- 残業代が支払われない場合の対応方法の概要
- 残業代の支払いを求めるために必要な法律の知識
- 残業代の支払いを求めるために必要な裁判のための知識
【Cross Talk 】残業代の支払いについてどんな知識が必要?
残業代の支払いを求めたくていろいろ調べています。弁護士に依頼するかを検討するにあたって、どのような知識が必要なのかを知っておきたいのですが…。
残業代の支払いを求めるために必要な知識についての概要を確認しましょう。
よろしくお願いします。
「残業代の支払いを求めたい」という場合には、残業代として請求できる額の算出方法、支払われない場合の適切な対応、対応をする場合に必要な手続などの知識が必要です。残業代請求にはどのような知識が必要か、概要を確認しましょう。
残業代が支払われない!労働者はどのような対処ができるのか
- 残業代の支払いがない場合の主な対応方法の確認
残業代の支払いがされない、という場合に訴える以外にも対応方法があるのでしょうか?
労働基準監督署への通告などいくつか方法はあるのですが、それで解決を見なければ最終的には訴えることになります。対応方法の概要について確認しましょう。
残業代の支払いが行われないときに取ることができる対応方法について確認しましょう。
使用者に刑罰を科してもらう
「残業代」というと特殊な請求権のように見えるかもしれませんが、残業代は給与であり、残業代の未払いは給与の未払いなので、労働基準法に違反する行為なので刑罰の対象です(労働基準法119条)。
そのため、使用者に刑罰を科してもらう…という対応方法があります。
労働基準法違反については労働基準監督署が取り扱っていますので、労働基準監督署に告訴することになります。
しかし、刑罰は民事上の請求とは無関係で、刑事罰が科されたことによって自動的に民事上の請求が済むわけではありませんし、そもそも実際に刑事罰が科されるのはよっぽど悪質な給与未払いの事案に限られます。
自分に対して残業代を払ってもらう、という行動のためであれば、直接的な行動といえません。
使用者に行政指導をしてもらう
刑事罰が相当悪質な事例に限られるのであれば、同じ労働基準監督署に行政として指導をしてもらうことが考えられます。
実際に労働基準法違反がある場合で、必要に応じて対象となる会社に対して調査を行います。
調査には、資料の提出や会社に対して立ち入り検査をすることが可能です。
このような処分を通じて間接的に支払ってもらうことは期待できます。
しかし、労働基準監督署は大量の案件に対応しているので、すぐに行動に移せるともかぎらず、またこれも労働基準法違反を是正するという観点から行われるもので、個々の残業代請求とは無関係です。
使用者に民事上の請求をする
上記のように労働基準監督署を動かすやり方も場合によっては有効ですが、自分の未払い残業代の取り戻しを行うのであれば、民事上の請求をするのが基本となります。
残業代で訴えるために必要な法律・実務上の知識
- 残業代の権利の根拠に関する知識
- 残業代を相手に請求するための知識
- 残業代請求において最も重要な証拠に関する知識
残業代の請求を訴えて行うためにはどのような知識が必要なのでしょうか。
残業代の権利の内容に関する知識と、相手に請求するための手続きに関する知識が必要です。残業代請求を左右する証拠に関する知識も整理しておきましょう。
残業代請求に必要な知識について確認をしましょう。
どのような法律上の請求が可能か
上述もしましたが、「残業代」は何も特別な請求権ではなく、働いたことに対する対価である給与・賃金です。
そのため、残業をしたときの給与の計算方法の知識が必要です。
未払いの残業代がいくらになるのかの計算方法
残業代がいくらになるのかの計算は、どれだけの残業をしたと認定されるかという労働時間に関する知識と、残業をした場合の割増賃金についての知識が必要です。
労働時間の計算については、たとえばフレックスタイム制の場合はどう計算するのか、住み込みの人はどうなるのか、準備の時間は?社内行事の時間は?など細かい知識がたくさん要求されます。
次のURLより、東京新宿法律事所で労働時間について解説した記事の一覧が閲覧できますので、自分に必要だと思われる労働時間に関する解説を参考にしてください。
(東京新宿法律事務所ホームページ内労働時間に関する記事一覧)。
最初に確認すべき解説記事としては、
「残業代計算方法!私の残業代はいくら?【図解で分かり易く解説】」
を参照してください。
割増率については、
「【図解】残業代の計算に必要な時間単価の「割増率」とは?」で詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
また、残業代がいくらか確定したとして、民事上の請求には、残業代の時効や遅延損害金といった知識も必要です。
それぞれ
「残業代を請求する際に時効で請求できないことがある!?退職前・後での違いは?」
「未払い残業代に利息は発生するのか?「遅延損害金」と「遅延利息」の違いについても解説」
で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
民事上の請求をするための方法
どのような民事上の権利が請求可能かを確定した上で、その請求をするための手続についての知識を確認しましょう。
まず、多くの場合突然裁判所に訴えるようなことはなく、書面で使用者に請求することからはじめます。
実務上は内容証明を利用して請求を行います。
内容証明を送付しても会社が支払いに応じない、支払いに応じるように見えても金額で折り合わないような場合に初めて訴えることを検討します。
ただ、労働問題についての争いについては裁判だけではなく、労働審判という解決方法も用意されています。
労働審判については「残業代請求における労働審判はどんなもの?」で詳しくお伝えしておりますので、こちらを参照してください。
訴える、すなわち裁判をする際には、書面を作成して訴える・民事裁判の期日の進行・勝訴した後の強制執行といった知識が必要になります。
こちらは「残業代を取り戻すための訴訟・裁判・差し押さえの基礎知識」で詳しく解説していますので確認をしてください。
収集すべき証拠についての知識
残業代請求に関するコラムでよく、証拠の収集が重要であると目にしませんか?
これは、民事裁判における証拠に関する原則(立証責任)が関連しています。
民事裁判において、証拠は請求をする側が提出をしなければならない原則があります。
そのため、原告である労働者側で、未払い残業代が発生していること、被告である使用者が残業代の支払いをしていないことを証明する必要があるのです。
タイムカード・業務PCの利用ログ・業務PCから送信したメールなど、退職をしてしまった後に証拠を収集するのは非常に困難となります。
証拠の収集は在職中から戦略的に行う必要があるといえます。
まとめ
このページでは、残業代請求に必要な知識にはどのようなものがあるか、についての概要についてお伝えしました。
実に広範な知識がなければ残業代請求は難しいことを知っていただいたと思いますが、弁護士への依頼はこのような知識を補いかつ交渉を代理することができるので、使用者と直接激しく争う必要もなくなります。
費用はかかるもののスムーズに請求を行いたいのであれば、是非弁護士に依頼することを検討しましょう。