- 内定と内々定の違いは、労働契約の基本合意がされているか否かである。
【Cross Talk】内定、内々定の違いとはいったいなんなのでしょうか。
私は現職を退職して、転職を検討しています。恥ずかしながら、「内定」と「内々定」について、その内容の違いを明確には認識していません。これら2つの言葉の意味の違いとはどういったことなのでしょうか。
相談者さんのように、いったん就職をすると、内定と内々定の意義を深く意識することがないことが一般的でしょう。
内定と内々定の法的な定義は特段ありませんが、一般的な違いは、内定は採用通知を出す段階であり、内々定は、「ある特定の期間までに」または「特定の時期」に採用通知を出す旨の予告をすることでしょう。
法的な意味の違いとしては、(呼び方は何であれ)採用通知の意図で労働者に通知を出す場合、一般的には労働契約に関する基本的な合意が得られている段階であり、双方ともにこの合意内容に一定の拘束を受ける状態となります。
他方で、内々定のように、採用する、または、就職することについて、互いに流動的である段階においては、原則的には内定時ほどの法的な拘束受けないと解釈するのが一般的でしょう。
しかしながら、個別具体的内容によっては、当事者間に一定の期待権が生じることから、いずれにせよ、仮に内々定の段階であっても、慎重に扱われるべきでしょう。
なるほど、よくわかりました。
内定、内々定と聞くと、「新卒のことかな」と考えるかたは多いと思います。
しかしながら、新卒採用に限定されず、転職などの中途採用時にも内定や内々定などがあります。とくに、中途採用などの場合には、特段に内定や内々定といった単語は思い浮かべることはないのが一般的かもしれません。
いずれにしても、内定や内々定の際に提示される労働条件については、きちんと確認しておくことが、入社後に「思っていたのとは違った。」などといった結果となることを防止します。ここでは、内定、内々定時にチェックしておきたい労働条件について、ご説明いたします。
内定時に確認しておきたい労働条件
- 労働条件は募集時と契約締結時に明示する必要がある。
- 求人時の条件と実際の労働契約の内容が異なる場合、争う余地がある。
現在の会社を退職して、他の会社に転職しようと思案しているのですが、いくつかの会社から内定通知を頂いております。いずれの会社にしようか労働条件などから選択しようと思います。どういった内容を確認すべきなのでしょうか。
正式な雇用契約を締結する前に確認すべき労働条件は、8つ考えられます。が明示しなければならない事項があり募集時に明示すべき事項としては、職業安定法および職業安定法施行規則、労働契約締結時に明示すべき事項としては、労働基準法及び労働基準法施行規則に規定が置かれています。
雇用形態(有期か無期か、試用期間、契約更新の有無)
雇用形態とは、有期雇用なのか、無期雇用なのかの別、および試用期間、契約の更新などの内容については、会社は労働者を募集時に明示する必要があります。
とりわけ問題となるのが、試用期間の明示の有無、有期契約の場合の契約の更新などです。会社は労働契約締結時に、募集時に明示した内容を任意に変更することができないのですが、ブラック企業などでは、募集時と異なる労働条件に変更された契約内容である場合があります。
給与額、賞与額
給与額や賞与額は労働者であれば、どのくらいの賃金を手にすることができるのかについて関わる事項であることから、大きな関心事でしょう。注意してみるべき事項は、給与額の場合、固定残業代がある場合には、基本給との区別を明確にしているか(明示しているか)についてです。
一方で賞与額については、「賞与あり。ただし、業績による。※賞与支払い実績、昨年実績給与2か月分。」などと記載があります。賞与とは、特別に支給される給与以外の報酬であるため、契約内容によっては、必ず支給されるといったものではありません。
記載内容をきちんと確認すると良いでしょう。入社予定の会社との契約内容に、必ず支給するといった記載がある場合には、法解釈としては、労働契約上の報酬額と考える余地があることから、会社に原則、請求できます。疑問に感じた場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
各種手当
各種手当としての記載で多くの会社が採用しているのは、交通費や住宅手当などです。
通勤手当については、特に上限額を設けている会社が多いので注意してみると良いでしょう。また、手当として、営業手当であったり、役職手当であったり、会社によってさまざまな名称で手当を付与して、給与を支給しています。
なお、現在勤務中の会社などで、未払いの残業代がある場合、「基礎賃金としてどこまでの手当が含まれるか」については、法的判断が必要な場合が少なくありません。退退職する際に、未払いの残業代を請求する場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
仕事内容
仕事内容については、求人時に明示する必要があります(職業安定法5条の3)。また、同様に、労働契約の締結時にも、従事する業務に関して明示されなければなりません(労基法15条1項)。
なお、会社が労働契約時に明示した条件とことなる業務に労働者を従事させた場合には、(労基法15条2項により)労働者は即時に契約の解除ができます。
例えば、一般事務として採用されたにも関わらず、まったく内容の異なる営業職に配属された場合などは、当初の明示された労働条件とことなることから、労働者は契約の解除を行うことができます。
勤務場所
転勤などにより、勤務地が変更となる場合があるのかなどについて、確認が必要でしょう。とくに、家族などがいる場合であって、子供が就学しているなどといった状況の際には、転勤が頻繁に行われるのかや、転勤として移動となる地域の範囲などについては、通学する学校などの関係があり重要です。
このほかであっても、例えば、ご両親の介護などを行っている場合には、かかりつけ医や介護関係の福祉施設の問題などで、現在の地域から移動できない場合などがあります。
このように、就業場所はさまざまに生活に影響を及ぼすことから、内容を確認しておくべきことでしょう。
休日・有給休暇
休日・有給の付与の条件などの確認は、その会社がブラック企業か否かを判断する一つの指標となります。
(詳しくは「あなたの会社は大丈夫!?ブラック企業チェックリスト」へ)
年間休日が105日以下である会社や、有給消化率が著しく低い会社などは、ブラック企業である可能性があります。
休日出勤の有無
休日出勤の有無はあらかじめ確認すべきことでしょう。不動産販売会社や、飲食店、小売り・流通サービス業などは、土曜、日曜などにも営業を行うような会社である場合が多いです。内容をあらかじめ確認することで、入社した後に後悔するリスクを減らせるでしょう。
入社日
入社日は、現在会社に勤務している場合には、確認が必要でしょう。一般的には、転職前の引継ぎなどを含めて、2か月程度以前に会社に相談する場合が多いことから、入社する予定の会社に入社日について確認しておくと良いでしょう。
以上が、内定時に確認しておきたい労働条件となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。内定、内々定は大学4年の就活生だけに限定された話しではありません。入社前(就職前)に労働条件をきちんと確認することで、入社後のトラブルを防止することができます。また、この記事の内容とは異なりますが、前職を退職した後でも残業代請求はできます。気になる方は、別のコラムをご覧いただけると幸いです。