合には、解雇そのものを争うことができる可能性がある
- 解雇されそうな場合でも、残業代請求ができる可能性がある
【Cross Talk】 会社からクビになりそうな場合にはどうすればいいのか
先日、私の上司に会社の会議室に呼び出されて、「君の成果が悪いので、辞めてもらうかもしれないよ」などと解雇を匂わす発言がされました。どうしたらよいのでしょうか?
会社が労働者を合法的に解雇するには、「客観的合理性」と「社会的相当性」といった要件が認められる必要があります。この「客観的合理性」「社会的相当性」は、厳格に判断されるため会社側の一方的な判断では認められない可能性があります。
なるほど、会社が私を合法的に解雇するには、いくつかの制約があるのですね。また、サービス残業の場合にも残業代の請求の可能性があることや、退職後にも残業代請求が可能であることは、まったく知りませんでした。
会社から解雇されそうな場合には、どうすれば良いのでしょうか。一般的には、転職活動をどうするかについて考えることが多いでしょう。
しかし、解雇理由に納得がいかない場合には、解雇を争いたいといった場合もあるかもしれません。また、会社からクビを宣告されそうな場合には、ついでに残業代を請求したいといったことがあるかもしれません。
この記事では、解雇される前にすべきこととして、解雇の効力を争う場合と、残業代請求を行う場合について説明いたします。
解雇の理由を探る
- 解雇する場合には有効な解雇予告が必要である
- 解雇される前に解雇理由を知るために「退職証明」を請求する
会社から解雇を言い渡されてしまった場合にはどうすれば良いのでしょうか。
そうした場合には、まず、会社に解雇理由について確認をしてみましょう。
解雇理由を知る:解雇予告とは
会社は、労働者を解雇する場合には、「解雇予告」を行う必要があります。解雇予告とは、解雇しようとする30日前に予告するか、予告手当(30日分の平均賃金)を支払って行わなければなりません(労基法20条1項)。
また、会社は労働者が退職する以前に、請求した場合には、原則として「退職証明書」を交付する必要があります(労基法22条1項、2項)。
したがって、労働者が在職中に請求した場合には、会社が解雇理由を証明書を交付する義務があるため、退職証明が通知されているか確認をしてみると良いでしょう。
仮に、解雇理由について退職証明の通知がない場合には、退職する前であれば、原則的には請求をすることができます。
なお、解雇予告の手続きを履践したとしても,「解雇」そのものが有効と法的に評価されるわけでなありません。
会社が労働者を解雇するには、解雇権の濫用となってはならず、解雇理由として、「客観的合理性」、「社会的相当性」が必要ですが、一般にこれらの理由を肯定することは、困難である場合が多いのが実情です。退職証明の内容から、その解雇が解雇権の濫用に該当しないのかについて、法的な確認が可能です。
解雇を争うか検討する
- 会社が解雇をするには一般的な制約がある
- 会社が懲戒解雇を理由として解雇する場合には、非常に厳格な場合でのみ解雇が可能である
会社に請求した退職証明に「懲戒解雇のため」と記載がありました。私には身に覚えのない事実であって、なぜ、懲戒解雇事由に該当するのかについて、説明を求めたいのですが、どのように対応をすれば良いのでしょうか。
通常、懲戒解雇は、会社が行う懲戒としては、最も重いものとなります。こうしたことから、一般的には、その理由の説明の機会とともに、その懲戒の前提として、弁明の機会が与えられなければなりません。
懲戒解雇は最も重い懲戒である
会社が「懲戒解雇」という理由で、解雇を行うには、原則的には非常に限定的な範囲でのみでしか認められません。懲戒解雇の場合には、原則的には、就業規則や労働協約に記載された内容などに該当しない限り、合法的な解雇を行うことはできません。
また、就業規則や労働協約に記載がある内容は限定列挙と一般に解されるため、それらに記載されていない内容で「懲戒解雇」を行うことは、原則的にはゆるされません。仮に就業規則などに記載のある具体的な懲戒事由に該当する場合であっても、労働者側に弁明の機会が与えられるはずです。
退職証明書の内容などで解雇理由を確認
退職証明書や弁明の機会などの制度を通じて解雇の理由を知り、解雇そのものを争うか検討することが大切です。
解雇の理由に応じた証拠を集める
- 解雇の場合でも解雇理由によって収取すべき証拠が異なる
- まずは就業規則や労働協約などを確認する
会社に解雇の理由を確認したところ、退職証明が交付されました。その内容によると、「業務遂行能力の不足」と記載がありました。あきらめるしかないのでしょうか。
そんなことはありません。業務遂行能力の不足で解雇を宣告された場合でも、労働者はその内容を争う余地はあります。
解雇には一般的制約がある
例えば、「職務成績不良」または「職務能力の不足」などの場合で解雇を行うには、会社としては、いくつかの一定の手順を踏んでいる必要があります。
就業規則などで、無断欠勤、出勤不良、職場離脱、職務上の注意義務違反などの具体的な事項について記載されている場合であっても、懲戒を行うなど、労働者側に改善を求めることが必要となります。
また、繰り返し懲戒を受けた場合でも労働者が、一行に改善しないといった事実関係が必要となります。
解雇の内容に応じた証拠を集めることを念頭に置く
労働者側としては、上記のような事情がなかったことを証明できるような証拠を集める必要があります。具体的にどのような証拠が必要になるかは、退職証明などの記載を確認して弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
未払い残業代請求もできる
- 会社を解雇されても残業代請求は可能である
- 残業代請求には、残業労働の事実の確認のための資料が必要である
私の会社では、無茶な営業目標のため、毎日のように残業を行っていますが、残業代が支払われた記憶がありません。また、私の会社では、固定残業代があるなどの事実関係はありません。
解雇によって、退職する場合であっても、未払いの残業代の請求を行うことはできます。
解雇されても残業代の請求権は消えない
未払いの残業代請求は、労働者が働いた分の対価を会社に請求することです。解雇されたとしても、未払い残業代の支払いを受ける権利は消滅しません。
ただし、未払いの残業代は、各月の給料日の翌日から2年間で消滅時効にかかり、請求ができなくなりますので注意してください。
解雇の証拠を集めるついでに残業の証拠も集める
時間外に労働を行っていた事実関係、および、会社が残業代不払いの事実関係を証明する必要がありますので、タイムカードの記録や、勤務時間のわかるシフト表、あるいは、会社関係のメールの記録などを用意すると良いでしょう。
タイムカードの記録など、手元にない場合であっても、弁護士を通じて会社に請求できますので、弁護士に事前に相談することで、スムーズに残業代請求できる可能性があります。
まとめ
会社が労働者を解雇するには、法律上の制約、就業規則・労働協約などによる制約、解雇権濫用法理による制約などがあります。解雇を通知された場合であっても、その解雇の有効性を争うことできる場合があります。また、解雇されたとしても、未払い残業代は別途請求することが可能です。解雇で困った場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。